貸倒引当金(貸付金等の減損)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- 売掛金や貸付金などの債権は、回収できない可能性(貸倒れ)を見積もり、貸倒引当金を設定して損失を計上します。
- 日本基準では債務者の状況に応じて一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等の3つに分けて見積もります。
- 見積方法は貸倒実績率法・財務内容評価法・キャッシュ・フロー見積法の3つが基本です。
この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「貸付金等の減損」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 貸付金等の減損処理を理解し、減損額を計算できる。 |
貸付金等の減損とは
売掛金・受取手形・貸付金などの金銭債権は、相手が約束どおり支払ってくれて初めて現金になります。取引先の業績悪化などで回収が危ぶまれる場合、額面のまま資産に計上していると、資産も利益も過大になります。そこで、回収不能と見込まれる額を見積もって貸倒引当金を設定し、同額を貸倒引当金繰入額として費用に計上します。これが債権の減損処理にあたります。
貸借対照表では、債権の額から貸倒引当金を控除する形で表示され、差引後の金額が回収可能と見込まれる額になります。引当金の繰入額は、営業債権(売掛金など)に対するものは販売費及び一般管理費、貸付金など営業外の債権に対するものは営業外費用に計上するのが一般的です。
債権の区分と見積方法
- 一般債権:経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権。過去の貸倒実績率などを使って、債権全体(またはグループ)でまとめて見積もります。
- 貸倒懸念債権:経営破綻には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか、その可能性が高い債務者に対する債権。財務内容評価法かキャッシュ・フロー見積法で個別に見積もります。
- 破産更生債権等:経営破綻またはそれに近い状態の債務者に対する債権。財務内容評価法により、債権額から担保・保証による回収見込額を引いた残額全額を貸倒見積高とします。
IFRSとの違い
IFRS(IFRS第9号)では、実際に損失の兆候が生じる前から、将来の予想信用損失(12か月分、または信用リスクが著しく増大した場合は全期間分)を見積もって引当金を計上する予想信用損失モデルが採用されています。
押さえておきたい公式
具体例で確認
期末に次の債権があるとします(単位:万円)。
- 一般債権:売掛金5,000、貸倒実績率2% → 5,000 × 2% = 100
- 貸倒懸念債権(財務内容評価法):貸付金1,000、担保の処分見込額400、残額の50%が回収不能と判断 →(1,000 − 400)× 50% = 300
- 破産更生債権等:債権500、担保の処分見込額200 → 500 − 200 = 300
貸倒見積高の合計は100 + 300 + 300 = 700です。期末の貸倒引当金残高がゼロなら、700を繰り入れます(残高がある場合は差額を繰り入れる差額補充法が一般的です)。
キャッシュ・フロー見積法の例:約定利子率5%の貸付金1,000について、条件緩和により今後の利息を免除し、元本1,000を2年後に一括回収することにしたとします。将来CFの現在価値は1,000 ÷ 1.052 ≒ 907となり、貸倒見積高は1,000 − 907 = 約93です。
試験で問われやすいポイント
- 3つの債権区分と、それぞれに対応する見積方法の組み合わせ。
- 財務内容評価法では、担保・保証による回収見込額を先に差し引いてから割合を掛けること。
- キャッシュ・フロー見積法の割引率は、現在の市場金利ではなく当初の約定利子率であること。
- 破産更生債権等は、担保等控除後の残額の全額を貸倒見積高とすること。
- IFRSの予想信用損失モデルでは、損失の兆候が出る前から引当金を計上する点。
要点まとめ
- 回収が危ぶまれる債権は貸倒引当金を設定し、損失を見積計上する。
- 一般債権は貸倒実績率法、貸倒懸念債権は財務内容評価法かCF見積法、破産更生債権等は財務内容評価法。
- CF見積法は将来CFを当初の約定利子率で割り引いて計算する。
- IFRSは予想信用損失モデルで早めに引当金を計上する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
