法令・諸規則

取引所定款・諸規則②受託契約準則・信用取引・清算決済|外務員試験の要点

取引所定款・諸規則② 受託契約準則

結論:受託契約準則は「顧客と証券会社の約束ごと」で、数字は30%・30万円・20%・6か月・起算して3日目の5つを押さえれば大半が解けます。

  • 信用取引の委託保証金は約定価額の30%以上、かつ最低30万円。差入れは売買成立日から起算して3日目の正午まで(証券会社が指定する日時)
  • 委託保証金が約定価額の20%を下回ると追加差入れ(追証)が必要
  • 代用有価証券の掛目は株券80%・国債95%・地方債/社債85%
  • 制度信用取引の弁済期限は最長6か月。一般信用は顧客と証券会社で決める
  • 成立した売買は日本証券クリアリング機構(JSCC)が債務を引き受けて清算する

一種・二種の出題範囲

一種◯ 出題範囲二種△ 基礎のみ信用取引・デリバティブ部分外務員必携 第2巻

清算・決済と受託契約準則の一般ルールは一種・二種共通です。信用取引と市場デリバティブ取引は、二種では基礎的な知識に限って出題されます(日本証券業協会)。「二種は基礎のみ」の印がある見出しは、二種の方は数字と仕組みの大枠だけ押さえれば十分です。

▶ この章の解説動画

動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。

外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。

清算・決済規程:取引所で成立した売買の決済

取引所で売買が成立すると、その後の決済は清算機関が担います。東証などの現物株式・大阪取引所のデリバティブの清算機関は株式会社日本証券クリアリング機構(JSCC)です。

用語 意味
債務引受け 清算機関が売り手と買い手の間に入り、それぞれの相手方として債務を引き受ける。取引参加者は相手の信用リスクを気にせず取引できる
ネッティング 同じ銘柄・同じ決済日の売りと買いを差し引きし、差額だけを受け渡す
DVP決済 証券の引渡しと代金の支払いを同時に行い、片方だけ履行されるリスクをなくす
振替機関 上場株式は株券が電子化されており、証券保管振替機構(ほふり)の口座の振替で受渡しが行われる

普通取引の決済は売買成立日から起算して3日目(T+2)です。当日決済取引は当日、発行日決済取引は売買期間終了後に一律の日に決済されます。売買の種類そのものは取引所定款・諸規則①取引参加者・上場制度・売買立会で整理しています。

受託契約準則とは

受託契約準則は、顧客が取引参加者(証券会社など)に取引所での売買を委託するときの契約の中身を、取引所が定めたものです。取引参加者は顧客からの注文をこの準則に従って受け、顧客もこの準則に従うことになります。外務員にとっては、注文を受けるときの確認事項や、代金・保証金の期限を顧客に説明する根拠になるルールです。

準則の主な内容 ポイント
取引の受託 注文の受け方、顧客が指示すべき事項
受渡し 普通取引の受渡日、顧客が代金・証券を差し入れる期限
発行日決済取引 委託保証金の差入れ
信用取引 委託保証金、代用有価証券、追加差入れ、弁済期限、権利の処理
外貨の取扱い 委託保証金を米ドルで差し入れる場合の評価
債務不履行 顧客が期限までに履行しない場合の処理

取引の受託と注文の指示事項

顧客は注文のたびに、少なくとも次の事項を指示します。外務員が注文を受けるときに確認漏れが起きやすいポイントでもあります。

  • 売買の対象となる銘柄と、売りか買いかの別
  • 数量値段(指値か成行か)
  • 売買の種類(普通取引か、発行日決済取引か)と、信用取引かどうか(信用取引なら制度信用か一般信用かも)
  • 注文の有効期間と、どの取引所で執行するか

受渡しと債務不履行

普通取引の受渡日は売買成立日から起算して3日目です。顧客は受渡日までの証券会社が指定する日時までに、買付代金や売付証券を差し入れなければなりません。

顧客が期限までに代金や証券を差し入れないときは、証券会社は任意に顧客の計算で反対の売買(売付けや買付け)をして決済でき、生じた損失は顧客の負担になります。「顧客の同意を得なければ処分できない」とあれば×です。

