ひとことで言うと

  • ヘッジ会計は、ヘッジ対象(守りたい資産・取引)とヘッジ手段(デリバティブ)の損益を同じ期間に計上するための特例です。
  • 日本基準では、ヘッジ手段の損益を純資産に繰り延べる繰延ヘッジが原則です。
  • 適用には、事前にヘッジ方針を文書化し、事後にヘッジが有効であることを確認する必要があります。

この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「デリバティブの利用とヘッジ会計」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析
大分類 (4) 収益の測定
協会の学習ポイント デリバティブの利用とヘッジ会計の適用を理解する。

ヘッジ会計とは

企業は、保有する資産の値下がりや、将来の仕入価格・為替の変動といったリスクを抑えるために、先物・オプション・スワップなどのデリバティブを利用します。経済的には、ヘッジ対象の損失とヘッジ手段の利益が打ち消し合うので、リスクは小さくなっているはずです。

ところが会計上は、デリバティブは原則として時価評価して損益を当期に計上する一方、ヘッジ対象の損益は取得原価のままだったり、純資産に直接計上されたり、翌期以降に発生したりします。そのままでは損益の計上時期がずれ、うまくリスクを抑えている企業の利益がかえって大きく振れて見えてしまいます。このずれを解消するのがヘッジ会計です。

繰延ヘッジと時価ヘッジ

日本基準では、ヘッジ手段の時価評価による損益を、ヘッジ対象の損益が認識されるまで純資産の部(繰延ヘッジ損益、税効果を控除した純額)に繰り延べる繰延ヘッジが原則です。例外として、ヘッジ対象の時価変動を損益に計上してヘッジ手段の損益と同じ期間に合わせる時価ヘッジも、その他有価証券をヘッジ対象とする場合などに認められています。

適用するための要件

  • 事前テスト:取引の開始時に、リスク管理方針に沿ったヘッジであることが文書などで客観的に確認できること。
  • 事後テスト:その後も継続して、ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動やキャッシュフロー変動が高い程度で相殺されていること。実務上は、変動額の比率がおおむね80%〜125%の範囲にあれば有効と判断されます。

要件を満たさなくなった場合はヘッジ会計を中止し、以後のデリバティブの損益は当期の損益に計上します。なおIFRS第9号では、80%〜125%という数値基準がなく、リスク管理目的との整合性や経済的関係を重視する考え方になっています。

押さえておきたい公式

ヘッジ有効性の比率 = ヘッジ手段の変動額 ÷ ヘッジ対象の変動額(絶対値)おおむね80%〜125%の範囲なら、ヘッジが有効と判断される
繰延ヘッジ損益(純資産)= ヘッジ手段の評価損益 ×(1 − 実効税率)税効果分は繰延税金資産・負債として計上

具体例で確認

ある会社が翌期に原材料を購入する予定で、値上がりに備えて当期に商品先物を買建てたとします。実効税率は30%とします。

  • 期末までに原材料価格が上がり、予定取引の購入額は105増える見込みになりました。
  • 買建てた先物には100の評価益が生じました。
  • 有効性の比率は100÷105≒95.2%で、80%〜125%の範囲内なのでヘッジは有効です。

ヘッジ会計を使わない場合:先物の評価益100が当期の利益になり、翌期は原材料費が高くなって利益が減ります。ヘッジしているのに、2期の利益が大きく振れます。

繰延ヘッジを使う場合:評価益100のうち、税効果30を差し引いた70を純資産の繰延ヘッジ損益に計上し、当期の損益には影響させません。翌期に原材料を購入して費用化する時点に合わせて損益に反映されるため、原材料の値上がりと先物の利益がほぼ相殺されます。

試験で問われやすいポイント

  • ヘッジ会計の目的は「ヘッジ対象とヘッジ手段の損益計上時期をそろえること」です。リスクそのものを減らす手法ではない点に注意しましょう。
  • 日本基準の原則は繰延ヘッジ、時価ヘッジは例外という関係が問われやすいです。
  • 繰延ヘッジ損益は税効果控除後の金額で純資産に計上される点が計算で狙われます。
  • 事前テスト・事後テストの内容や、80%〜125%の有効性の目安を押さえましょう。
  • 2次の記述式では、ヘッジ会計がないと利益がどう振れるかを説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • ヘッジ会計はヘッジ対象と手段の損益の計上時期を合わせる特例。
  • 日本基準の原則は繰延ヘッジで、損益を税効果控除後の純額で純資産に繰り延べる。
  • 事前テスト(方針の文書化)と事後テスト(有効性の確認)が要件。
  • 有効性は変動額の比率がおおむね80%〜125%かどうかで判断する。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。