結論:証券投資計算は「分子と分母を正しく覚える」だけで取れる分野です。公式は10本ほど、計算は四則演算だけです。
- 株価の割安度はPER=株価÷1株当たり利益、PBR=株価÷1株当たり純資産。どちらも低いほど割安
- 稼ぐ力はROE=当期純利益÷自己資本、ROA=当期純利益÷総資産。ROE=ROA×財務レバレッジ
- 株式益回り=1÷PER。イールドスプレッド=長期金利−株式益回り
- 理論権利落値段は(権利付株価+払込金額×割当率)÷(1+割当率)
- 受渡金額は、買いなら約定代金+手数料+消費税、売りなら約定代金−(手数料+消費税)
一種・二種の出題範囲
一種◯ 出題範囲二種◯ 出題範囲外務員必携 第2巻
この章は一種・二種で範囲が同じです。最後の「委託保証金と維持率の計算」は信用取引の基礎として二種でも出題されます。
▶ この章の解説動画
動画で要点を確認してから、下の本文で数字とひっかけを押さえましょう。ほかの章の動画は YouTube「証券外務員アカデミー」にまとめています。
外務員必携の章別記事の一覧は外務員必携の章別まとめにあります。
公式一覧(まずここを暗記)
| 指標 | 公式 | 読み方 |
|---|---|---|
| 配当利回り | 1株当たり年間配当金÷株価×100(%) | 高いほど株価に対して配当が多い |
| 配当性向 | 1株当たり配当金÷1株当たり当期純利益×100(%) | 利益のうち配当に回した割合 |
| EPS(1株当たり当期純利益) | 当期純利益÷発行済株式数 | PERの分母 |
| PER(株価収益率) | 株価÷EPS(倍) | 低いほど利益に対して割安 |
| PCFR(株価キャッシュフロー倍率) | 株価÷1株当たりキャッシュフロー(倍) | キャッシュフロー=当期純利益+減価償却費 |
| BPS(1株当たり純資産) | 純資産(自己資本)÷発行済株式数 | PBRの分母 |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価÷BPS(倍) | 1倍を下回ると、株価が解散価値を下回る |
| ROE(自己資本利益率) | 当期純利益÷自己資本×100(%) | 株主の資本でどれだけ稼いだか |
| ROA(総資産利益率) | 当期純利益÷総資産×100(%) | 会社の全資産でどれだけ稼いだか |
| 株式益回り | EPS÷株価×100(%)=1÷PER | PERの逆数 |
| イールドスプレッド | 長期債利回り−株式益回り | 大きいほど株式が割高(債券が有利) |
| EV/EBITDA倍率 | EV÷EBITDA(倍) | 低いほど割安。買収価格の目安にも使う |
PER・PBR・PCFRは「株価÷1株当たりの何か」、ROE・ROAは「利益÷資本・資産」です。「倍」で表すものは株価が分子、「%」で表すものは利益が分子と覚えると混乱しません。企業分析の章でも同じ指標が出てくるので、財務諸表側からの見方は企業分析(収益性・安全性・損益分岐点・成長性)で確認してください。
配当利回りと権利落
配当利回りと配当性向
どちらも配当の多さを見る指標ですが、見ている角度が違います。配当利回りは「株価に対して1年間にいくら配当があるか」、配当性向は「利益のうち何%を配当に回したか」です。分母が株価か利益かを取り違えないようにします。
権利付最終日と権利落日
配当や株主割当の権利を得るには、会社が定める権利確定日(基準日)に株主名簿に載っている必要があります。普通取引の受渡しはT+2なので、権利確定日の2営業日前までに買えば権利を得られます。この日が権利付最終日、その翌営業日が権利落日です。
| 日 | 権利確定日との関係 | 例(確定日が金曜で休日なし) |
|---|---|---|
| 権利付最終日 | 権利確定日の2営業日前 | 水曜 |
| 権利落日 | 権利確定日の前営業日 | 木曜 |
| 権利確定日 | 基準日 | 金曜 |
理論権利落値段
株式分割や株主割当増資があると、権利落日に株価は理論上その分だけ下がります。
| 場面 | 理論権利落値段の式 |
|---|---|
| 株式分割・無償割当 | 権利付株価÷(1+割当率) |
| 有償の株主割当 | (権利付株価+払込金額×割当率)÷(1+割当率) |
| 有償と無償の同時実施 | (権利付株価+払込金額×有償割当率)÷(1+有償割当率+無償割当率) |
例題1(理論権利落値段):権利付株価960円の銘柄が、1株につき0.2株を払込金額600円で株主割当する。理論権利落値段は?