発行日決済取引の委託保証金

発行日決済取引は、株主割当の増資で発行される新株を、発行前に売買する取引です。決済が先になるため、顧客は約定価額の30%以上の委託保証金を、売買成立日から起算して3日目の日の正午まで(証券会社が指定する日時)に差し入れます。委託保証金は代用有価証券で代えることもできます。

受託契約準則の信用取引ルール

信用取引は、顧客が証券会社からお金を借りて株を買う(信用買い)、または株を借りて売る(信用売り)取引です。二種でも基礎は出題されるので、この節は一種・二種とも必須です。商品としての仕組みや制度信用・一般信用の違いは株式業務②信用取引・外国株式の取引で詳しく扱います。

項目 ルール
口座の設定 取引の前に信用取引口座設定約諾書を差し入れて口座を開く
委託保証金の率 約定価額の30%以上(レバレッジ型・インバース型ETF等は60%以上)
最低額 30%の額が30万円に満たないときは30万円
差入れ期限 売買成立日から起算して3日目の日の正午までの、証券会社が指定する日時
維持率 相場の変動などで受入保証金が約定価額の20%を下回ったら追加差入れ
追加差入れの期限 計算上の損失が生じた日から起算して3日目の日の正午までの、証券会社が指定する日時
制度信用の弁済期限 最長6か月。6か月目の応当日から起算して3日目を超えて繰り延べられない
決済方法 反対売買(差金決済)、または現引き(買いの場合)・現渡し(売りの場合)

代用有価証券の掛目

委託保証金は現金のかわりに有価証券で差し入れることができます。これを代用有価証券といい、値下がりのリスクがあるため、前日の時価に一定の率(掛目)を掛けた額で評価します。掛目は上限で、証券会社はこれより低く設定することもできます。

代用有価証券 掛目(上限)
国債証券 95%
地方債証券・社債券 85%
公社債投資信託の受益証券 85%
株券(上場株式) 80%
転換社債型新株予約権付社債券 80%
その他の投資信託受益証券・投資証券 80%

「安全な資産ほど掛目が高い」と覚えるのがコツです。国債95%が最も高く、株券は80%です。

例題1(新規建て):顧客が株価1,200円の銘柄を信用取引で2,000株買い建てたい。必要な委託保証金と、上場株式(時価150万円)を代用に使った場合の評価額は?

① 約定価額=1,200円×2,000株=2,400,000円

② 必要な委託保証金=2,400,000円×30%=720,000円(30万円以上なのでこの額)

③ 代用評価額=1,500,000円×80%=1,200,000円 ≧ 720,000円

答え:必要額72万円。代用の評価額は120万円なので、現金なしでも差し入れられる

例題2(追証):株価1,000円で3,000株を信用買いし、現金90万円を委託保証金として差し入れた。株価が780円に下がったとき、追証は必要か。必要ならいくらか(諸経費は考えない)。

① 約定価額=1,000円×3,000株=3,000,000円 → 維持すべき額=3,000,000円×20%=600,000円

② 評価損=(1,000円−780円)×3,000株=660,000円

③ 受入保証金の残り=900,000円−660,000円=240,000円

④ 不足額=600,000円−240,000円=360,000円

答え:追証が必要。36万円(維持率の計算は「約定価額」に対する率で、時価ではない点に注意)

「起算して3日目」の期限早見表

準則の期限は「売買成立日(または損失が生じた日)から起算して3日目」がほとんどです。起算日を1日目と数えるので、実質的には2営業日後になります。

場面 期限 月曜に発生した場合
普通取引の受渡し 売買成立日から起算して3日目 水曜
信用取引の委託保証金 売買成立日から起算して3日目の正午まで(証券会社が指定する日時) 水曜の正午まで
発行日決済取引の委託保証金 売買成立日から起算して3日目の正午まで(証券会社が指定する日時) 水曜の正午まで
追証(追加差入れ) 損失が生じた日から起算して3日目の正午まで(証券会社が指定する日時) 水曜の正午まで

