証券アナリスト(CMA)2次試験で問われる「債券分析」。1次で利回りやデュレーションを学んだのに、2次のテキストでは金利ツリー、OAS、キーレート・デュレーション、CMOなど聞き慣れない言葉が一気に増え、「2次では結局何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、2次の債券分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

2次の債券分析で学ぶこと

  • 複雑な債券の値段をつける:変動利付債・インフレ連動債・コーラブル債・転換社債などを、金利ツリーやモンテカルロ法で評価する
  • 金利リスクと信用リスクを細かく測る:イールドカーブの形の変化、キーレート・デュレーション、OAS、信用リスクモデルや予想損失を使いこなす
  • 債券ポートフォリオを運用する:インデックス運用、イールドカーブ戦略、クレジット戦略、証券化商品やレバレッジの活用まで、実践的な運用手法を身につける

債券分析の基本情報

試験科目2次「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」(株式分析・債券分析・デリバティブ分析・ポートフォリオ・マネジメント)
試験での出題午前・午後の総合試験の中で出題(記述式)
学習ポイント数38項目(大分類8つ)
1次とのつながり1次では(1)債券の種類と市場の仕組み、(2)金利と債券価格評価、(3)金利の期間構造とスプレッド、(4)リターンと金利リスク、(7)信用リスク、(8)証券化商品、(9)債券ポートフォリオの基礎を学びます。2次では同じ大分類の中で一歩進んだ内容を学び、さらに(5)金利変動モデルと(6)オプション内蔵型債券が加わります

全体像:8つの大分類

大分類ひとことで言うと
(2) 金利と債券価格評価クーポンが変わる債券(変動利付債・インフレ連動債)の仕組みと値段のつけ方
(3) 金利の理論、期間構造とスプレッドZスプレッド・ASWスプレッド・OASなど、国債などとの利回り差の測り方と使い方
(4) 債券のリターンと金利リスクの分析イールドカーブの形の変化を少数のファクターで捉え、リスクを管理する
(5) 金利変動モデルに基づく債券価格評価金利が将来どう動くかをモデル化し、ツリーやシミュレーションで債券を評価する
(6) オプション内蔵型債券の仕組みと評価コーラブル債・プッタブル債・転換社債など、オプションが付いた債券の評価とリスク指標
(7) 社債投資と信用リスクの分析デフォルトの可能性をモデルで捉え、信用スプレッドや予想損失を分析する
(8) 証券化商品の仕組みと評価MBS・ABSなど、ローンをまとめて作った債券の構造とリスクを理解する
(9) 債券ポートフォリオによる投資戦略インデックス運用からアクティブ運用、クレジット戦略、グローバル運用まで、債券運用の実践手法

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

参考:1次も含めた大分類の全体像

協会の「主要学習事項と学習ポイント」では、1次と2次で大分類に同じ通し番号を使っています。2次の債券分析に(1)が出てこないのは、これらを1次で学ぶためです。2次は1次の内容を前提に出題されるので、全体の流れを参考に確認しておきましょう。

大分類扱う試験ひとことで言うと
(1) 債券の種類・特性と債券市場の仕組み1次のみ債券とはどんな商品で、どこで・誰が・どうやって発行・売買しているのかを知る
(2) 金利と債券価格評価1次・2次クーポンが変わる債券(変動利付債・インフレ連動債)の仕組みと値段のつけ方
(3) 金利の理論、期間構造とスプレッド1次・2次Zスプレッド・ASWスプレッド・OASなど、国債などとの利回り差の測り方と使い方
(4) 債券のリターンと金利リスクの分析1次・2次イールドカーブの形の変化を少数のファクターで捉え、リスクを管理する
(5) 金利変動モデルに基づく債券価格評価2次のみ金利が将来どう動くかをモデル化し、ツリーやシミュレーションで債券を評価する
(6) オプション内蔵型債券の仕組みと評価2次のみコーラブル債・プッタブル債・転換社債など、オプションが付いた債券の評価とリスク指標
(7) 社債投資と信用リスクの分析1次・2次デフォルトの可能性をモデルで捉え、信用スプレッドや予想損失を分析する
(8) 証券化商品の仕組みと評価1次・2次MBS・ABSなど、ローンをまとめて作った債券の構造とリスクを理解する
(9) 債券ポートフォリオによる投資戦略1次・2次インデックス運用からアクティブ運用、クレジット戦略、グローバル運用まで、債券運用の実践手法

