サンクコスト・機会費用・外部性とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 投資評価に含めるのは、その投資によって新たに増減するキャッシュフロー(増分キャッシュフロー)だけです。
- すでに支出して取り戻せないサンクコスト(埋没費用)は無視し、その資源を他に使えば得られた機会費用は含めます。
- 他の事業への波及効果(外部性)は、プラスもマイナスも含めます。研究開発などの無形資産や金融資産への投資も、同じ現在価値の考え方で評価します。
この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「無形資産・外部性・サンクコスト」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (4) 投資の意思決定 |
| 協会の学習ポイント | 無形資産や金融資産への投資、外部性、サンクコストと機会費用について理解する。 |
サンクコスト・機会費用・外部性とは
投資判断の原則は、「その投資を行う場合と行わない場合で、企業全体のキャッシュフローがどう変わるか」を比べることです。この「差」に当たるものだけを評価に含め、どちらの場合でも変わらないものは含めません。この原則から、サンクコスト、機会費用、外部性の扱いが導かれます。
サンクコスト(埋没費用)
過去にすでに支出し、投資を実行してもしなくても回収できない費用がサンクコストです。たとえば、新製品の事業化を検討するために過去に行った市場調査の費用は、事業化してもしなくても戻ってきません。そのため、今後の投資判断では無視します。「これまでに多額のお金をかけたから続けるべきだ」と考えてしまうのは、判断を誤らせる典型的な落とし穴です。
機会費用
投資のためにすでに持っている資源(遊休地、空いている工場、人材など)を使う場合、「帳簿上の支出がないからコストゼロ」とは考えません。その資源を売却したり他に貸したりすれば得られたはずの収入を、機会費用としてキャッシュフローの流出に含めます。
外部性(波及効果)
新しい投資が既存の事業に影響を与えることがあります。新製品が既存製品の売上を奪う共食い(カニバリゼーション)はマイナスの外部性、新製品が既存製品の販売を後押しする相乗効果はプラスの外部性です。どちらも企業全体のキャッシュフローの変化なので、評価に含めます。一方、本社費の配賦のように、投資をしてもしなくても総額が変わらない費用は含めません。
無形資産と金融資産への投資
研究開発、ブランド、人材育成、ソフトウェアなどへの支出は、会計上は多くが費用として処理されますが、将来のキャッシュフローを生むという点では設備投資と同じ投資です。成果の不確実性が高く見積もりは難しいものの、同じく現在価値で評価します。また、株式や債券などの金融資産への投資は、市場が効率的で価格が公正であれば、支払う価格と受け取るキャッシュフローの現在価値が等しくなり、NPVはゼロになるのが基本です。事業投資のようにプラスのNPVを得るには、市場価格の誤りを見つけるなどの特別な理由が必要です。
整理しておきたいポイント
| 項目 | 具体例 | 投資評価での扱い |
|---|---|---|
| サンクコスト | 過去の市場調査費、すでに支出した開発費 | 含めない |
| 機会費用 | 自社保有の遊休地を使う場合の売却可能額 | 含める(流出) |
| マイナスの外部性 | 既存製品の売上の共食い | 含める(流出) |
| プラスの外部性 | 関連製品の売上増加 | 含める(流入) |
| 配賦される本社費 | 投資の有無で総額が変わらない共通費 | 含めない |
| 支払利息 | 投資資金の借入利息 | 含めない(割引率に反映) |
具体例で確認
新製品の工場建設(投資額1,000)を検討しています。資本コストは10%、期間は4年、新製品から毎年450のキャッシュフローが見込まれます。ほかに次の条件があります。
- 昨年実施した市場調査の費用50(支払済み)
- 工場は自社の遊休地に建てるが、この土地は今売れば税引後で200になる
- 新製品の発売で既存製品のキャッシュフローが毎年30減る
- 市場調査費50はサンクコストなので無視します。
- 土地の売却可能額200は機会費用として、現時点の流出に加えます:1,000 + 200 = 1,200
- 共食いの30を差し引き、毎年のキャッシュフローは 450 − 30 = 420
- 現在価値:420 × {1 − 1.1−4} ÷ 0.1 ≒ 420 × 3.1699 ≒ 1,331.34
- NPV:1,331.34 − 1,200 ≒ 131.34
もし機会費用と共食いを無視すると、NPVは450 × 3.1699 − 1,000 ≒ 426.44と過大になります。逆に市場調査費50を誤って含めると81.34と過小になります。何を含め、何を除くかで結論の数字が大きく変わることがわかります。
試験で問われやすいポイント
- サンクコストは含めない、機会費用は含めるという原則が最もよく問われるポイントです。
- カニバリゼーションなどの外部性はプラス・マイナスとも含める一方、総額が変わらない配賦費用は含めない点に注意しましょう。
- 計算問題では、与えられた条件の中から含めるべき項目を選び出す形がよく見られます。
- 公正な価格の金融資産への投資はNPVがゼロになるという考え方が狙われやすいです。
- 研究開発などの無形資産への支出は、会計上は費用でも、投資として将来キャッシュフローで評価すべきものであることを押さえておきましょう。
要点まとめ
- 投資評価は「実行する場合としない場合の差」である増分キャッシュフローで行う
- サンクコストは無視し、機会費用は流出として含める
- 外部性(共食い・相乗効果)は含め、総額の変わらない配賦費用は含めない
- 無形資産も現在価値で評価し、公正価格の金融資産投資のNPVは基本的にゼロ
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
