【証券アナリスト1次】コーポレート・ファイナンスとは?要するに何を学ぶのかを学習ポイントに沿って解説
証券アナリスト(CMA)1次試験の科目Ⅱで学ぶ「コーポレート・ファイナンス」。ガバナンス、経営戦略、NPV、WACC、DCF法……と扱うテーマが幅広く、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。
この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、コーポレート・ファイナンスで要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。
コーポレート・ファイナンスで学ぶこと
- 会社のしくみと戦略:株式会社の制度、経営戦略の考え方、コーポレートガバナンスとエージェンシー問題
- お金の使い方と集め方:NPV・IRRによる投資判断と、WACC(加重平均資本コスト)・資本構成の考え方
- 企業の価値とリスクの測り方:フリー・キャッシュフローとDCF法による企業価値評価、レバレッジや運転資本の管理
コーポレート・ファイナンスの基本情報
| 試験科目 | 1次 科目Ⅱ「財務分析とコーポレート・ファイナンス」 |
|---|---|
| 試験での出題 | 第5問「コーポレート・ファイナンス」(24点)(2025年春・2024年秋の本試験の構成) |
| 学習ポイント数 | 41項目(大分類7つ) |
| 2次とのつながり | 2次では「ペイアウト政策」「M&Aと企業再編」が加わり、コーポレートガバナンス、投資の意思決定、資本コストと資本構成、企業価値評価、リスク管理と運転資本管理もより応用的に学びます |
全体像:7つの大分類
| 大分類 | ひとことで言うと |
|---|---|
| (1) 株式会社のしくみ | 株式会社という制度の成り立ち、資金調達、所有と経営の分離、経営者報酬などの基本を知る |
| (2) 企業の事業・競争戦略 | 企業がどうやって競争に勝ち、価値を生むのかという経営戦略の考え方を学ぶ |
| (3) コーポレートガバナンス | 経営者が株主などのために適切に経営するよう規律づけるしくみを理解する |
| (4) 投資の意思決定 | NPVやIRRを使って、その投資を実行すべきかどうかを判断する |
| (5) 資本コストと資本構成 | 資金を集めるコスト(WACC)と、負債と株主資本の最適な組み合わせを考える |
| (8) 企業価値評価 | フリー・キャッシュフローを割り引いて企業全体の価値を計算する |
| (9) 企業のリスク管理と運転資本管理 | レバレッジによるリスクと、手元資金・運転資本の管理方法を学ぶ |
各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。
(1) 株式会社のしくみ
ポイント:コーポレート・ファイナンスの舞台となる「株式会社」の基本です。制度の成り立ち、株式公開による資金調達、関連する法令、所有と経営の分離、IR、経営者報酬、事業部制や持株会社といった組織形態を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 株式会社制度の歴史と特徴 | 多くの出資者から資金を集め、出資者は出資額までしか責任を負わない(有限責任)という株式会社の成り立ちと特徴 |
| 資金調達と株式公開 | 株式や負債による資金調達の方法と、株式を証券取引所に上場(公開)する意味 |
| 主要な関連法令 | 会社法や金融商品取引法など、株式会社の運営や開示を定める法律の概要 |
| 財務諸表開示の意義 | 株式会社が財務諸表を開示することで、株主や債権者が企業の状況を判断できるようになるという役割 |
| 所有と経営の分離 | 株主(所有者)と経営者が別になることで専門的な経営ができる一方、経営者が株主の利益に反して行動するおそれがあること |
| IR活動 | 企業が投資家に向けて経営方針や業績などの情報を自主的に発信する活動(インベスター・リレーションズ)の概要 |
| 経営者報酬制度 | ストックオプションや株式報酬で経営者と株主の利害をそろえる仕組みと、短期志向を招くなどの課題 |
| 会社の組織形態 | 事業部制、カンパニー制、持株会社などの組織の種類と、それぞれの特徴 |
(2) 企業の事業・競争戦略
ポイント:企業がどうやって稼ぐ力を生み出すのかを、経営戦略論から学びます。業界構造分析(ファイブ・フォース)などのポジショニングアプローチ、経営資源アプローチ、多角化、バリューチェーン、SWOT分析と、戦略が財務指標にどう表れるかを押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 企業戦略とファイナンス | どの事業にどれだけ資金を投じるかという戦略の判断が、企業価値やファイナンスと表裏一体であること |
