ひとことで言うと

  • 株主資本等変動計算書は、純資産の各項目が期首から期末までにどう変動したかを示す計算書です。
  • 配当(剰余金の配当)や自己株式の取得といった利益の分配は、損益計算書ではなくこの計算書に表れます。
  • 配当時には、準備金が資本金の4分の1に達するまで配当額の10分の1を積み立てる必要があります。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「利益の分配と株主資本等変動計算書」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (2) 主要財務諸表と企業活動
協会の学習ポイント 企業利益の分配方法と株主資本等変動計算書の関係を理解する。

株主資本等変動計算書とは

企業が稼いだ利益は、株主への配当として分配するか、社内に留保して将来の投資に回すかのどちらかに使われます。また、自己株式の取得(自社株買い)も、株主に現金を返す点で配当と並ぶ株主還元の手段です。これらはいずれも株主との資本取引であり、費用ではないため損益計算書には表れません。その変動を示すのが株主資本等変動計算書です。

株主資本等変動計算書のしくみ

株主資本等変動計算書は、純資産の項目(資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式、評価・換算差額等、新株予約権など)ごとに、「当期首残高 + 当期変動額 = 当期末残高」の形で表示します。当期変動額には、新株の発行、剰余金の配当、当期純利益、自己株式の取得・処分などが変動事由ごとに記載されます。株主資本以外の項目(評価・換算差額等など)は、原則として当期変動額を純額で記載します。

配当と準備金の積立

会社法では、剰余金の配当をするとき、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで、配当額の10分の1を準備金として積み立てなければなりません。その他利益剰余金を財源とする配当では利益準備金を、その他資本剰余金を財源とする配当では資本準備金を積み立てます。

当期純利益とのつながり

損益計算書の当期純利益は、株主資本等変動計算書の繰越利益剰余金の増加として記載されます。これにより、損益計算書と貸借対照表の純資産がつながります。分析では、配当と自社株買いの合計が利益に対してどの程度かを示す総還元性向もよく使われます。

押さえておきたい公式

当期末残高 = 当期首残高 + 当期変動額純資産の項目ごとに成り立つ
準備金の積立額 = min(配当額 × 1/10、資本金 × 1/4 − 既存の準備金合計)
配当性向 = 配当総額 ÷ 当期純利益  総還元性向 =(配当総額 + 自己株式取得額)÷ 当期純利益

具体例で確認

期首の株主資本が、資本金1,000、資本準備金100、利益準備金50、繰越利益剰余金600、自己株式0だったとします(単位:百万円)。当期に次の取引がありました。

  • 繰越利益剰余金を財源に100を配当
  • 自己株式を80で取得
  • 当期純利益300を計上

利益準備金の積立

配当額の10分の1は 100 × 1/10 = 10、上限までの余裕は 1,000 × 1/4 −(100 + 50)= 100 なので、積立額は 10 です。利益準備金は50から60になります。

各項目の変動

  • 繰越利益剰余金:600 − 100(配当)− 10(準備金積立)+ 300(当期純利益)= 790
  • 自己株式:0 − 80 = −80
  • 株主資本合計:1,750 → 1,750 − 100 − 80 + 300 = 1,870(準備金の積立は株主資本内の振替なので合計は変わりません)

配当性向は 100 ÷ 300 ≒ 33.3%、総還元性向は(100 + 80)÷ 300 = 60% です。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「企業利益の分配方法と株主資本等変動計算書の関係を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 配当や自己株式の取得は損益計算書の費用ではなく、株主資本等変動計算書に記載されること。
  • 利益準備金の積立額(配当額の10分の1、準備金合計が資本金の4分の1に達するまで)の計算。
  • 当期純利益が繰越利益剰余金の増加として記載され、損益計算書と貸借対照表をつなぐこと。
  • 準備金の積立は株主資本内部の振替で、株主資本合計は変わらないこと。
  • 配当性向と総還元性向の違い。

要点まとめ

  • 利益の分配(配当・自社株買い)は株主資本等変動計算書に表れる。
  • 純資産の項目ごとに「期首残高 + 当期変動額 = 期末残高」で表示する。
  • 配当時は準備金合計が資本金の4分の1に達するまで配当額の10分の1を積み立てる。
  • 総還元性向は配当と自社株買いの合計を当期純利益で割って求める。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。