1次で学ぶ内容は【証券アナリスト1次】債券分析の記事で学習ポイントごとに解説しています。

(2) 金利と債券価格評価

ポイント:1次では主に固定利付債を扱いましたが、2次ではクーポンが市場金利や物価に連動して変わる債券を学びます。キャッシュフローが変わる債券をどう評価し、どんなリスクを持つのかを押さえます。

学習ポイント学ぶ内容
変動利付債の仕組みと評価クーポンが基準金利+スプレッドで見直される債券。金利が変わってもクーポンが追随するため、価格変動(金利リスク)が小さいという特徴と評価方法
インフレ連動債の仕組みと評価元本(とクーポン)が物価指数に連動する債券。実質利回りで評価し、インフレから資産を守れる一方で物価や実質金利の変動の影響を受ける

(3) 金利の理論、期間構造とスプレッド

ポイント:社債などが国債やスワップ金利に比べてどれだけ高い利回りを提供しているかを、精度の高い方法で測ります。スプレッドの種類ごとに、何を基準にした上乗せなのかを区別することがポイントです。

学習ポイント学ぶ内容
Zスプレッド・ASW・OASスポットレート全体に一律に上乗せするZスプレッド、アセットスワップで変動金利に置き換えたときのASWスプレッド、オプション価値を除いたOASの計算と使い分け

(4) 債券のリターンと金利リスクの分析

ポイント:金利は「全体が同じだけ動く」とは限りません。イールドカーブの形の変化を、少数の要因(ファクター)に分けてとらえ、リスクを管理する考え方を学びます。

学習ポイント学ぶ内容
ファクター・モデルによるカーブ分析イールドカーブの変化を水準(レベル)・傾き(スロープ)・曲率(カーバチャー)などのファクターで説明し、それぞれへのリスクを管理する

(5) 金利変動モデルに基づく債券価格評価

ポイント:将来の金利がどう動くかを確率的なモデルで表し、それを使って債券を評価する方法です。二項ツリー、確率過程による金利モデル、モンテカルロシミュレーションといった道具と、カーブの形に対するリスクの測り方を学びます。

学習ポイント学ぶ内容
二項モデルとカリブレーション金利が上下に分岐するツリーで債券を評価する方法と、いまの市場価格に合うようにツリーを調整する(カリブレーション)考え方、キャッシュフローが金利の経路に左右される場合の扱い
確率過程による金利モデル金利の動きを確率過程(ドリフトとランダムな変動)で表すモデルの仕組みと、そこからイールドカーブを導いて使う方法
金利ボラティリティの期間構造満期によって金利の変動の大きさが違うこと(ボラティリティの期間構造)と、それが債券の金利リスクに与える影響
モンテカルロ法による評価乱数で多数の金利シナリオを作り、各シナリオのキャッシュフローの現在価値を平均して債券価格を求める。MBSのように経路に依存する債券に向く
カーブ形状パラメータへのエクスポージャーイールドカーブの水準・傾き・曲率などを決めるパラメータが変わったとき、ポートフォリオの価値がどれだけ動くかを測り管理する
キーレート・デュレーション2年・5年・10年など特定の満期の金利だけが動いたときの価格感応度。カーブが平行でなく動くときのリスクを測れる

(6) オプション内蔵型債券の仕組みと評価

ポイント:発行体が途中で償還できるコーラブル債、投資家が途中で売り戻せるプッタブル債、株式に転換できる転換社債など、オプションが組み込まれた債券を扱います。オプションの価値を分けて考えることと、通常のデュレーションではなく実効デュレーションを使うことがポイントです。

