個人投資家特有のリスクとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・ポートフォリオ・マネジメント
ひとことで言うと
- 個人投資家には、機関投資家とは違う固有のリスクがあります。代表的なのが貯蓄不足リスク・長生きリスク・インフレ・リスク・リターン配列のリスクです。
- いずれも「老後に必要なお金が足りなくなる」ことにつながるリスクで、標準偏差だけでは測りきれません。
- 特にリターン配列のリスクは、取崩し開始直後に大きな下落が起きると、平均リターンが同じでも資産が早く尽きるという点が重要です。
この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「個人特有のリスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント |
|---|---|
| 大分類 | (5) 個人投資家の資産運用 |
| 協会の学習ポイント | 個人投資家特有のリスク要因(貯蓄不足リスク、長生きリスク、インフレ・リスク、リターン配列のリスク等)について理解する。 |
個人投資家特有のリスクとは
個人の資産運用の最終的な目的は、多くの場合、老後を含めた生涯の生活資金をまかなうことです。そのため、個人にとってのリスクは「価格が上下すること」よりも、必要なときに必要な資金が不足することとして考えるほうが実態に合います。機関投資家と比べると、個人は運用期間が寿命によって決まり、しかもその寿命が不確実である点、途中で資金を追加したり負債を管理したりする仕組みが弱い点が大きな違いです。
貯蓄不足リスク
現役時代の貯蓄額や運用成果が、老後に必要な資金に届かないリスクです。貯蓄を始める時期が遅い、貯蓄率が低い、運用を預貯金中心にしてリターンが低すぎる、といったことが原因になります。
長生きリスク
想定より長く生きることで、生活資金を使い切ってしまうリスクです。平均寿命まで生きることを前提に計画を立てると、それより長生きした場合に資金が不足します。個人では分散できないリスクですが、終身年金(公的年金や終身型の年金保険)は多数の加入者でリスクを共有するため、長生きリスクへの有力な備えになります。
インフレ・リスク
物価の上昇によって、資産や年金の実質的な購買力が下がるリスクです。老後の期間は数十年に及ぶことがあり、わずかなインフレでも長期間続けば影響は大きくなります。預貯金や固定額の年金ばかりに頼るとこのリスクが大きくなるため、株式や物価連動債など、インフレに比較的強い資産の組入れが検討されます。
リターン配列のリスク
資産を取り崩している局面では、同じリターンでも起こる順番によって最終的な資産額が変わります。取崩し開始直後に大きく下落すると、値下がりした資産を売って生活費を捻出することになり、その後相場が回復しても元に戻りにくくなるためです。積立や取崩しのない「一括投資・保有」であれば、順番は最終資産に影響しません。
整理しておきたいポイント
| リスク | 内容 | 主な対応策 |
|---|---|---|
| 貯蓄不足リスク | 老後資金の積立が必要額に届かない | 早期の積立開始、貯蓄率の引上げ、適度なリスク資産の活用 |
| 長生きリスク | 想定より長生きし資金が尽きる | 終身年金の活用、取崩し額の抑制 |
| インフレ・リスク | 物価上昇で実質購買力が低下 | 株式・物価連動債などの組入れ |
| リターン配列のリスク | 取崩し初期の下落で資産が早く尽きる | 退職前後の配分の保守化、現金バッファー、取崩し額の柔軟な調整 |
具体例で確認
5,000万円の資産から毎年末に400万円を取り崩す人が、3年間で次の2通りのリターンを経験したとします。3年間のリターンの組合せは同じで、順番だけが違います。
| 年 | ケースA(先に下落) | ケースB(最後に下落) |
|---|---|---|
| 1年目 | −20% → 3,600万円 | +10% → 5,100万円 |
| 2年目 | +10% → 3,560万円 | +10% → 5,210万円 |
| 3年目 | +10% → 3,516万円 | −20% → 3,768万円 |
取崩しがなければ、どちらのケースも5,000万円×0.8×1.1×1.1=4,840万円で同じ結果になります。取崩しがあると、下落が先に来たケースAのほうが252万円少なくなりました。これがリターン配列のリスクです。
試験で問われやすいポイント
- 4つのリスクの定義と、それぞれに対する対応策の組合せ。
- リターン配列のリスクは、資金の出入り(積立・取崩し)がある場合に生じ、一括投資・保有では最終資産に影響しないこと。
- 長生きリスクは個人では分散できず、終身年金によるリスク・プーリングが有効であること。
- 預貯金中心の運用は価格変動リスクは小さくても、貯蓄不足リスクやインフレ・リスクを高めうること。
- 2次の記述式では、取崩しの数値例でリターン配列の影響を計算させたり、個人の状況から主なリスクと対応策を説明させたりする形が考えられます。
要点まとめ
- 個人のリスクは「必要な資金が不足すること」として考える。
- 貯蓄不足・長生き・インフレ・リターン配列が代表的なリスク。
- 長生きリスクには終身年金、インフレ・リスクには実物資産的な資産が有効。
- 取崩し局面では、下落の順番が最終資産を左右する。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
