【CFA®︎ L1 Portfolio Construction LM6】Introduction to Risk Management を要点解説|リスク管理の枠組み・リスク・ガバナンス・リスク許容度・リスク・バジェット

Learning Module 6「Introduction to Risk Management(リスク管理入門)」は、リスク管理の定義と枠組み、リスク・ガバナンス、リスク許容度とリスク・バジェットの役割、金融リスクと非金融リスクの源泉とその相互作用、そしてリスク・エクスポージャーの測定と調整の方法を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM6のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM6には7つのLOSがあります。
- LOS 1:リスク管理を定義するdefine risk management
- LOS 2:リスク管理の枠組みの特徴を説明するdescribe features of a risk management framework
- LOS 3:リスク・ガバナンスを定義し、効果的なリスク・ガバナンスの要素を説明するdefine risk governance and describe elements of effective risk governance
- LOS 4:リスク許容度がリスク管理にどのように影響するかを説明するexplain how risk tolerance affects risk management
- LOS 5:リスク・バジェットと、リスク・ガバナンスにおけるその役割を説明するdescribe risk budgeting and its role in risk governance
- LOS 6:金融リスクと非金融リスクの源泉を特定し、それらがどのように相互作用し得るかを説明するidentify financial and non-financial sources of risk and describe how they may interact
- LOS 7:リスク・エクスポージャーを測定・調整する方法と、それらの方法の中から選択する際に考慮すべき要因を説明するdescribe methods for measuring and modifying risk exposures and factors to consider in choosing among the methods
LM6のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- リスク管理はリスクを避けることだけではなく、リスクを取ることは取締役会・経営者・運用者・個人による能動的な選択で、理解したうえで慎重に選び管理すべきもの
- リスク管理とは、リスク許容度を定め、リスクを測定・監視し、許容度に合うよう調整するプロセス
- リスク管理の枠組みは、リスク・ガバナンス、リスクの特定と測定、リスク・インフラ、方針とプロセス、リスクの軽減と管理、コミュニケーション、戦略的なリスク分析と統合から成る
- リスク・ガバナンスはリスク管理の最上位の基盤で、組織のリスク監督とリスク許容度の設定を含む。リスク管理委員会と最高リスク責任者(CRO)の設置は強固なガバナンスの特徴で、全社的リスク管理(ERM)の視点が重要
- リスク許容度は許容できるリスクとできないリスク、組織全体で負えるリスクの量を定め、リスク・バジェットはリスク特性に応じて投資や資産を配分する手段
- 金融リスクは市場リスク・信用リスク・流動性リスク、非金融リスクには決済・法務・規制・会計・税務・モデル・テール・オペレーショナル・ソルベンシーの各リスクがあり、個人は健康、死亡・長生き、財産・損害のリスクも負う。リスクは相互に作用し、その影響は非線形で深刻になり得る
- リスクの尺度には、標準偏差、ベータやデュレーション、デルタ・ガンマ・ベガ・ローなどのデリバティブの指標、VaR・CVaR・デフォルト時の期待損失などのテールの指標がある
- リスクは、予防と回避、自家保険や分散による内部での軽減、保険によるリスク移転、デリバティブによるリスク・シフトで調整でき、方法の選択はコストと便益、最終的なリスク・プロファイル、ガバナンスの目標との整合で判断する
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:リスク管理の定義
リスク管理とは、組織や個人がリスク許容度を定め、負っているリスクを特定・測定・監視し、許容度に合うように調整するプロセスです。リスクをなくすことではなく、価値を高めるためにどのリスクをどれだけ取るかを選ぶことが目的です。
