【CFA®︎ L1 FSA LM9】Analysis of Income Taxes を要点解説|繰延税金資産・繰延税金負債・一時差異・実効税率

Learning Module 9「Analysis of Income Taxes(法人所得税の分析)」は、会計上の利益・課税所得・未払法人税・法人税等費用の違いと一時差異・永久差異、繰延税金資産・負債の発生と分析上の扱い、実効税率・法定税率・キャッシュ税率の比較、税金関連の開示の分析を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM9のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM9には4つのLOSがあります。
- LOS 1:会計上の利益、課税所得、未払法人税、法人税等費用を対比し、会計上の利益と課税所得の間の一時差異と永久差異を対比するcontrast accounting profit, taxable income, taxes payable, and income tax expense and temporary versus permanent differences between accounting profit and taxable income
- LOS 2:繰延税金負債と繰延税金資産がどのように生じるか、および財務分析においてそれらをどう扱うべきかを決める要因を説明するexplain how deferred tax liabilities and assets are created and the factors that determine how a company’s deferred tax liabilities and assets should be treated for the purposes of financial analysis
- LOS 3:発行体の実効税率、法定税率、キャッシュ税率を計算・解釈・対比するcalculate, interpret, and contrast an issuer’s effective tax rate, statutory tax rate, and cash tax rate
- LOS 4:繰延税金項目と実効税率の調整表に関する開示を分析し、その情報が企業の財務諸表と財務比率に与える影響を説明するanalyze disclosures relating to deferred tax items and the effective tax rate reconciliation and explain how information included in these disclosures affects a company’s financial statements and financial ratios
LM9のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 会計上の利益は会計基準に従って損益計算書に表示される利益で、法人税等費用を差し引く前の金額
- 課税所得は各法域の税法上の課税対象となる所得で、貸借対照表の負債である未払法人税の基礎となる
- 一時差異(将来加算・将来減算)は将来の期間に解消されるが、永久差異は解消されない
- 繰延税金資産・負債は、会計上の利益と課税所得の一時差異から生じる
- 未払法人税に繰延税金負債の増加を加え、繰延税金資産の増加を差し引くと、損益計算書の法人税等費用が求められる
- 未払法人税は主に課税所得の地域構成と各法域の税率で決まる
- 分析上重要な税率は、法定税率・実効税率・キャッシュ税率の3つ。注記では法定税率から実効税率への調整表が開示され、実効税率を一時的に押し上げたり押し下げたりした項目がわかる
- 法人所得税の情報は損益計算書・貸借対照表・税金に関する注記で開示され、注記には繰延税金資産・負債の内訳が示される
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:会計上の利益と課税所得、一時差異と永久差異
会計上の利益は会計基準に、課税所得は税法に基づいて計算されるため、両者は一致しません。差異のうち将来解消されるものが一時差異で繰延税金を生み、解消されないものが永久差異で繰延税金を生まず実効税率を法定税率から乖離させます。
- 会計上の利益(税引前利益):会計基準に基づく
- 課税所得:税法に基づき、未払法人税の基礎
- 法人税等費用 = 未払法人税(当期税金)+ 繰延税金費用
- 一時差異:資産・負債の帳簿価額と税務基準額(tax base)の差。将来解消
- 永久差異:損金不算入の費用、非課税の収益など。解消されない
- 永久差異は実効税率と法定税率の差の原因になる
LOS 2:繰延税金資産・負債の発生と分析上の扱い
繰延税金負債(DTL)は、会計上の利益が課税所得を上回り、将来に税金を多く払うことになる場合に生じます。繰延税金資産(DTA)は課税所得が会計上の利益を上回り、将来の税金が減る場合に生じます。DTAは回収可能性、DTLは解消の見込みによって分析上の扱いを判断します。
- DTLの典型例:税務上の加速償却(会計上は定額法)
- DTAの典型例:製品保証引当金、前受収益、繰越欠損金
- 資産の帳簿価額 > 税務基準額 → DTL、資産の帳簿価額 < 税務基準額 → DTA(負債は逆)
- DTAの回収可能性:US GAAPは評価性引当金(valuation allowance)で減額、IFRSは将来の課税所得が得られる可能性が高い範囲でのみ認識
- 解消が見込まれないDTLは自己資本として扱う、解消時期が不確実なら負債・資本の両方から除くこともある
- 税率変更時はDTA・DTLを新税率で再測定し、差額は税金費用に反映
LOS 3:実効税率・法定税率・キャッシュ税率
法定税率は法律で定められた税率、実効税率は損益計算書の法人税等費用を税引前利益で割ったもの、キャッシュ税率は実際に支払った税額を税引前利益で割ったものです。3つの差から、永久差異や海外所得の影響、税金の支払いの繰延べの状況がわかります。
- 実効税率 = 法人税等費用 ÷ 税引前利益
- キャッシュ税率 = 支払税額 ÷ 税引前利益
- 実効税率と法定税率の差:永久差異、税率の異なる国での所得、税額控除など
- キャッシュ税率が実効税率より低い:税金の支払いが繰り延べられている(DTLの増加など)
- 予測では持続的な税率水準を見極めることが重要
LOS 4:税金関連の開示と財務諸表への影響
税金の注記では、法定税率から実効税率への調整表と繰延税金資産・負債の内訳が開示されます。調整項目が継続的か一時的かを見極めることで、将来の実効税率の予測や、利益・純資産の質の評価に役立ちます。
- 税率調整表:法定税率を起点に、海外税率差、損金不算入項目、税額控除、税率変更などの影響を表示
- 一時的な調整項目は将来の実効税率の予測から除いて考える
- DTA・DTLの内訳:減価償却、引当金、繰越欠損金、評価性引当金など
- 評価性引当金の増減は将来の収益見通しに対する経営者の判断を反映し、利益調整に使われうる
- DTLを負債・資本のどちらとみなすかで負債比率などが変わる
効率よく学ぶには FA-Academy
CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。
















