注記事項とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- 注記は、貸借対照表や損益計算書などの本表の数字を補足・説明する情報で、財務諸表の一部です。
- 会計方針、見積りの前提、税効果会計の内訳、企業結合の内容など、本表だけでは分からない情報が書かれています。
- 財務分析では、数字の中身やリスクを確かめるために注記を読むことが欠かせません。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「注記事項」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (2) 主要財務諸表と企業活動 |
| 協会の学習ポイント | 注記事項(税効果会計や企業結合会計など)を理解する。 |
注記事項とは
財務諸表の本表には、項目ごとの合計金額しか載っていません。その金額がどのような方針や前提で計算されたのか、どのような内訳なのか、将来どんなリスクがあるのかは、注記を読まなければ分かりません。注記は本表と一体となって財務諸表を構成し、監査の対象にもなります。
主な注記事項
代表的な注記には、重要な会計方針(有価証券・棚卸資産の評価方法、減価償却方法、引当金の計上基準、収益の認識基準など)、会計上の見積り(翌期の財務諸表に重要な影響を与えるリスクがある見積りの内容)、会計方針の変更、偶発債務(債務保証など)、後発事象、金融商品の時価、退職給付、関連当事者との取引などがあります。
税効果会計に関する注記
税効果会計の注記では、繰延税金資産・繰延税金負債の発生原因別の内訳と、回収可能性がないと判断して計上しなかった金額(評価性引当額)が示されます。また、法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との差異について、その主な原因が記載されます。負担率が法定実効税率から大きく離れている場合、その理由(交際費など損金にならない費用、評価性引当額の変動、税率の異なる海外子会社など)を確認することで、来期以降の税負担を予想しやすくなります。
企業結合に関する注記
企業結合(M&A)を行った期には、被取得企業の名称と事業内容、企業結合の目的、取得原価とその内訳、取得原価の配分(受け入れた資産・負債の金額)、発生したのれんの金額・発生原因・償却方法と償却期間などが注記されます。のれんの大きさや償却期間は将来の利益に影響し、減損のリスクにもつながるため、分析上重要な情報です。
整理しておきたいポイント
| 注記 | 主な内容 | 分析での使い方 |
|---|---|---|
| 重要な会計方針 | 評価方法、減価償却方法、収益認識の基準など | 他社比較で会計処理の違いを把握する |
| 会計上の見積り | 減損、繰延税金資産など見積りの内容と前提 | 将来の損失リスクを見極める |
| 税効果会計 | 繰延税金資産・負債の内訳、評価性引当額、税率差異の原因 | 税負担率の妥当性や持続性を確認する |
| 企業結合 | 取得原価、取得原価の配分、のれんの金額と償却期間 | 買収の規模と将来の償却・減損の影響を把握する |
| 偶発債務・後発事象 | 債務保証、決算日後の重要な出来事 | 本表に表れない潜在的なリスクを確認する |
具体例で確認
N社の税引前当期純利益は1,000百万円、法人税等(税効果考慮後)の合計は380百万円でした。法定実効税率を30%とします。
- 法定実効税率どおりなら、税金は1,000 × 30% = 300百万円のはずです。
- 実際の負担率は380 ÷ 1,000 = 38%で、8ポイント高くなっています。
税効果会計の注記を見ると、差異の原因として「交際費等永久に損金に算入されない項目 +2.0%」「評価性引当額の増減 +6.0%」が記載されていました。30% + 2.0% + 6.0% = 38%で、負担率の高さが説明できます。
評価性引当額の増加は、赤字の子会社などで繰延税金資産の回収が見込めなくなったことを示している可能性があります。これは一時的な要因かもしれないため、アナリストは翌期の税負担率を予想する際に、この要因が続くかどうかを検討します。本表の「法人税等」の金額だけでは、こうした分析はできません。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「注記事項(税効果会計・企業結合会計など)を理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 注記が財務諸表の一部であり、監査の対象になること。
- 重要な会計方針や会計上の見積りの注記から、利益に影響する前提を読み取ること。
- 税効果会計の注記(繰延税金資産・負債の内訳、評価性引当額、法定実効税率と負担率の差異)の読み方と計算。
- 企業結合の注記で開示される内容(取得原価の配分、のれんの金額と償却期間など)。
- 偶発債務や後発事象など、本表に表れない情報の存在。
要点まとめ
- 注記は本表を補足する情報で、財務諸表の一部である。
- 会計方針や見積りの前提は注記で確認する。
- 税効果会計の注記で税率差異の原因と繰延税金資産の中身が分かる。
- 企業結合の注記でのれんの金額や償却期間を把握できる。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