| 経営戦略と事業戦略 | 会社全体の方向を決める全社戦略と、個々の事業でどう競争するかを決める事業戦略の基本的な考え方 |
| ポジショニングと業界構造分析 | 業界の収益性を競争相手・新規参入・代替品・買い手・売り手の5つの力で分析し、有利な立ち位置を選ぶ考え方 |
| 経営資源アプローチ | 技術・ブランド・人材など、他社がまねしにくい自社の経営資源に競争優位の源泉を求める考え方と、ポジショニングとの違い |
| 多角化と全社戦略 | 複数の事業を持つことの利点(シナジーなど)と問題点、事業の組み合わせをどう考えるかという議論 |
| バリューチェーンと企業の境界 | 開発・製造・販売などの活動のどこで価値を生んでいるかの分析と、どこまで自社で行いどこから外部に任せるかという議論 |
| SWOT分析 | 自社の強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を整理して戦略を考える方法 |
| 事業戦略と価値指標・財務指標 | コスト・リーダーシップや差別化などの戦略の違いが、利益率や資産回転率などの指標にどう表れるか |
(3) コーポレートガバナンス
ポイント:「経営者をどう規律づけるか」というテーマです。ガバナンスの意義、企業倫理、ステークホルダーとの関係、インベストメント・チェーン、エージェンシー問題、上場会社の機関設計、サステナブルファイナンスを学びます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| ガバナンスの意義と背景 | 経営者が株主などの利益に沿って経営するよう監視・規律づけるしくみが、なぜ必要とされてきたか |
| 企業倫理 | 法令遵守にとどまらない企業の倫理規範の意味と、それを組織に根づかせる方法 |
| ステークホルダーとの関係 | 株主・債権者・従業員・取引先・地域社会など、企業を取り巻く利害関係者との関係 |
| インベストメント・チェーン | 資金の出し手から運用機関を通じて企業へとつながる流れの中で、ガバナンスが企業価値の向上を通じて最終的な受益者に還元されるという考え方 |
| エージェンシー問題 | 株主(依頼人)と経営者(代理人)の利害が一致しないことで生じる問題と、ガバナンスによる解決の考え方 |
| 上場会社の機関設計 | 監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の違いと、社外取締役の役割 |
| サステナブルファイナンス | 環境・社会の持続可能性に配慮した資金の流れ(ESG投資やグリーンボンドなど)の概要 |
(4) 投資の意思決定
ポイント:「この投資をやるべきか」を判断する方法です。キャッシュフローと現在価値の考え方を土台に、NPV・IRRなどの判断基準、減価償却と税金がキャッシュフローに与える影響、サンクコストや機会費用の扱いを学びます。計算問題の中心のひとつです。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 投資判断の基本原理 | 投資の価値は将来のキャッシュフローを資本コストで割り引いた現在価値で考える、という基本 |
| NPV・IRRなどの判断方法 | 正味現在価値(NPV)、内部収益率(IRR)、収益性指標、回収期間法、会計上の収益率の計算と長所・短所。基本はNPVがプラスなら実行 |
| キャッシュフローと減価償却 | 減価償却費は現金支出ではないが税金を減らす(節税効果)ため、償却方法がキャッシュフローに影響することなど、評価の注意点 |
| 無形資産・外部性・サンクコスト | 無形資産や金融資産への投資の考え方、他の事業への波及効果(外部性)、すでに支出して取り戻せない費用(サンクコスト)は無視し、機会費用は含めるという原則 |
(5) 資本コストと資本構成
ポイント:企業が資金を集めるときのコストを学びます。負債コストと株主資本コスト(CAPMなど)を求め、それを加重平均したWACCを計算します。負債の節税効果と、負債をどこまで使うべきかという最適資本構成の考え方も押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| WACCの計算と意義 | 負債コスト(税引後)と株主資本コストを時価ベースの構成比で加重平均したもので、投資判断や企業価値評価の割引率になる |
| 負債の節税効果 | 支払利息は税務上の損金になるため税金が減り、実質的な負債コストは「金利×(1-税率)」になること |
| 最適資本構成 | 負債を増やすと節税効果で価値が高まる一方、倒産リスクなどのコストも高まるため、そのバランスで最適な負債の水準を考える |
