監査上の主要な検討事項(KAM)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 監査上の主要な検討事項(KAM:Key Audit Matters)は、当期の財務諸表の監査で、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項を監査報告書に記載するものです。
- のれんの評価、繰延税金資産の回収可能性、収益認識など、経営者の見積りや判断が大きく影響する項目が選ばれやすく、財務分析で注意すべき論点のヒントになります。
- KAMは監査意見そのものではなく、無限定適正意見の場合でも記載されます。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「監査上の主要な検討事項(KAM)」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (11) 財務分析の応用 |
| 協会の学習ポイント | 監査報告書の「監査上の主要な検討事項」から財務分析のポイントを見つけることができる。 |
監査上の主要な検討事項(KAM)とは
従来の監査報告書は、財務諸表が適正かどうかという結論(監査意見)が中心で、どの企業でもほぼ同じ文言でした。これに対し、監査の過程で監査人が何を重視し、どう対応したのかを利用者に伝え、監査の透明性を高めるために導入されたのがKAMです。日本では、金融商品取引法にもとづく上場企業などの監査で、2021年3月期から本格的に適用されています。
KAMに記載される内容
KAMは、監査役等とコミュニケーションを行った事項のうち、特に注意を払った事項から選ばれます。監査報告書には、項目ごとに次のような内容が記載されます。
- 監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由:なぜその事項が重要と判断されたのか(金額の大きさ、見積りの不確実性、経営者の判断の程度など)。
- 監査上の対応:監査人がどのような手続きでその事項を検証したのか(事業計画の前提の検討、割引率の妥当性の評価など)。
財務分析での使い方
KAMに挙がる項目は、会計上の見積りが大きく、前提が変われば利益や資産が大きく変動しうる箇所であることが多いです。たとえば「のれんの評価」がKAMであれば、買収した事業の業績が計画を下回った場合に多額の減損損失が出る可能性を意識します。「繰延税金資産の回収可能性」であれば、将来の課税所得の見通しが下がったときに取り崩しで利益が減るリスクがあります。
KAMは、財務諸表の注記「重要な会計上の見積り」とあわせて読むと効果的です。企業側が開示する見積りの前提(成長率、割引率など)と、監査人が重点的に確認した点を照らし合わせることで、業績予想の感応度分析やリスクの洗い出しに役立ちます。複数年のKAMの変化(新たに加わった項目、なくなった項目)にも着目しましょう。
整理しておきたいポイント
| KAMによく挙がる項目 | 主な見積り・判断 | 分析で注意する点 |
|---|---|---|
| のれん・固定資産の減損 | 将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率 | 業績悪化時の減損損失の可能性 |
| 繰延税金資産の回収可能性 | 将来の課税所得の見積り | 取崩しによる税金費用の増加 |
| 収益認識 | 進捗度の見積り、計上時期の判断 | 売上高・利益の前倒しや変動 |
| 引当金・棚卸資産の評価 | 損失の発生可能性や金額、正味売却価額 | 追加の損失計上リスク |
具体例で確認
ある企業の監査報告書に、KAMとして「海外子会社買収で生じたのれんの評価」が記載されていたとします。決定理由には「のれんの金額が総資産の15%を占め、減損テストに用いる事業計画の売上成長率と割引率には経営者の重要な判断が含まれる」とあり、監査上の対応として「事業計画と過去実績の比較」「割引率の算定根拠の検討」が挙げられています。
アナリストは、注記の「重要な会計上の見積り」で前提となる成長率や割引率を確認し、足元の子会社の業績が計画を下回っていないか、金利上昇で割引率が上がっていないかをチェックします。前提が崩れれば将来の減損リスクが高まると判断し、業績予想や目標株価に反映させることができます。
試験で問われやすいポイント
- KAMは監査意見の除外事項や限定事項ではなく、無限定適正意見であっても記載される点がひっかけになりやすいです。
- KAMには「内容及び決定理由」と「監査上の対応」が記載されることを押さえましょう。
- 見積りの不確実性が高い項目(のれん、繰延税金資産、収益認識など)が選ばれやすい理由を説明できるようにしましょう。
- 記述式では、KAMの記載から財務分析上のリスクや確認すべき点を読み取り、文章で説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- KAMは、監査人が当期の監査で特に重要と判断した事項を監査報告書に記載するもの。
- 内容・決定理由と監査上の対応が記載され、無限定適正意見でも記載される。
- 見積りの不確実性が高い項目が挙がりやすく、利益や資産の変動リスクのヒントになる。
- 注記の「重要な会計上の見積り」とあわせて読み、前提の変化をチェックする。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