① 分子=960円+600円×0.2=960円+120円=1,080円
② 分母=1+0.2=1.2
③ 1,080円÷1.2=900円
答え:900円(同じ権利付株価で1株を1.2株に分割する場合は、960円÷1.2=800円)
PER・PCFR・PBRと株式益回り
PERは利益、PCFRはキャッシュフロー、PBRは純資産を基準に、株価が何倍まで買われているかを示します。PERが業界平均より低ければ「利益に比べて割安」と判断する材料になります。PBRが1倍を下回ると、理論上は会社を解散して純資産を分けた額より株価が安い状態です。
例題2(株価指標の一括計算):株価2,400円、当期純利益80億円、減価償却費40億円、純資産800億円、発行済株式数5,000万株、1株当たり年間配当金60円。PER・PCFR・PBR・配当利回り・配当性向・株式益回りは?
① EPS=80億円÷5,000万株=160円 → PER=2,400÷160=15倍
② 1株当たりCF=(80億円+40億円)÷5,000万株=240円 → PCFR=2,400÷240=10倍
③ BPS=800億円÷5,000万株=1,600円 → PBR=2,400÷1,600=1.5倍
④ 配当利回り=60÷2,400×100=2.5%
⑤ 配当性向=60÷160×100=37.5%
⑥ 株式益回り=160÷2,400×100≒6.67%(=1÷15)
⑦ 長期国債利回りを2.0%とすると、イールドスプレッド=2.0%−6.67%≒−4.67%
答え:PER15倍、PCFR10倍、PBR1.5倍、配当利回り2.5%、配当性向37.5%、株式益回り約6.67%、イールドスプレッド約−4.67%(長期金利などの数値は説明用の仮定)
この数値例では、ROE=80億円÷800億円=10%になります。実はPBR=PER×ROE(1.5=15×0.1)の関係が成り立ちます。選択肢の検算に使えます。
ROE・ROAと財務レバレッジ
ROEは株主が出した資本(自己資本)に対する利益率、ROAは会社が使っている全資産に対する利益率です。両者は次の式でつながります。
- ROE=ROA×財務レバレッジ(財務レバレッジ=総資産÷自己資本)
- ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ(デュポン分解)
借入れを増やして自己資本の比率を下げると、財務レバレッジが上がってROEは高くなります。ROEが高くても、借入れ頼みで安全性が低い場合があるので、ROAや自己資本比率と合わせて見ます。
例題3(ROEの分解とEV/EBITDA):売上高600億円、当期純利益30億円、総資産750億円、自己資本250億円。また、株式時価総額800億円、有利子負債300億円、現預金100億円、営業利益150億円、減価償却費50億円とする。ROA・ROE(デュポン分解)とEV/EBITDA倍率は?
