ひとことで言うと

  • 最大ドローダウンは、評価期間中に資産価値が過去の最高値(ピーク)から最も大きく下落した率です。「最悪の場合どれだけ減ったか」を表します。
  • ソルティノ・レシオは、目標リターンを上回った分を、目標を下回る方向の変動(下方偏差)だけで割った指標です。
  • ヘッジファンドのようにリターン分布が左右非対称になりやすい運用では、標準偏差を使うシャープ・レシオだけでは実態をつかみにくいため、これらの指標が併用されます。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「最大ドローダウンとソルティノ」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (7) 投資パフォーマンスの測定・評価と提示
協会の学習ポイント 最大ドローダウン、ソルティノ・レシオによるヘッジファンドのパフォーマンス評価について理解する。

最大ドローダウンとソルティノ・レシオとは

ヘッジファンドは、空売りやレバレッジ、デリバティブ、流動性の低い資産などを使うため、リターンの分布が正規分布から外れやすく、「普段は小さな利益を積み上げ、まれに大きく損をする」ような形(負の歪度、ファット・テール)になることがあります。標準偏差は上振れと下振れを同じように扱うため、このような運用では下落リスクを過小評価するおそれがあります。

最大ドローダウン

ドローダウンは、ある時点の資産価値が、それまでの最高値からどれだけ下がっているかを表します。評価期間中で最も大きかったドローダウンが最大ドローダウンです。投資家が実際に経験しうる最悪の損失を示すため直感的に分かりやすく、解約や追加の担保差し入れにつながる下落の大きさを把握するのに役立ちます。一方で、下落が一度きりの値であるため、評価期間の長さやデータの頻度(月次か日次か)で値が変わる点に注意が必要です。

ソルティノ・レシオ

ソルティノ・レシオは、シャープ・レシオの分母を、目標リターン(MAR:最低許容リターン。ゼロや無リスク金利などを使う)を下回った部分だけから計算した下方偏差に置き換えた指標です。投資家が嫌うのは下振れだけであり、上振れはむしろ歓迎されるという考え方に立っています。上振れの大きい運用はシャープ・レシオでは不利に見えますが、ソルティノ・レシオでは適切に評価されます。

押さえておきたい公式

ドローダウンt = Vt ÷ max(V0, …, Vt) − 1最大ドローダウンは、期間中のドローダウンの最小値(最も大きな下落)
ソルティノ・レシオ = (R̄ − MAR) ÷ DD
DD = √[ (1 ÷ N) × Σ min(Rt − MAR, 0)² ]下方偏差(目標を下回った部分だけを使う)
記号 意味
Vt 時点tの資産価値
平均リターン
MAR 目標リターン(最低許容リターン)
DD 下方偏差

具体例で確認

あるヘッジファンドの12か月の月次リターンが、3、2、−4、5、−6、−3、4、6、−2、3、1、2(%)だったとします(期初100、MAR=0%)。

  • 資産価値は、4か月目に約105.90でピークをつけた後、6か月目に約96.56まで下落しています。
  • 最大ドローダウン:96.56 ÷ 105.90 − 1 ≒ −8.8%
  • 平均リターン:11 ÷ 12 ≒ 0.917%(月次)
  • 下方偏差:√[(4² + 6² + 3² + 2²) ÷ 12] = √(65 ÷ 12) ≒ 2.33%
  • ソルティノ・レシオ:0.917 ÷ 2.33 ≒ 0.39(月次)

同じデータで標準偏差(約3.64%)を分母にすると、0.917 ÷ 3.64 ≒ 0.25 になります。上振れの月も分母に入れるシャープ型の指標に比べ、下振れだけを見るソルティノ・レシオは高めに出ています。

試験で問われやすいポイント

  • 最大ドローダウンは「期初」ではなく「それまでの最高値」からの下落率で測る点。
  • ソルティノ・レシオの分母は下方偏差で、目標(MAR)を下回った部分だけを使うこと。
  • ヘッジファンドのリターン分布が非対称・ファット・テールになりやすく、標準偏差ベースの指標だけでは不十分な理由。
  • 時系列データから最大ドローダウンや下方偏差を計算する手順。
  • 記述式では、シャープ・レシオとの違いや、ヘッジファンド評価でこれらの指標を使う理由を説明できるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • 最大ドローダウン=過去の最高値からの最大下落率で、最悪の損失経験を示す。
  • ソルティノ・レシオ=(平均リターン − MAR)÷ 下方偏差。
  • 下振れだけをリスクとみなすため、非対称な分布の運用評価に向く。
  • 評価期間やデータ頻度で値が変わるため、他の指標と併用する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。