| 負債コストの計算 | 社債の利回りや借入金利などから、企業が負債で資金を調達するコストを求める方法 |
| 株主資本コストの計算 | 株主が求めるリターンを、CAPM(安全利子率+ベータ×市場リスクプレミアム)などで推定する方法 |
(8) 企業価値評価
ポイント:企業全体の「本来の価値」を計算します。企業が生み出すフリー・キャッシュフローをWACCで割り引くDCF法と、予測期間より先の価値をまとめて評価するターミナル・バリューが中心です。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| フリー・キャッシュフロー | 税引後営業利益+減価償却費-設備投資-運転資本の増加で求める、債権者と株主が自由に受け取れる現金の意味と計算 |
| DCF法による企業価値評価 | 将来のフリー・キャッシュフローをWACCで割り引いて事業価値を求め、非事業資産を加え負債を差し引いて株主価値を求める流れ |
| ターミナル・バリューと永久成長率 | 予測期間の後の価値を、一定の成長率(永久成長率)で成長し続けると仮定してまとめて計算する方法(最終年度の翌年のFCF÷(WACC-成長率)) |
(9) 企業のリスク管理と運転資本管理
ポイント:企業の利益のブレ(リスク)と、日々の資金繰りを学びます。営業レバレッジ・財務レバレッジ・トータル・レバレッジでリスクを測り、流動性指標やキャッシュ・コンバージョン・サイクルで運転資本の効率を分析します。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| レバレッジと事業・財務リスク | 固定費による利益のブレ(事業リスク)と、負債の利息負担による利益のブレ(財務リスク)をレバレッジの考え方で捉える |
| レバレッジ指標 | 売上の変化率に対する営業利益の変化率(営業レバレッジ)、営業利益に対する純利益やEPSの変化率(財務レバレッジ)と、その積のトータル・レバレッジ |
| 財務レバレッジと純利益・ROE | 負債を増やすと、事業がうまくいけばROEが高まり、悪いときはより大きく下がるという関係 |
| 流動性管理と流動性指標 | 支払いに困らないよう手元資金を管理する方法と、流動比率・当座比率などによる分析 |
| キャッシュフローと運転資本管理 | 売上債権・棚卸資産・仕入債務のバランスが資金繰りに影響し、運転資本を減らすとキャッシュフローが増えること |
| キャッシュ・コンバージョン・サイクル | CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数。仕入れの支払いから販売代金の回収までにかかる日数を表し、短いほど資金効率が良い |
コーポレート・ファイナンスを学ぶときのコツ
1. 「企業価値を高めるには?」という軸でつなげる
戦略・ガバナンス・投資判断・資本構成・企業価値評価は、バラバラのテーマに見えて、すべて企業価値をどう高めるかという問いにつながっています。各大分類がこの問いのどの部分を扱っているかを意識すると、全体像がつかみやすくなります。
2. (1)〜(3)は用語の意味と背景まで押さえる
株式会社のしくみ、経営戦略、ガバナンスは知識問題が中心です。用語を覚えるだけでなく、「なぜその仕組みが必要なのか」「どんな問題を解決するのか」まで理解しておくと、選択肢の正誤を判断しやすくなります。
3. 計算は(4)(5)(8)(9)を中心に手を動かす
NPV・IRR、WACC、フリー・キャッシュフローとDCF法、レバレッジやCCCは計算問題の定番です。テキストの例題を電卓で実際に解き、式の意味を確かめながら進めましょう。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。
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よくある質問
Q. コーポレート・ファイナンスはどこから勉強すればいいですか?
大分類(1)の株式会社のしくみから順に進めるのがおすすめです。(1)〜(3)で会社の制度と経営の考え方をつかんでから、(4)の投資の意思決定、(5)の資本コスト、(8)の企業価値評価へ進むと、計算の意味が理解しやすくなります。
Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?
主に(4)の投資の意思決定、(5)の資本コストと資本構成、(8)の企業価値評価、(9)のリスク管理と運転資本管理です。NPV・IRR、WACC、フリー・キャッシュフロー、ターミナル・バリュー、レバレッジ、CCCなどを例題でしっかり練習しておきましょう。
Q. 学習ポイントとは何ですか?
日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。
