【CFA®︎ L1 Quants LM9】Simulation of Financial Asset Prices and Returns を要点解説|ヒストリカル・ブートストラップ・モンテカルロの違い

Learning Module 9「Simulation of Financial Asset Prices and Returns(金融資産の価格・リターンのシミュレーション)」は、将来の価格やリターンの分布を作り出す3つのシミュレーション手法(ヒストリカル・シミュレーション、ブートストラップ、モンテカルロ・シミュレーション)の仕組みと使い分けを扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM9のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM9には3つのLOSがあります。
- LOS 1:ヒストリカル・シミュレーションを説明し、投資での使い方を説明するdescribe historical simulation and explain how it can be used in investment applications
- LOS 2:ブートストラップ(リサンプリング)を説明し、投資での使い方を説明するdescribe bootstrap resampling, and explain how it can be used in investment applications
- LOS 3:モンテカルロ・シミュレーションを説明し、投資での使い方を説明するdescribe Monte Carlo simulation and explain how it can be used in investment applications
LM9のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- シミュレーションは、非線形のエクスポージャーや、市場変数の経路に依存するペイオフの評価に広く使われる
- シミュレーションの質は、その分布の仮定(明示的・暗黙的)が将来の価格やリターンの分布をどれだけうまく表せるかで決まる
- ヒストリカル・シミュレーションは、過去のリスク要因や市場変数の変化を使ってポートフォリオや契約の価値への影響を評価する。リスク管理で広く使われ、大手銀行には規制上求められることも多い
- ブートストラップは過去データから復元抽出して将来の分布を作るノンパラメトリックな手法で、分布の仮定は置かないが、標本が母集団を正しく表している必要がある
- モンテカルロ・シミュレーションは、変数の分布を仮定し、ランダムな標本を大量に生成して結果の分布を作る
- よく設計されたシミュレーションの基盤は、3つの手法のいずれの入力にも対応できることが望ましい
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:ヒストリカル・シミュレーションとその投資への応用
過去に実際に起きたリターンのシナリオをそのまま今のポートフォリオに当てはめて、損益の分布を作る方法です。分布の仮定が不要で、実際に起きた相関や極端な動きを反映できますが、過去に起きなかったことは再現できません。
- 長所:分布の仮定が不要、わかりやすく説明しやすい、実データの相関やファットテールを反映
- 短所:シナリオの数が過去データの量に縛られる、過去に起きなかった事象を再現できない
- 例:ロング・オンリーのポートフォリオのリスク評価
LOS 2:ブートストラップとその投資への応用
過去データからランダムに復元抽出(取り出したら戻す)を繰り返して、疑似的なシナリオを大量に作る方法です。過去データの特徴を生かしつつ、ヒストリカルより多くのシナリオを作れます。
- 前提:過去のデータが将来の分布を代表している
- 長所:分布の仮定が不要、少ないデータからも多数のシナリオを作れる
- 短所:時系列のつながり(自己相関)が崩れる、データが少ないと偏る
- 例:ターゲット・デート・ファンドのボラティリティ分析、コール・オプションの評価
LOS 3:モンテカルロ・シミュレーションとその投資への応用
リスク要因の分布(例:正規分布・対数正規分布)とパラメータを分析者が選び、乱数で何千・何万ものシナリオを生成して結果の分布を見る方法です。複数の資産を同時に扱うときは、コレスキー分解で相関を保った乱数を作ります。解析的に解けない経路依存型のオプション(アジアン・オプションなど)の評価に向いています。
- シミュレーションの流れ:①設定(パラメータ化)→②シナリオ生成→③評価・計算→④結果の集計
- 長所:複雑な商品や将来の新しい状況を柔軟にモデル化できる
- 短所:仮定した分布が間違っていれば結果も間違う、計算負荷が大きい、統計的な近似にとどまる
- コレスキー分解:相関構造を保った多変量の乱数を生成する
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