いずれも休業日は数えません。金曜に発生すれば、土日をはさんで翌週火曜が3日目です。

信用取引のコストと貸借取引

信用取引では、顧客は借りたお金や株に対してコストを払います。信用買いの顧客は買付代金の融資に対する金利を、信用売りの顧客は借りた株に対する貸株料を証券会社に支払います。株が不足した銘柄では、信用売りの顧客がさらに品貸料(逆日歩)を負担し、制度信用取引ではこれを信用買いの顧客が受け取ります。

証券会社が顧客に貸すお金や株が足りないときは、証券金融会社から借りることができます。これを貸借取引といい、利用できるのは制度信用取引だけです。一般信用取引では貸借取引は使えません。

コスト 支払う人 性格
金利(買方金利) 信用買いの顧客 買付代金の融資に対するコスト
貸株料(売方金利) 信用売りの顧客 借りた株に対するコスト
品貸料(逆日歩) 信用売りの顧客 株が不足したときの追加コスト。制度信用では信用買いの顧客が受け取る

信用取引の権利の処理と外貨の扱い

信用取引の対象株式に配当などの権利が生じたとき、信用取引の顧客は株主ではないため、準則にもとづき金銭で調整します。制度信用取引では、配当は配当落調整額として売り方が支払い、買い方が受け取ります。株式分割などの権利落ちでは、権利の価額を売付代金・買付代金から差し引く方法などで処理します。

委託保証金は円貨のほか米ドルで差し入れることも認められており、米ドルは証券会社が指定する為替相場で円に換算し、一定の率を掛けて評価します。

信用取引の規制(日々公表銘柄・増担保規制)二種は基礎のみ

信用取引が過熱したときの取引所の措置です。取引所は信用取引の利用が過度になっている銘柄を日々公表銘柄に指定して、残高などを毎日公表し注意を促します。さらに過熱が続くと、委託保証金の率の引上げ(増担保規制)を行います。

措置 内容
日々公表銘柄 信用取引残高などを日々公表して注意喚起
増担保規制(第一次) 通常の30%に20%を加算し委託保証金率50%以上(うち現金20%以上)
第二次以降 直前の率にさらに同じ率(20%、うち現金20%)を加算
率が100%を超える場合 新規の信用売り・信用買いを禁止
市場全体の規制 委託保証金の引上げ、現金での徴収、代用掛目の引下げ、信用取引の制限・禁止

市場デリバティブ取引(大阪取引所)二種は基礎のみ

先物・オプションは大阪取引所に上場しています。受託契約準則にも、先物・オプション取引を受託するときのルール(証拠金の差入れなど)が定められています。二種の方は、取引単位・取引最終日・SQなどの基本を押さえてください。商品性や計算はデリバティブ取引①先物・先渡・スワップと市場デリバティブで詳しく扱います。

主な上場デリバティブの取引単位

商品 取引単位 呼値の単位
日経225先物(ラージ) 日経平均×1,000円 10円
日経225mini 日経平均×100円 5円
日経225マイクロ先物 日経平均×10円 5円
TOPIX先物 TOPIX×1万円 0.5ポイント
ミニTOPIX先物 TOPIX×1,000円 0.25ポイント
長期国債先物 額面1億円(標準物:利率6%・残存10年) 額面100円につき1銭
中期国債先物 額面1億円(標準物:利率3%・残存5年) 額面100円につき1銭
日経225オプション オプション価格×1,000円 300円以下は1円、300円超は5円(2026年9月時点のJPX制度概要)