- リスク管理はリスクの回避ではなく、リスクの選択と管理
- リスク・エクスポージャー:原因となるリスクへの感応度を通じて価値が影響を受ける程度
- 良いリスク管理はより良い意思決定とトレードオフの評価につながる
- リスク管理の成否は結果(損失の有無)だけでは判断できない
LOS 2:リスク管理の枠組み
リスク管理の枠組みは、効果的なリスク管理を支えるインフラ・プロセス・分析の総体です。ガバナンスから戦略的な統合までの要素が連携して機能します。
- リスク・ガバナンス:最上位の監督とリスク許容度の設定
- リスクの特定と測定:すべての潜在的リスク源とエクスポージャーの定量・定性評価
- リスク・インフラ:リスク・プロファイルを追跡・評価するための人員・システム
- 方針とプロセス:業務レベルでガバナンスを補完
- リスクの軽減と管理:エクスポージャーの監視と調整
- コミュニケーション(報告とフィードバック)、戦略的なリスク分析と統合
LOS 3:リスク・ガバナンス
リスク・ガバナンスは、取締役会などの経営の最上位がリスク管理の方向性を定め、監督する仕組みです。組織全体の価値を最大化する全社的リスク管理(ERM)の視点を持つことが重要です。
- 取締役会が最終的な責任を負い、リスク許容度を承認
- リスク管理委員会の設置
- 最高リスク責任者(CRO)の任命
- 全社的(エンタープライズ)な視点での管理
- 明確な権限と責任、独立したリスク管理部門
LOS 4:リスク許容度とリスク管理
リスク許容度は、組織が目標を追求する中で受け入れるリスクの種類と量を定めるもので、良いリスク・ガバナンスの中核です。許容度は、組織の目標、強み、財務体力などの内部要因と、事業環境や規制などの外部要因の両面から決まります。
- 許容できるリスクと許容できないリスクを区別
- 組織全体で負えるリスクの総量を設定
- 内部要因:目標、競争上の強み、損失を吸収する能力
- 外部要因:事業環境、競争、規制
- 平時に定めることで危機時の判断を助ける
LOS 5:リスク・バジェット
リスク・バジェットは、リスク許容度の範囲内で、リスクを事業・資産クラス・運用者などにどう配分するかを決める手段です。リスクという限られた資源を、期待リターンに見合うように割り当てる考え方です。
- リスク特性に応じて投資や資産を配分する方法
- 単一次元(例:VaRやトラッキング・エラー)で総量を配分
- 多次元:ファクターやリスクの種類ごとに配分
- アセット・アロケーションを資産ではなくリスクの観点で考える
- リスクの取り方の効率性を高め、ガバナンスを実務に結びつける
LOS 6:金融リスクと非金融リスクの源泉と相互作用
金融リスクは金融市場の動きから生じるリスクで、市場リスク・信用リスク・流動性リスクから成ります。非金融リスクは組織内部や外部環境から生じるリスクで、リスクは互いに影響し合い、非線形に損失を拡大させることがあります。
- 市場リスク:株価、金利、為替、コモディティ価格の変動
- 信用リスク:取引相手が支払わないリスク
- 流動性リスク:公正な価値から大きく値引きしなければ売却できないリスク
- 非金融リスク:決済、法務、規制、会計、税務、モデル、テール、オペレーショナル、ソルベンシー
- 個人:健康、死亡・長生き、財産・損害のリスク
- リスクの相互作用:市場の急変が信用・流動性リスクを連鎖的に高めるなど
LOS 7:リスクの測定と調整
リスクは、標準偏差、ベータやデュレーション、デリバティブのギリシャ文字、VaRなどのテールの指標で測定します。調整の方法には、予防と回避、自家保険・分散による受け入れ、保険によるリスク移転、デリバティブによるリスク・シフトがあり、コストと便益を比較して選びます。
- 市場リスクの尺度:標準偏差(ボラティリティ)、ベータ、デュレーション
- デリバティブの尺度:デルタ、ガンマ、ベガ、ロー
- テールの尺度:VaR、CVaR、デフォルト時の期待損失
- 予防と回避:リスクの原因となる活動を行わない
- 自家保険・分散:リスクを受け入れつつ内部で吸収
- リスク移転(保険)とリスク・シフト(デリバティブ)、選択はコストと便益、最終的なリスク・プロファイル、ガバナンス目標との整合で判断
効率よく学ぶには FA-Academy
CFA®︎の協会テキストは英語で分量も多く、1つひとつの単元を英語だけで理解していくのは大きな負担です。
FA-Academy(Financial Analyst Academy)は、日本語で学べる数少ないCFA®︎試験サポートです。これまで Level 1 から Level 3 まで多くの合格者を輩出しており、合格者の方々との対談も数多く公開しています。どんな方が、どのように合格されたのかは合格者対談・合格体験談の一覧からご覧いただけます。
















