ひとことで言うと

  • MBSの期限前償還リスクとは、住宅ローンの借り手の繰上返済によって、MBSの元本が戻ってくる時期が変動するリスクです。
  • 金利低下時に償還が早まる短縮リスクと、金利上昇時に償還が遅れる延長リスクの2つの面があり、MBSはネガティブ・コンベクシティを持ちます。
  • 期限前返済の速さはCPR・SMM・PSAといった指標で表します。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「MBSの期限前償還リスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (8) 証券化商品の仕組みと評価
協会の学習ポイント MBSの期限前償還リスクについて理解する。

MBSの期限前償還リスクとは

住宅ローンの借り手は、多くの場合いつでも繰上返済ができます。これは借り手がコール・オプションを持っているのと同じで、MBSの投資家はそのオプションを売っている立場にあります。借り手が繰上返済すると、その元本はMBSの投資家に予定より早く戻ってきます。

短縮リスクと延長リスク

金利が低下すると、借り手は低い金利で借り換えるため繰上返済が増えます。投資家は高い利回りの資産を早く返され、低い金利で再投資しなければなりません(短縮リスク・コントラクション・リスク)。しかも、金利低下で本来上がるはずの価格も、償還が早まることで上昇が抑えられます。

金利が上昇すると、繰上返済が減って元本の回収が遅れます。投資家は市場金利より低い利回りの資産を長く持たされ、デュレーションが伸びて価格も大きく下がります(延長リスク・エクステンション・リスク)。

このように「金利が下がっても値上がりしにくく、上がると大きく値下がりする」性質がネガティブ・コンベクシティです。そのため、MBSの金利感応度は修正デュレーションではなく、期限前返済モデルを組み込んだ実効デュレーションで測ります。

期限前返済に影響する要因

  • 金利水準(借り換えインセンティブ):ローン金利と市場金利の差が大きいほど繰上返済が増えます。
  • バーンアウト:一度金利低下局面を経験したプールでは、借り換えたい人がすでに借り換えているため、次の金利低下では反応が鈍くなります。
  • 住宅の売買(住み替え)や、季節性、住宅価格の動向、一部繰上返済なども影響します。

押さえておきたい公式

SMM = 1 − (1 − CPR)1/12CPR(年率の期限前返済率)を月次の期限前返済率に換算する
当月の期限前返済額 = SMM × (月初元本残高 − 当月の予定元本返済額)
100PSA:CPR = 0.2% × 経過月数(30か月目以降は6%で一定)150PSAならその1.5倍、50PSAなら0.5倍
用語 意味
CPR 条件付期限前返済率(年率)
SMM 単月の期限前返済率
PSA 経過月数に応じてCPRが上がっていく標準的な期限前返済モデル

具体例で確認

元本残高100億円のMBSプールが、ローン実行から10か月目にあるとします。当月の予定元本返済額は0.2億円、期限前返済速度は150PSAです。

  1. CPR:0.2% × 10 × 1.5 = 3.0%
  2. SMM:1 − (1 − 0.03)1/120.2535%
  3. 期限前返済額:0.2535% × (100 − 0.2) ≒ 0.2530億円(約2,530万円)

金利が下がって期限前返済が300PSAに速まれば、CPRは6%、SMMは約0.514%に上がり、元本の戻りが早まります(短縮リスク)。逆に金利が上がって50PSAに遅くなれば、CPRは1%に下がり、元本の回収が遅れます(延長リスク)。

試験で問われやすいポイント

  • 金利低下→繰上返済増加→短縮リスク、金利上昇→繰上返済減少→延長リスク、という方向が問われやすいです。
  • MBSの投資家は借り手にコール・オプションを売っているのと同じで、そのためネガティブ・コンベクシティを持つ点を押さえましょう。
  • CPRとSMMの換算(単純に12で割らない)とPSAからCPRを求める計算は、計算ミスが出やすいところです。
  • 期限前返済額は「月初残高 − 予定元本返済」に対してSMMを掛ける、という手順に注意しましょう。
  • 2次の記述式では、SMMや期限前返済額を計算させたうえで、金利変動時のMBSのリスクを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 期限前償還リスク=繰上返済で元本回収の時期が変動するリスク
  • 金利低下で短縮リスク、金利上昇で延長リスク
  • MBSはネガティブ・コンベクシティを持ち、実効デュレーションで測る
  • SMM=1−(1−CPR)1/12、100PSAは30か月目以降CPR6%

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。