ひとことで言うと

  • 資産リターンには、変動の大きい時期と小さい時期がそれぞれかたまって現れるボラティリティ・クラスタリングが見られます。
  • これを、今期の分散が過去のショックの大きさで決まるとするARCHモデルや、さらに前期の分散も加えたGARCHモデルで表します。
  • GARCH(1,1)では α+β がボラティリティの持続性を示し、長期的な分散は ω÷(1−α−β) に回帰します。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「ボラティリティ変動モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント ボラティリティ変動モデルの概要について理解する。

ボラティリティ変動モデル(ARCH・GARCH)とは

通常の回帰モデルやARモデルでは、誤差の分散は一定(均一分散)と仮定します。しかし株価や為替のリターンを見ると、大きな値動きの翌日は再び大きく動きやすく、落ち着いた時期はしばらく落ち着いた状態が続きます。リターンそのものにはほとんど自己相関がなくても、リターンの2乗(変動の大きさ)には強い自己相関がある、という特徴です。また、リターンの分布は正規分布より裾が厚い(ファットテール)こともよく知られています。

ARCHモデル

エングルが提案したARCH(自己回帰条件付き不均一分散)モデルは、今期の条件付き分散σt2を、過去の誤差の2乗で説明します。ARCH(1)なら σt2 = ω + αεt−12 です。前期に大きなショック(正でも負でも)があると今期の分散が大きくなるため、クラスタリングを表現できます。ただし持続性を表すには多くのラグが必要になりがちです。

GARCHモデル

ボラスレフが一般化したGARCHモデルは、前期の条件付き分散σt−12も説明変数に加えます。GARCH(1,1)は少ないパラメータで長い持続性を表せるため、実務で最もよく使われます。α+β が1に近いほどショックの影響が長く続き、α+β<1 であれば分散は長期平均(無条件分散)に回帰していきます。α+β=1 の場合はIGARCHと呼ばれ、RiskMetricsの指数加重移動平均(EWMA)はその特殊ケースにあたります。

非対称性への拡張

株式では、同じ大きさでも下落時のほうがボラティリティが高まりやすい傾向(レバレッジ効果)が観察されます。標準的なGARCHはショックを2乗するため正負を区別できません。そこで、負のショックに追加の係数を付けるGJR-GARCHや、対数分散をモデル化するEGARCHなどの拡張が使われます。

押さえておきたい公式

σt2 = ω + αεt−12ARCH(1):過去のショックの2乗で今期の分散が決まる
σt2 = ω + αεt−12 + βσt−12GARCH(1,1):ω>0、α≧0、β≧0
長期分散 = ω ÷ (1 − α − β)α+β<1のとき。α+βは持続性の尺度
記号 意味
σt2 時点tの条件付き分散(前期までの情報のもとでの分散)
εt−1 前期のショック(予想外のリターン)
ω 定数項
α ARCH項の係数(新しいショックへの反応)
β GARCH項の係数(前期の分散の持続)

具体例で確認

日次リターン(単位:%)がGARCH(1,1)に従い、ω=0.05、α=0.10、β=0.85と推定されたとします。前日の分散はσt−12=1.5、前日のショックはεt−1=−3%でした。

  1. 今日の分散:0.05 + 0.10 × (−3)2 + 0.85 × 1.5 = 0.05 + 0.9 + 1.275 = 2.225
  2. 今日のボラティリティ:√2.225 ≒ 1.49%
  3. 持続性:α + β = 0.95
  4. 長期分散:0.05 ÷ (1 − 0.95) = 1.0 → 長期ボラティリティは 1%

大きなショックでボラティリティが1.49%まで高まりましたが、α+β<1なので、その後は少しずつ長期水準の1%に向かって戻っていくと予測されます。

試験で問われやすいポイント

  • ボラティリティ・クラスタリングやファットテールといった、リターンの特徴とモデルの目的が問われやすいです。
  • ARCHとGARCHの違い(GARCHは前期の分散も含む)を説明できるようにしましょう。
  • GARCH(1,1)の式に数値を入れて条件付き分散を計算し、平方根をとってボラティリティにする手順が問われます。
  • α+βが持続性を表し、長期分散が ω÷(1−α−β) になる点は重要な論点です。
  • 標準的なGARCHはショックの正負を区別しないため、レバレッジ効果にはGJR・EGARCHなどが使われる点も押さえましょう。記述式ではVaRなどリスク管理への応用を説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • リターンの変動の大きさは時期によって変わり、かたまって現れる
  • ARCHは過去のショックの2乗、GARCHはさらに前期の分散で今期の分散を説明する
  • α+βは持続性、ω÷(1−α−β)は長期分散
  • 下落時にボラティリティが高まる非対称性はGJR・EGARCHなどで扱う

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。