ひとことで言うと

  • ステークホルダー(利害関係者)とは、株主・債権者・従業員・取引先・顧客・地域社会など、企業の活動から影響を受け、また企業に影響を与える人や組織のことです。
  • それぞれが企業に何を提供し、見返りに何を受け取るかが異なるため、利害が対立する場面があります。
  • 株主は他の関係者への支払いが済んだ後の残余利益を受け取る立場で、この点が株主価値重視の考え方の根拠になっています。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「ステークホルダーとの関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (3) コーポレートガバナンス
協会の学習ポイント 企業と各ステークホルダーの関係について理解する。

ステークホルダーとは

企業は、さまざまな関係者から経営資源の提供を受けて事業を行っています。株主と債権者は資金を、従業員は労働力やノウハウを、取引先は原材料や部品を、顧客は代金を、地域社会はインフラや事業の場を提供しています。企業はその見返りとして、配当、利息、賃金、仕入代金、製品・サービス、税金などを支払います。こうした関係者全体をステークホルダーと呼びます。

株主は「残余請求者」

債権者への利息、従業員への賃金、取引先への代金などは、あらかじめ契約で金額や条件が決まっています。一方、株主はそれらをすべて支払った後に残る利益(残余利益)を受け取る立場で、残余請求者と呼ばれます。業績がよければ大きなリターンを得られますが、悪ければ何も受け取れず、最も大きなリスクを負います。株主価値を最大化するためには、他の関係者への支払いを確実に行ったうえで利益を増やす必要があるため、株主価値の最大化は企業全体の価値を高めることにつながりやすい、というのが株主重視の考え方の根拠です。

利害が対立する場面

ただし、利害がいつも一致するわけではありません。たとえば株主と債権者の間では、負債の多い企業の株主が、失敗すれば損失の多くを債権者が負うようなハイリスクな投資を好むこと(資産代替)や、利益の多くが債権者に回るため価値のある投資でも見送ること(過少投資)といった問題が起こり得ます。また、短期的な利益のための過度な人件費削減は、従業員の意欲や技能を損ない、長期的には企業価値を下げることもあります。

近年の流れ

近年は、環境・社会への配慮(ESG)への関心の高まりもあり、ステークホルダーとの適切な協働が中長期的な企業価値の向上につながるという考え方が重視されています。日本のコーポレートガバナンス・コードでも、株主以外のステークホルダーとの適切な協働が基本原則のひとつとして掲げられています。

整理しておきたいポイント

ステークホルダー 企業に提供するもの 企業から受け取るもの
株主 自己資本(出資) 配当・株価の値上がり(残余利益)
債権者 負債(貸付・社債) 利息・元本の返済
従業員 労働力・技能 賃金・雇用の安定・成長機会
取引先 原材料・部品・サービス 代金・継続的な取引
顧客 代金 製品・サービス
地域社会・政府 インフラ・事業環境 税金・雇用・地域への貢献

具体例で確認

負債が多く、財務が苦しいW社の経営者が、成功確率は低いものの当たれば大きい新規事業に全資金を投じることを検討しているとします。成功すれば利益の大部分は株主のものになりますが、失敗すればW社は倒産し、損失の多くは返済を受けられなくなる債権者が負います。このため株主にとっては魅力的でも、債権者にとっては不利な選択です。

こうした行動を防ぐために、債権者は融資の際に財務制限条項(コベナンツ)を付けたり、高い金利を求めたりします。結果として企業の資金調達コストが上がるため、ステークホルダー間の利害の対立は、最終的に企業価値にも影響することがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • 各ステークホルダーが何を提供し何を受け取るかの対応関係が基本として問われやすいです。
  • 株主が残余請求者であり、最もリスクを負う立場であることを押さえておきましょう。
  • 株主と債権者の対立(資産代替・過少投資)と、その対策としてのコベナンツが狙われやすいです。
  • 株主価値の最大化と他のステークホルダーの利益は必ず対立するわけではない点、また常に一致するわけでもない点の両方に注意しましょう。

要点まとめ

  • ステークホルダーは企業に資源を提供し、見返りを受け取る関係者
  • 株主は契約上の支払い後の残余利益を受け取る残余請求者
  • 株主と債権者の間には資産代替や過少投資などの対立が生じ得る
  • ステークホルダーとの協働が中長期的な企業価値の向上につながると考えられている

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。