Learning Module 11「Equity Analyst Research Reports(株式アナリストのリサーチレポート)」は、詳細な企業リサーチ・レポートで扱うべき要素、セルサイドとバイサイドのアナリスト・レポートとその結論の違い、そして同じモデリング手法でも売上高・収益性・投資・資金調達に関する前提によって価値推定が異なる理由を扱う単元です。

本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。

LM11のLOS(学習目標)

LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM11には3つのLOSがあります。

  1. LOS 1:詳細な企業リサーチ・レポートで扱うべき要素を説明するdescribe the elements that should be covered in a detailed company research report
  2. LOS 2:セルサイドとバイサイドの株式アナリスト・レポートとその結論を比較するcompare sell-side and buy-side equity analyst reports and their conclusions
  3. LOS 3:同じモデリング手法による価値推定値が、売上高、収益性、投資、資金調達に関するアナリストの前提によって異なり得る理由を説明するexplain why value estimates from the same modeling approach may differ based on analyst assumptions regarding revenue, profitability, investment, and financing

LM11のまとめ

この単元の要点をまとめると、次のとおりです。

  • 株式リサーチ・レポートは通常、目標株価に裏付けられた投資推奨から始まり、推奨を支える主要な論点である投資テーマも冒頭に示される。企業・業界の詳細、財務分析、バリュエーションが推奨の根拠となる
  • レポートは首尾一貫した定性・定量分析で読者を説得するように構成され、内容の詳細はセルサイドかバイサイドかによって異なる
  • セルサイドのレポートは投資銀行や証券会社が外部配布用に作成し、標準化された形式に従うことが多い。否定的な推奨には制約やリスクがあるため、買いか中立の推奨にとどまりがち
  • バイサイドのレポートは社内の投資判断のために作成され、通常は社内で機密扱いとなる。バイサイドのアナリストはセルサイドより独自性の高いモデルを使うことがある
  • 将来の成長ポテンシャルについてアナリスト間の見方のばらつきが大きい企業は、本源的価値の見極めが難しいため「評価が難しい(hard to value)」とされる
  • アナリストの目標株価が異なるのは、売上高成長率、利益率、投資水準、資金調達の選択に関する前提の違いによる

以下、LOSごとに重要論点を整理します。

LOS 1:リサーチ・レポートの構成要素

株式リサーチ・レポートは読者に推奨に沿った行動を促すためのもので、冒頭で投資推奨と目標株価、推奨を支える投資テーマ(investment thesis)を示します。続いて事業内容・業界概観・競争上のポジション、財務分析とバリュエーション、投資リスク、サステナビリティなどで推奨の根拠を示します。

  • 目標株価は点推定または範囲で示し、期待リターンを含意する。期間は1年が多いが、企業固有のイベントによって変わる
  • 推奨は絶対リターンだけでなく、同業やベンチマークに対する相対的な見通しで決まることもある
  • 事業内容・業界概観・競争上のポジション:企業と競争環境の定性的な理解
  • 財務分析:重要な指標・比率に絞り、投資テーマやバリュエーションのストーリーと整合させる
  • 投資リスク:企業固有・業界全体・マクロのリスクを挙げ、シナリオとして評価に明示的に反映
  • サステナビリティ:財務への影響が大きい業種では詳しく分析

LOS 2:セルサイドとバイサイドの比較

セルサイド・レポートは投資銀行・証券会社が外部の顧客向けに作成し、標準化された形式で幅広い銘柄をカバーします。バイサイド・レポートは運用会社内部の投資判断のために作成されて機密扱いとなり、独自のモデルを使って特定の銘柄を深く分析します。

  • セルサイド:対象は外部の投資家・トレーダー、DCFや倍率など一般的なモデルで利益予想を重視
  • セルサイドの規制上の制約:投資銀行部門との分離、非公開の重要情報の利用不可、IPO・公募増資前後の発行制限、MiFID IIによるリサーチ費用の分離
  • 否定的な推奨には制約やリスクが伴い、買いか中立に偏りがち
  • リサーチはコスト・センターのため、カバーする業種と銘柄数を戦略的に選択
  • バイサイド:スクリーニングを通過した銘柄を調査し、注目度の低い小型株なども対象にしやすい
  • アクティビスト・ショートセラー:大幅な下落が見込まれる銘柄の調査を公表する

LOS 3:アナリスト間で価値推定が異なる理由

同じモデリング手法でも、売上高成長率利益率投資水準資金調達の前提やターミナル・バリューの推定の違いによって、目標株価は大きく異なり得ます。現在の株価を本源的価値と置いてインプライド長期成長率を逆算すると、市場の期待と自分の見通しを比べられます。

  • 価値の差の主因:売上高成長の見通し、収益性の変化の見通し、ターミナル・バリューの推定
  • 売上高が増えても利益率が低下すれば、価値が下がる場合がある
  • 売上高・利益の増加を仮定するなら、見合った投資の増加も仮定すべき(投資の伸び>利益の伸びならFCFは減少)
  • 価値創造は主に営業上の戦略と成果によるもので、資金調達の前提から大きな価値を生み出さないよう注意
  • 見解の相違は価格発見を促し、市場のコンセンサスに反する見方も市場の機能に貢献する
長期FCFE成長率 = 株主資本再投資率 × ROE

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