学習ポイント学ぶ内容
コーラブル債・プッタブル債の仕組みコーラブル債は金利が下がったとき発行体が借り換えられる一方、投資家は再投資リスクを負う。プッタブル債はその逆で投資家に有利――という損得の構造
実効デュレーションと金利ツリー評価金利ツリーの各ノードで償還・売戻しの判断を反映させて価格を求め、金利を上下にずらした価格から実効デュレーションを計算してリスク管理に使う
ボラティリティ・カーブ形状と価格金利ボラティリティが高まるとオプションの価値が上がるため、コーラブル債の価格は下がり、プッタブル債の価格は上がる。カーブの形も行使されやすさを通じて価格に影響する
OASの算出とボラティリティの影響金利ツリーで評価した価格が市場価格に一致するよう上乗せするスプレッドがOAS。想定するボラティリティを高くすると、コーラブル債のOASは小さく算出される
実効デュレーション・コンベクシティ等オプション内蔵型債券の金利感応度を、実効デュレーション・実効コンベクシティ・キーレート・デュレーションで計算して使い分ける。コーラブル債は負のコンベクシティを持ちうる
転換社債の特性と評価株式に転換できる社債。価値はおおむね「債券としての価値」と「転換価値(株式に換えた場合の価値)」の大きい方を下限とし、株価上昇の恩恵と下値の支えを併せ持つ
キャップ付き・フロア付き変動利付債クーポンに上限(キャップ)や下限(フロア)がある変動利付債。キャップ付きは投資家がキャップを売った形、フロア付きは投資家がフロアを買った形として評価する

(7) 社債投資と信用リスクの分析

ポイント:発行体がデフォルトする可能性をどう数量化するかを学びます。格付やスコアリング、構造型モデルと誘導型モデルという2つの代表的なモデル、信用スプレッドの期間構造、そしてポートフォリオとしての損失の見積もり方が中心です。

学習ポイント学ぶ内容
信用スコアリングと格付財務指標などから信用力を点数化するスコアリング・モデルと、格付機関の信用格付との関係や違い
構造型モデル企業の資産価値が負債を下回るとデフォルトすると考えるモデル。株式を企業資産のコール・オプションとみなすのが代表的な考え方
誘導型モデルデフォルトの発生を確率(デフォルト強度)で直接モデル化する方法。市場データに合わせやすいという特徴と使い方
信用スプレッドの期間構造満期ごとの信用スプレッドの形を決める要因。信用力や景気、流動性などによって右上がりにも右下がりにもなる
予想損失と予想外損失予想損失はデフォルト確率×デフォルト時損失率×エクスポージャーで求める平均的な損失、予想外損失はそこからのぶれ(損失の不確実性)であることと、その解釈

(8) 証券化商品の仕組みと評価

ポイント:住宅ローンや自動車ローンなどをまとめて、それを裏付けに発行する債券(証券化商品)の仕組みを学びます。優先・劣後などの階層構造と、借り手の期限前返済によるキャッシュフローの変化がカギです。

学習ポイント学ぶ内容
証券化の構造と階層化資産を特別目的事業体(SPV)に移して証券を発行する基本構造と、損失を負う順番(信用度)や返済を受ける順番(期間)で分けるトランチングの考え方
RMBS・CMBSの仕組みとリスク住宅ローン担保のRMBSと商業用不動産ローン担保のCMBSの仕組み、キャッシュフローの特徴とリスクの違い
パススルー証券とCMOローンの返済をそのまま投資家に流すパススルー証券と、キャッシュフローを複数のトランシェに振り分けて期限前返済リスクを再配分するCMO
MBSの期限前償還リスク金利が下がると借り換えが増えて早く返ってくる(短期化リスク)、上がると返済が遅れる(長期化リスク)という特徴
ABSの仕組みとリスク自動車ローンやクレジットカード債権などを裏付けとするABSの仕組みと、裏付け資産ごとのリスクの特徴
証券化商品のクレジット分析企業の信用分析と違い、裏付け資産の質や証券化の構造(信用補完など)、サービサーの能力を重視して分析する点

