棚卸資産の期末評価とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- 期末に棚卸資産の正味売却価額が取得原価を下回ったら、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げます。
- 収益性が低下した分の損失を、将来に繰り越さず当期に認識するための処理です。
- 切下げ額(評価損)は原則として売上原価に含め、数量の不足(棚卸減耗)とは区別して考えます。
この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「棚卸資産の期末評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 棚卸資産の期末評価を理解する。 |
棚卸資産の期末評価とは
棚卸資産は取得原価で計上するのが基本ですが、値崩れや陳腐化などで売っても原価を回収できない状態になることがあります。そのまま取得原価で資産に残すと、回収できない金額を将来に繰り越すことになり、資産も利益も過大に表示されてしまいます。
そこで日本基準(棚卸資産の評価に関する会計基準)では、通常の販売目的で保有する棚卸資産について、期末の正味売却価額が取得原価より下落している場合は、収益性が低下したものとして正味売却価額まで帳簿価額を切り下げます。切下げ後の金額が貸借対照表価額となり、差額は当期の費用になります。
正味売却価額とは
正味売却価額は、売価(見積販売価額)から、見積追加製造原価と見積販売直接経費を差し引いた金額です。「売ったときに手元に残る見込みの金額」と考えるとイメージしやすいでしょう。IFRSでも「原価と正味実現可能価額のいずれか低い額」で測定するという、ほぼ同じ考え方がとられています。
評価損の表示と戻入れ
- 切下げ額は原則として売上原価に含めます(製造に関連して不可避的に発生するものは製造原価)。
- 重要な事業部門の廃止や災害損失など、臨時の事象によりかつ多額に発生したものは特別損失に計上します。
- 前期に計上した切下げ額を当期に戻し入れる洗替え法と、戻し入れない切放し法の選択が認められています(棚卸資産の種類ごとに選択し、継続適用)。
棚卸減耗との違い
帳簿上の数量より実地の数量が少ない場合の損失は棚卸減耗損で、「数量」の問題です。一方、収益性の低下による評価損は「単価」の問題です。計算では、まず数量の減少を処理し、残った実地数量に単価の下落を掛けて評価損を求めます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
ある商品の期末の状況が次のとおりだったとします。
- 帳簿数量100個、実地数量95個、取得原価1個1,000円
- 見積売価1個900円、見積販売直接経費1個50円
計算の手順は次のとおりです。
- 正味売却価額:900 − 50 = 850円(取得原価1,000円を下回るので切下げが必要)
- 棚卸減耗損:(100 − 95)× 1,000 = 5,000円
- 評価損:(1,000 − 850)× 95 = 14,250円
- 貸借対照表価額:95 × 850 = 80,750円
検算すると、帳簿上の取得原価100,000円 − 5,000円 − 14,250円 = 80,750円となり一致します。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「棚卸資産の範囲・原価配分と期末評価を理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 比較するのは取得原価と正味売却価額であり、単純な売価や再調達原価ではないこと。
- 棚卸減耗損(数量)と評価損(単価)の区別と、計算の順序(評価損は実地数量に掛ける)。
- 評価損の表示区分:原則は売上原価、臨時かつ多額なら特別損失。
- 洗替え法と切放し法の違い(前期の切下げ額を戻し入れるかどうか)。
- 評価損の計上は利益を減らすが、その分は将来の売上原価に回らないという期間配分の効果。
要点まとめ
- 期末に正味売却価額が取得原価を下回れば、正味売却価額まで切り下げる。
- 正味売却価額は売価から追加製造原価と販売直接経費を差し引いた額。
- 評価損は原則売上原価、臨時・多額なら特別損失。
- 数量不足の棚卸減耗損と、単価下落の評価損を分けて計算する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
