人的資本とライフサイクル投資とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・ポートフォリオ・マネジメント
ひとことで言うと
- 人的資本とは、その人が将来得る労働収入の現在価値のことで、個人の「見えない資産」と考えます。
- 若いうちは人的資本が大きく、金融資産は小さいため、金融資産で株式などのリスクを取りやすいとされます。年齢とともに人的資本は減り、金融資産の配分は保守的になっていきます。
- ただし、収入が株式市場と連動しやすい職業の人は、人的資本が「株式的」なので、金融資産で株式を控えめにするのが合理的です。
この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「人的資本とライフサイクル投資」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント |
|---|---|
| 大分類 | (5) 個人投資家の資産運用 |
| 協会の学習ポイント | 人的資本の概念とライフサイクル投資、資産配分との関連について理解する。 |
人的資本とライフサイクル投資とは
個人の資産を考えるとき、預貯金や株式などの金融資産だけを見ると全体像を見誤ります。働いて得られる将来の給与や事業収入も、割り引いて現在価値にすれば大きな資産です。これを人的資本(ヒューマン・キャピタル)と呼び、金融資産と人的資本を合わせたものを個人の総資産(トータル・ウェルス)ととらえます。
人的資本は、働き始めた直後が最も大きく、年齢を重ねて残りの就業期間が短くなるにつれて小さくなり、退職時にはほぼゼロになります。一方、金融資産は貯蓄と運用によって増えていき、退職時点で最も大きくなるのが一般的です。つまり、一生を通じて「人的資本を金融資産に置き換えていく」のが個人の資産形成です。
人的資本の性質と資産配分
公務員や安定した企業の会社員のように、収入が景気や株価にあまり左右されない人の人的資本は、利息が安定して入る債券に近い性質を持ちます。この場合、総資産の中ですでに「債券的な資産」を多く持っているので、金融資産は株式の比率を高めにしてもバランスがとれます。逆に、証券会社の歩合制営業や自営業者、株式報酬の多い人などは、収入が市況と連動しやすく、人的資本は株式に近い性質を持ちます。このような人が金融資産でも株式を多く持つと、景気悪化時に収入と資産が同時に減るため、金融資産は保守的にするのが合理的です。勤務先の株式を大量に保有することも、同じ理由で注意が必要です。
ライフサイクル投資
こうした考え方にもとづき、年齢とともに株式などのリスク資産の比率を下げていく運用をライフサイクル投資と呼びます。ターゲット・デート・ファンドのように、目標時期に向けて自動的に資産配分を保守化していく商品もこの考え方に沿っています。また、人的資本は死亡や就業不能で失われるリスクがあるため、生命保険や就業不能保険で人的資本を守ることも、ライフサイクル全体の資産管理の一部と考えます。
押さえておきたい公式
| N | 退職までの残り年数 |
|---|---|
| r | 割引率(無リスク金利+収入の不確実性に応じたプレミアム) |
具体例で確認
年収500万円が退職まで一定で続き、割引率を3%とします(年末受取り)。
- 残り30年の人:500万円×(1 − 1.03−30)÷0.03 ≒ 約9,800万円
- 残り20年の人:同様に ≒ 約7,439万円
- 残り10年の人:同様に ≒ 約4,265万円
金融資産が500万円の30代前半の人なら、総資産の9割以上が人的資本です。人的資本が債券的であれば、総資産で見た株式比率は小さいため、金融資産の多くを株式にしても総資産全体としてはリスクを取りすぎにはなりません。退職が近づき人的資本が小さくなると、金融資産の配分が総資産のリスクをほぼ決めることになるため、配分を保守的にしていく必要が出てきます。
試験で問われやすいポイント
- 人的資本の定義(将来の労働収入の現在価値)と、年齢とともに減少するという推移。
- 人的資本が債券的か株式的かによって、金融資産の最適な株式比率が変わること。
- 「若いほど株式比率を高く」は一般論であり、職業や収入の安定性によっては逆になりうること。
- 人的資本の現在価値の計算(年金現価係数の利用)。
- 生命保険が人的資本のヘッジ手段となること。
- 2次の記述式では、投資家の職業や年齢の設定から、人的資本の性質をふまえた資産配分を説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 人的資本は将来の労働収入の現在価値で、総資産=金融資産+人的資本。
- 人的資本は年齢とともに減り、金融資産は退職時にかけて増える。
- 安定収入の人的資本は債券的、市況連動の人的資本は株式的で、金融資産の配分はそれを補うように決める。
- 生命保険などで人的資本を守ることもライフサイクル投資の一部。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
