ひとことで言うと

  • 対称行列Aは、正規化した固有ベクトルを並べた直交行列Pを使って P’AP = Λ(固有値を並べた対角行列)対角化できます。
  • これを書き直すと A = λ1u1u1‘ + λ2u2u2 となり、行列を「固有値×固有ベクトルの組」の和に分けたものがスペクトル分解です。
  • 分散共分散行列を独立な成分に分ける主成分分析の考え方そのものです。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「対角化とスペクトル分解」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (10) ベクトルと行列
協会の学習ポイント 固有ベクトルを使った2×2対称行列の対角化、スペクトル分解について理解する。

対角化とスペクトル分解とは

対角行列(対角成分以外がすべて0の行列)は、掛け算も逆行列もべき乗も、対角成分ごとに計算するだけで済む扱いやすい行列です。対角化とは、ある行列を適切な座標変換によってこの対角行列の形に直すことをいいます。

対称行列は直交行列で対角化できる

分散共分散行列のような対称行列には、固有値がすべて実数で、異なる固有値に対応する固有ベクトルが直交するという性質があります。そこで、長さ1に正規化した固有ベクトル u1、u2 を列として並べた行列 P = [u1 u2] を作ると、Pは直交行列(P’P = I、つまり P−1 = P’)になります。このPを使うと、P’AP = Λ(対角成分が固有値λ1、λ2)と対角化できます。逆行列を計算しなくても転置だけで済むのが、対称行列の便利な点です。

スペクトル分解

P’AP = Λ の両辺に左からP、右からP’を掛けると A = PΛP’ です。これを成分ごとに展開すると、A = λ1u1u1‘ + λ2u2u2 と表せます。uiui‘ は「uiの方向への射影」を表す行列で、元の行列を互いに直交する方向ごとの成分に分解し、それぞれに固有値の重みを付けて足し合わせた形になっています。

分散共分散行列に当てはめると、データのばらつきを互いに無相関な方向(主成分)に分け、各方向の分散が固有値になる、という主成分分析の考え方と一致します。

押さえておきたい公式

P = [u1 u2]  P’P = I正規化した固有ベクトルを並べた直交行列(P−1 = P’)
P’AP = Λ = [[λ1, 0], [0, λ2]]対称行列の対角化
A = PΛP’ = λ1u1u1‘ + λ2u2u2スペクトル分解
An = PΛnP’  A−1 = PΛ−1P’対角化の応用:べき乗や逆行列が固有値の計算だけで求まる
記号 意味
ui 長さ1に正規化した固有ベクトル
P 固有ベクトルを列に並べた直交行列
Λ 固有値を対角に並べた対角行列

具体例で確認

対称行列 A = [[2, 1], [1, 2]] を対角化・スペクトル分解します。固有値は λ1 = 3、λ2 = 1、正規化した固有ベクトルは u1 = (1/√2, 1/√2)’、u2 = (1/√2, −1/√2)’ です。

  1. 直交行列:P = [[1/√2, 1/√2], [1/√2, −1/√2]]。P’P = I を満たします。
  2. 対角化:P’AP = [[3, 0], [0, 1]]
  3. 射影行列:u1u1‘ = [[0.5, 0.5], [0.5, 0.5]]、u2u2‘ = [[0.5, −0.5], [−0.5, 0.5]]
  4. スペクトル分解:3 × [[0.5, 0.5], [0.5, 0.5]] + 1 × [[0.5, −0.5], [−0.5, 0.5]] = [[1.5+0.5, 1.5−0.5], [1.5−0.5, 1.5+0.5]] = [[2, 1], [1, 2]] で、Aに戻ります。
  5. 応用:A−1 = (1/3)u1u1‘ + (1/1)u2u2‘ = [[2/3, −1/3], [−1/3, 2/3]]。公式 (1/3) × [[2, −1], [−1, 2]] と一致します。

試験で問われやすいポイント

  • 対角化には正規化した固有ベクトルを使うこと、対称行列ならPが直交行列(P−1 = P’)になることが問われやすいです。
  • 対角化した結果の対角成分は固有値で、Pの列の並び順と対応している点に注意しましょう。
  • スペクトル分解 A = Σλiuiui を実際に計算して元の行列に戻るかを確かめる問題に備えましょう。
  • 分散共分散行列のスペクトル分解が、主成分分析(分散=固有値、ウェイト=固有ベクトル)につながることを説明できるようにしておきましょう。
  • 記述式では、固有値→固有ベクトル→正規化→P、Λ の組み立てという計算の流れを示すことが求められます。

要点まとめ

  • 対称行列は固有ベクトルを並べた直交行列Pで P’AP=Λ と対角化できる
  • スペクトル分解は A=λ1u1u1‘+λ2u2u2
  • べき乗や逆行列は固有値を変えるだけで求められる
  • 分散共分散行列に当てはめると主成分分析の考え方になる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。