ひとことで言うと

  • OAS(Option-Adjusted Spread:オプション調整後スプレッド)は、オプション内蔵型債券の価格からオプションの影響を取り除いたスプレッドです。
  • 金利ツリーのすべての金利に一律に上乗せして評価したとき、モデル価格が市場価格と一致するスプレッドとして求めます。
  • OASは想定する金利ボラティリティに左右され、コーラブル債ではボラティリティを高く想定するほどOASは小さくなります。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「OASの算出とボラティリティの影響」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (6) オプション内蔵型債券の仕組みと評価
協会の学習ポイント OAS(オプション調整後スプレッド)の算出手法、金利のボラティリティから受ける影響を理解する。

OAS(オプション調整後スプレッド)とは

社債などの利回りが国債等の基準金利をどれだけ上回っているかを示すのがスプレッドです。ところが、コーラブル債(期限前償還条項付債券)のようにオプションが組み込まれた債券では、スプレッドの中に「信用リスクや流動性への対価」だけでなく「オプションの対価」も混ざってしまいます。

たとえばコーラブル債の投資家は、発行体にコール・オプションを売っているのと同じ立場です。そのぶん価格は低く、見かけのスプレッド(ZスプレッドやIスプレッド)は大きくなります。この部分を取り除き、オプションがない債券と同じ土俵で比較できるようにしたものがOASです。

OASの求め方(金利ツリーによる逆算)

OASは次の手順で求めます。

  1. ベンチマークとなる利回り曲線と想定ボラティリティに整合的な金利ツリー(二項モデル)を作ります。このツリーはオプションなし債券を正しく評価できるようにカリブレーションされています。
  2. ツリーのすべてのノードの金利に同じスプレッドを加え、各ノードで償還条項(コールなら「理論価格と償還価格の低い方」)を反映しながら後ろ向きに割り引きます。
  3. 得られたモデル価格が市場価格と一致するスプレッドを試行錯誤で探します。これがOASです。

複雑なキャッシュフローを持つMBSなどでは、金利ツリーの代わりにモンテカルロ・シミュレーションで多数の金利経路を発生させ、同じように「経路ごとの割引金利に一律に加えるスプレッド」としてOASを求めます。

金利ボラティリティから受ける影響

市場価格は与えられたものなので、想定ボラティリティを変えるとOASが変わります

  • コーラブル債:ボラティリティを高く想定する → コール・オプションの価値が上がる → 同じスプレッドでのモデル価格が下がる → 市場価格に合わせるには割引率を下げる必要がある → OASは小さくなる
  • プッタブル債:ボラティリティを高く想定する → 投資家が持つプット・オプションの価値が上がる → モデル価格が上がる → OASは大きくなる

このため、OASで銘柄を比較するときは同じボラティリティの前提で計算されているかを確認することが大切です。

押さえておきたい公式

オプション・コスト = Zスプレッド − OASコーラブル債ではプラス(投資家がオプションを売っている)、プッタブル債ではマイナス
市場価格 = ツリー上の各ノードの金利 + OAS で割り引いたモデル価格この等式を満たすOASを試行錯誤で求める
用語 意味
Zスプレッド スポットレートの全年限に一律に上乗せして、市場価格と一致させるスプレッド(オプションの価値を含む)
OAS 金利ツリーの全ノードに一律に上乗せして、オプションを考慮したモデル価格を市場価格と一致させるスプレッド
オプション・コスト 両者の差。スプレッドのうちオプションの対価に当たる部分

具体例で確認

残存2年、年1回利払いのクーポン5%のコーラブル債(1年後に額面100で償還可能)があり、市場価格は100.51です。金利ツリーは、現在の1年金利が3.0%、1年後の1年金利が上昇ノード5.0%・下落ノード3.6%(確率は各50%)とします。

OAS=1.0%と置いて、各ノードの金利に1.0%を加えて評価してみます。

  1. 1年後・上昇ノード:105 ÷ 1.060 ≒ 99.06 → 償還価格100より低いのでコールされず99.06
  2. 1年後・下落ノード:105 ÷ 1.046 ≒ 100.38 → 100を上回るのでコールされ100
  3. 現在:{0.5 ×(99.06 + 5)+ 0.5 ×(100 + 5)} ÷ 1.040 ≒ 100.51

モデル価格が市場価格100.51と一致したので、この債券のOASは約1.0%(100bp)です。もし想定ボラティリティを上げてツリーの上昇・下落ノードの差を広げると、下落ノードでのコールの効果が大きくなってモデル価格が下がるため、市場価格に合わせるOASは1.0%より小さくなります。

試験で問われやすいポイント

  • OASは金利ツリー(またはモンテカルロ)の全ノード・全経路に一律に加えるスプレッドで、市場価格に一致させるように逆算する、という算出手順が問われやすいです。
  • オプション・コスト=Zスプレッド−OASの関係と、コーラブル債ではZスプレッド>OAS、プッタブル債ではZスプレッド<OASになる点を押さえましょう。
  • 想定ボラティリティが上がると、コーラブル債のOASは低下、プッタブル債のOASは上昇という方向が狙われやすいです。
  • OASが大きい銘柄ほど割安と判断されますが、ボラティリティなどモデルの前提が同じであることが比較の条件です。
  • 2次の記述式では、ツリー上でコール条項を反映しながら価格を計算する過程や、ボラティリティ変化がOASに与える影響の理由を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • OAS=オプションの影響を取り除いたスプレッド(信用・流動性などへの対価)
  • 金利ツリーの全ノードに一律に加え、モデル価格=市場価格となる値を逆算する
  • オプション・コスト=Zスプレッド−OAS
  • ボラティリティ上昇でコーラブル債のOASは低下、プッタブル債のOASは上昇

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。