棚卸資産の原価配分とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- 棚卸資産は、商品・製品・仕掛品・原材料など、販売や製造のために保有する資産です。
- 仕入れた原価を、売れた分(売上原価)と売れ残った分(期末棚卸資産)に分けることを原価配分といいます。
- 単価が変動するとき、先入先出法・平均法など、どの方法で払出単価を決めるかによって利益と在庫額が変わります。
この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「棚卸資産と原価配分」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 棚卸資産の範囲と、原価配分の考え方を理解する。 |
棚卸資産と原価配分とは
棚卸資産の範囲
棚卸資産とは、通常の営業の中で販売するため、または製造・販売の過程で消費するために保有する資産です。具体的には、商品・製品(販売目的)、半製品・仕掛品(製造途中)、原材料・貯蔵品(製造や営業で消費するもの)が含まれます。不動産会社が販売目的で保有する土地や建物(販売用不動産)も棚卸資産です。一方、同じ土地でも自社で使う目的なら有形固定資産になります。資産の種類ではなく保有目的で区分する点がポイントです。
原価配分の考え方
期首の在庫と当期の仕入を合計した金額(販売可能額)は、期末までに「売れた分」と「残った分」に分けられます。売れた分は売上原価として損益計算書に、残った分は期末棚卸資産として貸借対照表に計上されます。これは費用収益対応の原則を具体化したもので、売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高という関係で表されます。
配分は「数量 × 単価」で行います。数量は継続記録法(受払いを記録)や棚卸計算法(期末に実地で数える)で把握し、単価は次の払出単価の計算方法で決めます。
払出単価の計算方法
- 個別法:一つひとつの実際の取得原価で計算します。宝石や不動産など個別性の強いものに向きます。
- 先入先出法(FIFO):先に仕入れたものから先に払い出したと仮定します。期末在庫は新しい単価で評価されます。
- 平均原価法:総平均法(期間全体の平均単価)と移動平均法(仕入のたびに平均単価を更新)があります。
- 売価還元法:売価ベースの在庫額に原価率を掛けて原価を求めます。取扱品目の多い小売業などで使われます。
なお、後から仕入れたものから払い出したと仮定する後入先出法は、現在の日本基準やIFRSでは認められていません。
押さえておきたい公式
具体例で確認
期首在庫100個(単価100円)、期中に200個を単価130円で仕入れ、250個を販売したとします。販売可能額は10,000円 + 26,000円 = 36,000円、期末在庫は50個です。
| 方法 | 売上原価 | 期末棚卸資産 |
|---|---|---|
| 先入先出法 | 100個×100円 + 150個×130円 = 29,500円 | 50個×130円 = 6,500円 |
| 総平均法(単価120円) | 250個×120円 = 30,000円 | 50個×120円 = 6,000円 |
仕入単価が上昇している局面では、先入先出法のほうが古い安い原価が売上原価になるため、売上原価が小さく利益が大きく、期末在庫は時価に近い新しい単価で評価されます。どちらの方法でも売上原価と期末棚卸資産の合計は36,000円で変わらず、配分の仕方だけが異なる点を確認しておきましょう。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「棚卸資産の範囲・原価配分と期末評価を理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 棚卸資産に当たるかどうかは保有目的で決まること(販売用不動産は棚卸資産、自社使用の土地は固定資産)。
- 物価上昇局面での先入先出法と平均法の比較:売上原価・利益・期末在庫額の大小関係。
- 先入先出法・総平均法・移動平均法による売上原価と期末棚卸高の計算。
- 後入先出法は現在の日本基準・IFRSでは認められないこと。
- 採用する方法が異なる企業どうしを比較するときは、利益率や在庫回転率に差が出る点に注意すること。
要点まとめ
- 棚卸資産は販売・製造のために保有する資産で、保有目的で区分する。
- 販売可能額を売上原価と期末棚卸資産に配分するのが原価配分。
- 払出単価は個別法・先入先出法・平均原価法・売価還元法などで計算する。
- 物価上昇時は先入先出法のほうが売上原価は小さく、利益と在庫額は大きい。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
