ひとことで言うと

  • 連結財務諸表では、グループ内の売買や貸し借りは「身内の取引」なので、内部取引として相殺消去します。
  • グループ内で売った商品が期末に買い手側の在庫として残っている場合、その中に含まれる利益はまだ外部に売れていない未実現利益なので、消去します。
  • 子会社から親会社への販売(アップストリーム)では、消去した未実現利益を非支配株主にも持分比率で負担させます。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「内部取引と未実現利益の消去」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (8) 企業結合会計
協会の学習ポイント 内部取引の相殺消去と未実現利益の消去を理解する。

内部取引と未実現利益の消去とは

連結財務諸表は企業集団を一つの会社とみなして作るため、グループ内の会社同士の取引は、同じ会社の中でモノやお金を移しただけにすぎません。個別財務諸表を単純に合算すると、売上高や債権・債務が水増しされてしまうため、連結上はこれらを消去します。

内部取引の相殺消去

  • 売上高と売上原価(仕入高):親会社が子会社に販売した取引は、親会社の売上高と子会社の仕入(売上原価)を相殺します。
  • 債権と債務:グループ内の売掛金と買掛金、貸付金と借入金を相殺します。
  • 受取利息と支払利息、受取配当金:グループ内の利息は相殺し、子会社から親会社への配当は連結上の利益から除きます。
  • 貸倒引当金の調整:消去した債権に対して設定していた貸倒引当金も修正します。

未実現利益の消去

グループ内で利益を乗せて売った商品や固定資産が、期末に買い手側に残っている場合、その資産にはグループ内で付けた利益が含まれています。この利益は外部への販売によって実現していないため、資産の帳簿価額から控除し、利益からも消去します。

  • ダウンストリーム(親会社→子会社への販売):未実現利益は全額消去し、全額を親会社(親会社株主)が負担します。
  • アップストリーム(子会社→親会社への販売):未実現利益は全額消去し、消去額を親会社と非支配株主の持分比率に応じて負担させます。

押さえておきたい公式

未実現利益 = 期末に買い手が保有する内部取引の資産額 × 売り手の利益率利益率は売価に対する利益の割合(売上総利益率)で考える
非支配株主の負担額 = 未実現利益 × 非支配株主の持分比率アップストリームの場合のみ

具体例で確認

親会社P社が子会社S社(P社の持分80%)に、原価800の商品を1,000で販売しました(利益率20%)。期末にS社はこのうち300を在庫として保有しています。

  • 内部取引の相殺:売上高1,000と売上原価1,000を相殺
  • 未実現利益:300 × 20% = 60 → 棚卸資産を60減らし、売上原価を60増やす(利益が60減る)
  • ダウンストリームなので、60は全額親会社株主の負担です。

逆に、S社がP社に同じ条件で販売したアップストリームの場合も、未実現利益60は全額消去しますが、そのうち60 × 20% = 12 は非支配株主の負担となり、非支配株主に帰属する当期純利益を12減らします。親会社株主に帰属する当期純利益への影響は48です。

試験で問われやすいポイント

  • 内部取引は売上高と売上原価、債権と債務、利息などを相殺します。連結売上高を計算する問題に注意しましょう。
  • 未実現利益は「期末に残っている分」だけに生じます。販売額全体ではなく在庫の額に利益率をかける点がポイントです。
  • ダウンストリームは全額消去・全額親会社負担、アップストリームは全額消去・持分比率で非支配株主も負担、という区別が頻出です。
  • 利益率は原価ではなく売価に対する割合で与えられることが多いので、どちらの基準かを確認しましょう。
  • 消去した債権に対応する貸倒引当金の修正も忘れやすい論点です。

要点まとめ

  • グループ内の取引高や債権・債務は連結上すべて相殺消去する。
  • グループ内で売った資産が期末に残る場合、含まれる未実現利益を消去する。
  • 未実現利益=期末保有額×売り手の利益率。
  • ダウンストリームは親会社が全額負担、アップストリームは非支配株主も持分比率で負担する。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。