ひとことで言うと

  • イールドカーブの変化は、主に水準(レベル)・傾き(スロープ)・曲率(カーバチャー)という少数のファクターで説明できます。
  • ファクター・モデルを使った戦略では、ポートフォリオの各ファクターへのエクスポージャー(感応度)を測り、ベンチマークと比べて意図的に調整します。
  • 見通しのないファクターはベンチマークにそろえて中立化し、見通しのあるファクターだけでリスクをとる、というのが基本的な考え方です。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「ファクター・モデルを使った戦略」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (9) 債券ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント ファクター・モデルを利用した債券ポートフォリオ戦略の代表的な手法を理解する。

ファクター・モデルを使った債券戦略とは

多数の年限の金利がばらばらに動くように見えても、統計的に分析すると、カーブの変化の大部分は少数の共通要因で説明できることが知られています。代表的なのが、カーブ全体が上下する水準、短期と長期の差が変わる傾き、中期ゾーンが相対的に上下する曲率の3つです。主成分分析などで抽出すると、一般に水準ファクターの説明力が最も大きく、次いで傾き、曲率の順になるとされます。

ポートフォリオの価格変化は、各ファクターの変化にそのファクターへのエクスポージャーを掛けたものの合計として近似できます。水準ファクターへのエクスポージャーは、平行移動に対する感応度であるデュレーションに近い意味を持ちます。傾きや曲率へのエクスポージャーは、年限の配分(ブレット型かバーベル型か、など)によって変わります。

代表的な戦略

1つ目はリスクの中立化です。インデックス運用や、特定のファクターだけでリスクをとりたい場合、見通しを持たないファクターのエクスポージャーをベンチマークにそろえ、意図しないリスクを取り除きます。2つ目はファクター・ベットです。たとえば「水準は変わらないがスティープ化する」と予想するなら、水準のエクスポージャーはベンチマークと同じにしたまま、傾きのエクスポージャーだけを調整します。3つ目はヘッジで、先物やスワップなどを使って特定のファクターへのエクスポージャーを打ち消します。

ファクター・モデルは、キーレート・デュレーションよりも少ない数の指標でカーブのリスクを把握できる点が利点です。一方で、ファクターの推定は過去のデータに基づくため、相場環境が変わるとファクターの形や説明力が変化しうる点に注意が必要です。

押さえておきたい公式

ΔP ÷ P ≒ −(DL × ΔfL + DS × ΔfS + DC × ΔfC)各ファクターの変化 × エクスポージャーの合計で価格変化率を近似する
記号 意味
DL、DS、DC 水準・傾き・曲率ファクターへのエクスポージャー
ΔfL、ΔfS、ΔfC 各ファクターの変化幅(%)

具体例で確認

ベンチマークの各ファクターへのエクスポージャーが、水準6.0、傾き2.0、曲率0.5だとします(傾きファクターは、上昇するとスティープ化する向きで定義します)。運用者は「水準は変わらず、カーブがスティープ化する」と予想しています。

  1. 水準と曲率はベンチマークと同じ6.0、0.5にそろえ、傾きのエクスポージャーだけを1.0に下げたポートフォリオを組みます(長期ゾーンを減らし、中短期を増やして水準の感応度を保つ)。
  2. 予想どおり傾きファクターが+0.3%動き、ほかは変わらなかったとします。
  3. ベンチマーク:−(2.0 × 0.3) = −0.6%、ポートフォリオ:−(1.0 × 0.3) = −0.3%
  4. ポートフォリオはベンチマークを0.3%上回ります。一方、水準ファクターが動いても両者の差は生じません。

試験で問われやすいポイント

  • カーブ変化の3つのファクター(水準・傾き・曲率)の意味と、一般に水準の説明力が最も大きいことが問われやすいです。
  • 見通しのないファクターは中立化し、見通しのあるファクターだけでリスクをとるという考え方を説明できるようにしましょう。
  • ファクターの変化とエクスポージャーが与えられて、ベンチマークとのリターン差を計算させる問題が考えられます。
  • 水準ファクターへのエクスポージャーはデュレーションに近いこと、キーレート・デュレーションとの違い(指標の数)に注意しましょう。
  • 2次の記述式では、予想に基づいてどのファクターのエクスポージャーをどう調整するかを、理由とともに書かせる形が考えられます。

要点まとめ

  • カーブの変化は水準・傾き・曲率のファクターで大部分を説明できる
  • 価格変化は、ファクターの変化×エクスポージャーの合計で近似する
  • 見通しのないファクターは中立化し、見通しのあるファクターでリスクをとる
  • ファクターは過去データに基づく推定であり、環境変化で形が変わりうる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。