取引最終日・決済・取引時間

  • 株価指数先物・日経225オプションの取引最終日は、各限月の第2金曜日(休業日なら繰上げ)の前営業日。最終決済は、翌営業日の構成銘柄の始値で算出するSQ(特別清算指数)による差金決済
  • 国債先物は3・6・9・12月の3限月取引。取引最終日は受渡決済期日(各限月の20日)の5営業日前。最終決済は受渡決済(現物の受渡し)
  • 日経225先物などの日中立会は8:45に始まり15:45に終わり、夜間(ナイト・セッション)は17:00から翌朝6:00まで。いずれも最後はクロージング・オークション(板寄せ)
  • 株価指数・国債先物のほか、金利先物、国債先物オプション、有価証券オプション(個別株オプション)、金などの商品先物も大阪取引所で取引されている

ギブアップ制度

ギブアップは、注文の執行を行う取引参加者(執行業者)と、その取引の清算・建玉管理を行う取引参加者(清算業者)を分ける制度です。顧客は複数の証券会社に発注しつつ、清算は1社にまとめられます。

試験に出るひっかけ(○×問題)

問1. 信用取引の委託保証金は約定価額の30%以上で、その額が30万円に満たない場合は30万円である。

答え:○ 30%と最低30万円はセットで覚えます。

問2. 信用取引の委託保証金は、売買成立の日の翌日から起算して3日目の正午までに差し入れればよい。

答え:× 売買成立の日「から」起算して3日目の正午まで(証券会社が指定する日時)です。

問3. 受入保証金が約定価額の30%を下回ると、委託保証金の追加差入れが必要になる。

答え:× 追加差入れの基準は20%(維持率)です。30%は新規建て時の率です。

問4. 代用有価証券の掛目は、株券が80%、国債証券が95%である。

答え:○ 地方債・社債は85%です。

問5. 制度信用取引の弁済期限は最長1年である。

答え:× 最長6か月です。一般信用取引の期限は顧客と証券会社の間で決めます。

問6. 顧客が期限までに買付代金を支払わない場合、証券会社は顧客の同意を得なければ買付株式を売却できない。

答え:× 証券会社は任意に顧客の計算で処分でき、損失は顧客の負担です。

問7. 取引所で成立した売買は、日本証券クリアリング機構が債務を引き受けて清算する。

答え:○ 清算機関が売り手・買い手それぞれの相手方になります。

この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。

外務員の次に取る資格

信用取引やデリバティブの仕組みを理解すると、「レバレッジがリスクとリターンにどう効くか」を説明できるようになります。この考え方を体系的に深めたい人は、外務員の次に証券アナリスト(CMA)CFA®でポートフォリオ理論やデリバティブ評価を学ぶ道があります。

金融機関で働く人がCFA®試験に挑む理由は、こちらで整理しています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由

よくある質問

Q. 受託契約準則とは何ですか?

A. 顧客が証券会社などの取引参加者に取引所での売買を委託するときの契約内容を、取引所が定めたものです。受渡し、発行日決済取引、信用取引、債務不履行時の処理などが定められ、取引参加者と顧客の双方がこれに従います。

Q. 信用取引の委託保証金はいくら必要ですか?

A. 約定価額の30%以上で、その額が30万円に満たない場合は30万円です。売買成立日から起算して3日目の正午までの、証券会社が指定する日時までに差し入れます。

Q. 追証はどんなときに発生しますか?

A. 相場の変動による損失などで、受入保証金が約定価額の20%を下回ったときです。損失が生じた日から起算して3日目の正午までの、証券会社が指定する日時までに不足分を差し入れる必要があります。

Q. 代用有価証券の掛目はどのくらいですか?

A. 受託契約準則上の上限は、国債証券95%、地方債・社債85%、株券80%などです。証券会社はこれより低い掛目を定めることもできます。

参考(2026年9月確認):名古屋証券取引所「受託契約準則」、日本取引所グループ「信用取引制度の概要」(東京証券取引所)、「信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン」、用語集「委託保証金」「委託保証金維持率」「代用有価証券」、「売買の種類」「立会時間(先物・オプション)」「指数先物取引制度要綱」「国債(JGB)先物 制度概要」「日経225オプション 制度概要」。掛目・保証金率は証券会社が準則より厳しく定める場合があり、制度も改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。