ひとことで言うと

  • コーポレートガバナンス(企業統治)とは、経営者が株主をはじめとする利害関係者の利益に沿って経営するよう、監視し規律づけるしくみのことです。
  • 必要とされる根本の理由は、所有と経営の分離によって株主と経営者の利害がずれる(エージェンシー問題)ことにあります。
  • 日本では、企業不祥事や低い資本効率への反省から、コーポレートガバナンス・コードスチュワードシップ・コードの整備が進みました。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「ガバナンスの意義と背景」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (3) コーポレートガバナンス
協会の学習ポイント コーポレートガバナンスの意義やその考え方、背景を理解する。

コーポレートガバナンスとは

株式会社では、会社の所有者である株主が、経営を専門の経営者に任せています(所有と経営の分離)。経営者は株主の代理人として行動すべき立場ですが、情報を多く持つ経営者が、自分の地位の保身や過大な報酬、規模の拡大そのものを目的とした投資など、株主の利益に反する行動をとるおそれがあります。こうした問題を防ぎ、経営者に企業価値を高める努力を促すしくみがコーポレートガバナンスです。

2つの側面:「守り」と「攻め」

ガバナンスには、不正や不祥事を防ぎ、経営の透明性を確保する守りの側面と、経営者が適切なリスクをとって果断に意思決定し、中長期的な企業価値の向上を目指すよう後押しする攻めの側面があります。日本のコーポレートガバナンス・コードは、とくに後者の「攻めのガバナンス」を意識してつくられた点が特徴です。

誰のためのガバナンスか

ガバナンスの考え方には、企業は株主のものであり株主価値の最大化を重視する株主主権(シェアホルダー)型と、従業員・債権者・取引先・地域社会など幅広い利害関係者の利益を重視するステークホルダー型があります。近年は、株主の利益を基本に置きつつ、ステークホルダーとの適切な協働が中長期的な企業価値につながる、という考え方が広く受け入れられています。

日本での背景

日本ではかつて、メインバンクによる監視や株式の持ち合いが経営を支える一方、株主による規律が働きにくい状況がありました。その後、持ち合いの解消や外国人投資家の増加、企業不祥事の発生、欧米と比べて低いROEへの問題意識などを背景に、ガバナンス改革が進みました。機関投資家向けのスチュワードシップ・コードと、上場企業向けのコーポレートガバナンス・コードは「車の両輪」と呼ばれ、どちらも「コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない理由を説明するか)」という手法をとっています。

整理しておきたいポイント

項目 コーポレートガバナンス・コード スチュワードシップ・コード
対象 上場企業 機関投資家(受け入れを表明した者)
ねらい 企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上 対話を通じた投資先企業の価値向上と、顧客・受益者の中長期的リターンの拡大
手法 コンプライ・オア・エクスプレイン コンプライ・オア・エクスプレイン
法的拘束力 法律ではない(プリンシプルベース) 法律ではない(プリンシプルベース)

具体例で確認

手元資金が潤沢なのに、成長投資も株主還元もせずに現金をため込み、ROEが資本コストを大きく下回り続けているY社を考えます。経営者にとっては、手元資金が多いほど倒産リスクが下がり、自由に使える資金も増えるため居心地がよいかもしれません。しかし株主から見ると、資金が効率的に使われていない状態です。

ガバナンスが機能していれば、独立した社外取締役が資本効率について取締役会で問題提起したり、機関投資家が対話(エンゲージメント)の中で資金の使い道の説明を求めたりします。その結果、成長投資の計画や株主還元方針が見直され、企業価値の向上につながることが期待されます。

試験で問われやすいポイント

  • ガバナンスが必要とされる根本の理由が所有と経営の分離とエージェンシー問題にあることが問われやすいです。
  • 株主主権型とステークホルダー型の考え方の違いを押さえておきましょう。
  • コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの対象の違い(上場企業か機関投資家か)が混同しやすいポイントです。
  • 両コードとも法的拘束力のないプリンシプルベースで、コンプライ・オア・エクスプレインの手法をとる点が狙われやすいです。全原則の遵守が義務というひっかけに注意しましょう。
  • ガバナンスには不祥事防止という守りだけでなく、攻めの側面があることも押さえておきましょう。

要点まとめ

  • ガバナンス=経営者を監視・規律づけ、企業価値向上に向かわせるしくみ
  • 背景には所有と経営の分離による株主と経営者の利害のずれがある
  • 守り(不正防止・透明性)と攻め(果断な意思決定)の両面がある
  • 日本ではスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードが車の両輪

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。