安全性分析(キャッシュ・フロー計算書)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- キャッシュ・フロー計算書を使い、実際の現金の流れから負債の返済能力や投資の自己資金による充足度を確かめる分析です。
- 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率、有利子負債 ÷ 営業キャッシュ・フロー(債務償還年数)、フリー・キャッシュ・フローなどを使います。
- 利益が出ていても現金が足りなければ支払いはできないため、利益ベースの分析を補う役割があります。
この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「CF計算書による安全性分析」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (10) 財務分析の基礎 |
| 協会の学習ポイント | キャッシュ・フロー計算書を使って、安全性の分析ができる。 |
安全性分析(キャッシュ・フロー計算書)とは
負債の返済や利息の支払いは、最終的には現金で行わなければなりません。損益計算書の利益は発生主義にもとづいて計算されるため、売掛金の回収が遅れたり在庫が積み上がったりすると、利益は出ているのに現金が足りない、ということが起こります(いわゆる黒字倒産)。キャッシュ・フロー計算書による安全性分析は、このような現金面のリスクを確認するために行います。
営業キャッシュ・フローによる返済能力
本業で生み出した現金である営業キャッシュ・フローは、負債返済の最も基本的な原資です。営業キャッシュ・フロー対流動負債比率は、1年間の営業キャッシュ・フローで流動負債をどの程度まかなえるかを示し、高いほど短期の支払能力が高いといえます。貸借対照表の流動比率が「時点」の比較であるのに対し、こちらは1年間に稼ぐ現金という「フロー」で見る点が特徴です。
また、有利子負債 ÷ 営業キャッシュ・フローは、現在の有利子負債を営業キャッシュ・フローで返済すると何年かかるかの目安を示し、債務償還年数と呼ばれます。年数が短いほど返済能力が高いと判断されます。
フリー・キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローから、事業を維持・成長させるための設備投資などを差し引いたものがフリー・キャッシュ・フローです(簡便的に営業キャッシュ・フロー+投資キャッシュ・フローとすることもあります)。フリー・キャッシュ・フローがプラスであれば、投資を自己資金でまかなったうえで、借入の返済や株主還元に回せる現金が残っていることになります。マイナスが続くと、不足分を借入や増資などの財務活動で補う必要があり、安全性の面では注意が必要です。ただし、成長のために積極投資をしている時期は一時的にマイナスになることもあるため、背景もあわせて判断します。
押さえておきたい公式
具体例で確認
営業キャッシュ・フロー120、設備投資80、流動負債400、有利子負債600の企業を考えます。
- 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率:120 ÷ 400 = 30%
- 債務償還年数:600 ÷ 120 = 5年
- フリー・キャッシュ・フロー:120 - 80 = 40
この企業は、設備投資を営業キャッシュ・フローでまかなったうえで40の現金が残り、借入の返済などに充てられます。一方、仮に当期純利益が大きくても、売上債権や棚卸資産の増加で営業キャッシュ・フローが20に減ると、債務償還年数は30年となり、返済能力の評価は大きく変わります。
試験で問われやすいポイント
- 利益とキャッシュ・フローは一致しないこと、そして返済は現金で行われるという基本的な考え方。
- 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率や債務償還年数の計算と、「高いほど/短いほど安全」という方向性。
- フリー・キャッシュ・フローの定義と、プラス・マイナスの解釈。
- 売上債権や棚卸資産の増加が営業キャッシュ・フローを減らすなど、間接法の調整項目とのつながり。
- 貸借対照表・損益計算書による安全性分析との違い(ストックか、利益のフローか、現金のフローか)。
要点まとめ
- 負債の返済は現金で行うため、キャッシュ・フロー面の安全性分析が欠かせない。
- 営業キャッシュ・フロー対流動負債比率で、短期の支払能力をフローで確認する。
- 債務償還年数(有利子負債 ÷ 営業CF)は短いほど返済能力が高い。
- フリー・キャッシュ・フローがプラスなら、投資後も返済や還元に回せる現金がある。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