(9) 債券ポートフォリオによる投資戦略

ポイント:債券を組み合わせてどう運用するかを学ぶ、2次の債券分析の総仕上げです。インデックス運用やラダー型の構築から、金利見通しに基づくアクティブ運用、イールドカーブ戦略、レバレッジ、クレジット戦略、グローバル運用まで、これまで学んだ評価手法とリスク指標をすべて使います。

学習ポイント学ぶ内容
債券指数・インデックス運用・ラダー型ベンチマークとなる債券指数の特徴と選び方、指数に連動させる運用や、満期を均等に分散させるラダー型ポートフォリオの作り方とリスク・リターン
金利見通しに基づくポジション調整自分の金利見通しとフォワードレート(市場が織り込む金利)を比べ、デュレーションなどを調整するアクティブ運用の考え方
キャリーとロールダウン利回りを受け取ることによる収益(キャリー)と、時間の経過で残存期間が短くなり右上がりのカーブ上を「転がり落ちる」ことで生まれる値上がり益(ロールダウン)
イールドカーブ戦略ブレット型・バーベル型・バタフライなど、カーブのスティープ化・フラット化や曲率の変化を狙う戦略とそのリスク・リターン
キーレート・デュレーションの活用ポートフォリオのキーレート・デュレーションをベンチマークと比べ、どの年限の金利変化に強い・弱いかを分析する
ファクター・モデルを使った戦略水準・傾き・曲率などのファクターへのエクスポージャーを管理・調整してポートフォリオを組む手法
レバレッジの利用レポ取引や先物・スワップなどでレバレッジをかける方法と、リターンが増える一方で損失も拡大するという効果
投資適格・ハイイールド・証券化商品投資適格社債とハイイールド社債のリスク特性の違い(金利リスク中心か信用リスク中心か)と、証券化商品をポートフォリオに組み入れる方法
クレジット戦略とスプレッドの活用トップダウン・ボトムアップによるクレジット戦略の分析、スプレッド・デュレーションなどによるリスク管理とクレジット・スプレッドの使い方
グローバル債券ポートフォリオ世界の債券を含む総合指数をベンチマークに、国別の金利・為替・信用リスクを考えながら運用する方法

債券分析を学ぶときのコツ

1. 1次の「割引」「デュレーション」を土台にする

2次の債券分析は、スポットレートでキャッシュフローを割り引く考え方と、デュレーション・コンベクシティの理解が前提です。ここがあやふやだと、金利ツリーや実効デュレーションでつまずきやすくなります。まず1次の(2)〜(4)を自分で計算できるレベルまで復習しておきましょう。

2. 「オプションが付いている」ことを常に意識する

コーラブル債、MBS、転換社債、キャップ付き変動利付債などは、どれも「普通の債券+オプション」として分解すると理解しやすくなります。誰がオプションを持っているのか、ボラティリティが上がると誰が得をするのかを、図や言葉で説明できるようにしておくと、記述式の問題にも強くなります。

3. ポートフォリオ戦略は評価手法と結びつける

(9)の運用戦略は、(3)〜(8)で学んだスプレッド、キーレート・デュレーション、信用リスクなどの道具を使う場面です。戦略名を覚えるだけでなく、「どのリスク指標で効果を確かめるのか」をセットで整理しましょう。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. 2次の債券分析は1次と何が違いますか?

1次は固定利付債の価格・利回り・デュレーションなど基礎が中心ですが、2次は変動利付債やオプション内蔵型債券、証券化商品の評価、金利ツリーやモンテカルロ法、信用リスクモデル、債券ポートフォリオの運用戦略まで扱います。解答も記述式になり、考え方の説明が求められます。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

金利ツリーによるコーラブル債・プッタブル債の評価、実効デュレーション・実効コンベクシティ、キーレート・デュレーション、転換社債の価値、予想損失、キャリーとロールダウンなどが代表的です。テキストの例題を電卓で実際に解き、手順を身につけておきましょう。

Q. 学習ポイントとは何ですか?

日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。