Learning Module 10「Applications of Simple Linear Regression in Finance(ファイナンスにおける単回帰分析の応用)」は、1つの説明変数で被説明変数を説明する単回帰分析について、最小二乗法による推定、前提条件と残差分析、当てはまりの評価、予測、そしてCAPMのベータ推定への応用を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM10のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM10には4つのLOSがあります。

  1. LOS 1:最小二乗法による係数の推定を含め、単回帰を記述・解釈・説明するdescribe, interpret, and explain simple linear regression, including coefficient estimation using the least squares criterion
  2. LOS 2:単回帰の前提条件を記述・比較し、残差分析で違反を見つけ、推定モデルの当てはまり・回帰係数・ANOVAの結果を評価するdescribe and compare the assumptions of simple linear regression, identify violations through analyzing residuals, evaluate the estimated model’s goodness-of-fit and regression coefficients, and results of ANOVA estimates
  3. LOS 3:単回帰モデルにおける被説明変数の予測値・推定値の標準誤差・予測区間を計算・解釈し、さまざまな関数形を説明するcalculate and interpret predicted values, the standard error of the estimate, and prediction intervals for the dependent variable in a simple linear regression model and describe different functional forms
  4. LOS 4:CAPMの変数の推定値を計算・解釈するcalculate and interpret the variable estimates of the capital asset pricing model (CAPM)

LM10のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 単回帰は、最小二乗法(OLS)でパラメータを推定する。説明変数と被説明変数の間に線形の関係を仮定する
  • パラメータは、実測値と予測値の差の2乗の合計を最小にするように推定する
  • OLSの前提は、線形性・等分散性・独立性・残差の正規性
  • 分散分析(ANOVA)では、全変動(SST)、説明された変動(SSR)、説明されない変動(SSE)でモデルの当てはまりを評価する。良いモデルはSSRが大きくSSEが小さい
  • 傾きと切片の統計的有意性は、単回帰ではt統計量で検定する
  • 非線形の関係は、被説明変数・説明変数・またはその両方の対数を取る変換で扱える
  • CAPMは、資産の期待リターンとリスクを市場の期待リターンとリスクに結びつける1ファクターのモデルで、回帰でベータを推定できる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:単回帰と最小二乗法による係数の推定

Y = b₀ + b₁X + ε の直線を、残差の2乗和が最小になるように引くのが最小二乗法(OLS)です。傾き b₁ は「Xが1単位増えたときのYの変化」、切片 b₀ は「X = 0 のときのY」。データには時系列・クロスセクション・パネル(同じ対象を複数時点で観測)の3種類があります。

  • b₁ = Cov(X,Y) ÷ Var(X)
  • b₀ = Ȳ − b₁X̄(回帰直線は平均の点を通る)
  • 残差 = 実測値 − 予測値
  • ダミー変数(0/1)の傾き=グループ間の平均の差
b̂₁ = Cov(X,Y) / Var(X)、b̂₀ = Ȳ − b̂₁X̄

LOS 2:前提条件と残差分析、当てはまりと係数・ANOVAの評価

4つの前提は①線形性 ②等分散性 ③独立性 ④正規性。残差プロットで違反を見つけます。当てはまりはR² = SSR ÷ SST(単回帰では相関の2乗)、傾きが0かどうかはt 検定(自由度 n − 2)、モデル全体はF 検定(単回帰では F = t²)で調べます。

  • 等分散性:すべての観測で残差の分散が同じ
  • 線形性が崩れると、残差に規則的なパターンが出る
  • SST = SSR + SSE、MSR = SSR ÷ 1、MSE = SSE ÷ (n − 2)
  • F = MSR ÷ MSE
t = (b̂₁ − B₁) / s_b̂₁

LOS 3:予測値・推定値の標準誤差・予測区間と関数形

SEE(推定値の標準誤差)=√MSEは残差のばらつきで、小さいほど当てはまりが良いことを示します。予測区間は「予測値 ± t 臨界値 × 予測の標準誤差」で、Xが平均から離れるほど、また標本が小さいほど広がります。関係が直線でないときは、log-lin・lin-log・log-log に変換します。

  • SEE = √[SSE ÷ (n − 2)]
  • 予測の標準誤差は SEE より大きい
  • log-lin:Xが1単位変わるとYが一定の「率」で変わる
  • log-log:傾き=弾力性(Xが1%変わるとYが何%変わるか)
SEE = √[SSE / (n − 2)]

LOS 4:CAPMの変数を回帰で推定・解釈する

個別株の超過リターンを市場の超過リターン(市場リスク・プレミアム)に回帰すると、傾きがベータになります。ベータは市場全体との連動(システマティック・リスク)を表し、マイナスのベータの資産は市場と逆に動くため、ヘッジ効果が期待されます。

  • Rᵢ − R_f = α + β(R_m − R_f) + ε
  • β = Cov(Rᵢ, R_m) ÷ Var(R_m)
  • ベータの有意性は傾きの t 検定で判定

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