① ROA=30÷750×100=4%
② ROE=30÷250×100=12%
③ 売上高当期純利益率=30÷600=5%、総資産回転率=600÷750=0.8回、財務レバレッジ=750÷250=3倍
④ 検算:5%×0.8×3=12%、ROA4%×3倍=12%
⑤ EV=800億円+300億円−100億円=1,000億円、EBITDA=150億円+50億円=200億円
⑥ EV/EBITDA=1,000÷200=5倍
答え:ROA4%、ROE12%(=5%×0.8回×3倍)、EV/EBITDA倍率5倍
イールドスプレッドとEV/EBITDA
イールドスプレッド
イールドスプレッドは、長期債(10年国債など)の利回りから株式益回りを引いたものです。株式と債券のどちらが割安かを比べる指標で、値が大きいほど株式が割高(債券が有利)、小さいほど株式が割安と判断します。
EV/EBITDA倍率
EV(企業価値)は、会社を丸ごと買うときにかかるお金の目安で、株式時価総額+有利子負債−現預金などで計算します。EBITDAは、利払い・税金・減価償却費を差し引く前の利益で、簡便には営業利益+減価償却費で求めます。減価償却の方法や金利・税制の違いに左右されにくいので、国際比較やM&Aの評価に使われます。
たとえば株式時価総額800億円、有利子負債300億円、現預金100億円ならEVは1,000億円です。営業利益150億円・減価償却費50億円ならEBITDAは200億円で、EV/EBITDA倍率は5倍になります(前の例題3で同じ数値を使って計算しています)。PERと違って有利子負債まで含めて評価するので、借入れの多い会社と少ない会社を同じ土俵で比べやすいのが利点です。
平均株価と株価指数
| 指数 | 計算の考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | 東証プライム市場から選んだ225銘柄の株価をもとにした株価平均型。分割などがあっても連続性を保つよう除数を修正する | 株価の高い(値がさ)銘柄の影響を受けやすい |
| TOPIX(東証株価指数) | 浮動株(流通株式)ベースの時価総額加重型。基準日(1968年1月4日)の時価総額を100として指数化 | 時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい |
| 単純平均株価 | 対象銘柄の株価の合計÷銘柄数(修正がなければ) | 計算は簡単だが、株式分割などで連続性が失われる |
株式分割などで株価が理論的に下がったとき、そのままでは平均株価が不連続になります。そこで新しい除数=旧除数×(修正後の株価合計÷修正前の株価合計)として、指数の連続性を保ちます。
たとえばA300円・B500円・C1,000円の3銘柄(除数3)の平均株価は600円です。Cが1株を2株に分割して理論値段が500円になると、株価合計は1,300円になります。新しい除数は3×1,300÷1,800≒2.167となり、1,300÷2.167≒600円で平均株価の連続性が保たれます。
受渡金額の計算
株式を売買したときの受渡金額は、約定代金に委託手数料と消費税(10%)を加減して求めます。買いは足す、売りは引くです。委託手数料は自由化されているので、試験では問題文で手数料率が与えられます。
| 取引 | 受渡金額 |
|---|---|
| 買付け | 約定代金+委託手数料+消費税(手数料×10%) |
| 売付け | 約定代金−(委託手数料+消費税) |
例題4(受渡金額):委託手数料は約定代金の0.8%(税抜)、消費税10%とする。(1)株価1,250円で1,000株を買い付けた場合、(2)株価3,000円で500株を売り付けた場合の受渡金額は?
(1) 約定代金=1,250円×1,000株=1,250,000円/手数料=1,250,000×0.8%=10,000円/消費税=1,000円
受渡金額=1,250,000+10,000+1,000=1,261,000円(顧客が支払う)
(2) 約定代金=3,000円×500株=1,500,000円/手数料=1,500,000×0.8%=12,000円/消費税=1,200円
受渡金額=1,500,000−(12,000+1,200)=1,486,800円(顧客が受け取る)
答え:(1)1,261,000円 (2)1,486,800円
委託保証金と維持率の計算
信用取引の計算は、二種でも基礎として出題されます。使う数字は委託保証金30%(最低30万円)、維持率20%、代用掛目(株券80%など)の3つです。
| 計算 | 式 |
|---|---|
| 必要な委託保証金 | 約定価額×30%(30万円未満なら30万円) |
| 代用有価証券の評価額 | 前日の時価×掛目 |
| 受入保証金 | 現金+代用評価額−建玉の評価損−諸経費 |
| 維持すべき額 | 約定価額×20% |
| 追証 | 維持すべき額−受入保証金(プラスのとき) |
信用売りの場合も考え方は同じで、株価が上がると評価損になります。たとえば800円で5,000株を信用売りし(約定価額400万円)、現金120万円を差し入れたとします。株価が1,000円に上がると評価損は100万円で、受入保証金は20万円に減ります。維持すべき額は400万円×20%=80万円なので、不足する60万円が追証です。
代用有価証券が値下がりするケースや、制度信用・一般信用の違いは株式業務②信用取引・外国株式の取引で解説しています。
試験に出るひっかけ(○×問題)
問1. PERは、1株当たり当期純利益を株価で割って求める。
答え:× PER=株価÷1株当たり当期純利益です。逆にすると株式益回りになります。
問2. 株式益回りはPERの逆数である。
答え:○ PER15倍なら株式益回りは約6.67%です。
問3. イールドスプレッドが大きいほど、株式は債券に比べて割安と判断される。
答え:× 長期金利−株式益回りが大きいほど、株式は割高と判断されます。
問4. ROEは、ROAに財務レバレッジ(総資産÷自己資本)を掛けたものに等しい。
答え:○ ROA4%、財務レバレッジ3倍ならROEは12%です。
問5. 株価1,500円の銘柄が1株を1.5株に分割するとき、理論権利落値段は1,000円である。
答え:○ 1,500円÷1.5=1,000円です。
問6. 株式の売付けの受渡金額は、約定代金に委託手数料と消費税を加えた額である。
答え:× 売付けは約定代金から手数料と消費税を差し引きます。加えるのは買付けです。
問7. PCFRの計算に使う1株当たりキャッシュフローは、当期純利益に減価償却費を加えて求める。
答え:○ 簡便法では当期純利益+減価償却費をキャッシュフローとします。
この章の論点は外務員試験の模擬試験(一種・二種 各3回分・全問解答解説つき)でも出題しています。要点を読んだら、本番形式の問題で理解を確かめてください。
外務員の次に取る資格
PER・PBR・ROE・EV/EBITDAは、アナリストが毎日使う道具そのものです。外務員試験では公式を当てはめるだけですが、「なぜこの倍率が妥当か」まで踏み込むのが証券アナリスト(CMA)やCFA®の株式評価です。計算が得意だと感じた人には相性のよい次の一歩です。
金融機関で働く人がCFA®試験に挑む理由は、こちらで整理しています。
【金融機関×CFA】銀行・証券・保険・アセマネ勤務の方がCFA®試験に挑む理由
よくある質問
Q. PERとPBRはどう使い分けますか?
A. PERは株価を1株当たり当期純利益で割った倍率で、利益に対する割安度を見ます。PBRは株価を1株当たり純資産で割った倍率で、純資産(解散価値)に対する割安度を見ます。どちらも低いほど割安と判断します。
Q. 権利付最終日はいつですか?
A. 普通取引の受渡しがT+2なので、権利確定日(基準日)の2営業日前が権利付最終日です。その翌営業日が権利落日になります。
Q. 受渡金額の計算で消費税はどこにかかりますか?
A. 委託手数料に10%かかります。約定代金にはかかりません。買付けは約定代金に手数料と消費税を加え、売付けは約定代金から手数料と消費税を差し引きます。
Q. イールドスプレッドはどう計算し、どう読みますか?
A. 長期債利回りから株式益回り(1÷PER)を引いて求めます。値が大きいほど株式が債券に比べて割高、小さいほど割安と判断します。
参考(2026年9月確認):日本取引所グループ「売買の種類」、用語集「委託保証金」「委託保証金維持率」「代用有価証券」、名古屋証券取引所「受託契約準則」。PER・PBR・ROE等の公式は一般的な定義にもとづき、例題の数値はすべて説明用の仮定です。
