ひとことで言うと

  • 減価償却費は現金の支出を伴わない費用ですが、課税所得を減らして税金を少なくする(節税効果)ため、キャッシュフローに影響します。
  • 節税効果の大きさは減価償却費×税率で、償却の合計額が同じでも、早く償却する方法(定率法など)ほど現在価値が大きくなります。
  • 投資評価では、運転資本の増減、残存価値、支払利息の扱いなど、キャッシュフローの見積もりの注意点も押さえる必要があります。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「キャッシュフローと減価償却」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (4) 投資の意思決定
協会の学習ポイント 投資から得られるキャッシュフローと減価償却方法の影響、投資評価上の注意点について理解する。

キャッシュフローと減価償却とは

設備投資を行うと、購入時にまとまった現金が出ていきます。会計上は、この支出を使用する期間にわたって少しずつ費用にしていきます。これが減価償却です。減価償却費は損益計算書では費用ですが、その年に現金が出ていくわけではありません。そのため、投資のキャッシュフローを求めるときは、利益に減価償却費を足し戻します。

減価償却の節税効果(タックス・シールド)

減価償却費そのものは現金を生みませんが、費用として計上されることで課税所得が減り、支払う税金が減ります。この税金の減少分(減価償却費×税率)が、減価償却の節税効果(タックス・シールド)です。つまり、税金がある世界では、減価償却はキャッシュフローを増やす働きをします。

償却方法による違い

定額法でも定率法でも、耐用年数全体で償却する合計額は同じなので、節税効果の合計額も同じです。しかし、定率法のように初期に多く償却する方法では節税効果が早い時期に得られるため、時間価値を考えると現在価値が大きくなり、NPVも高くなります。

投資評価上の注意点

キャッシュフローの見積もりでは、次の点に注意します。第一に、売上の増加に伴う売上債権や在庫などの運転資本の増加は現金の流出として扱い、事業終了時の回収は流入として扱います。第二に、事業終了時に設備を売却できる場合は、税引後の残存価値をキャッシュフローに含めます。第三に、支払利息はキャッシュフローから差し引きません。資金調達のコストは割引率(WACC)に反映されるので、キャッシュフローからも引くと二重計算になるためです。さらに、インフレを考える場合は、名目のキャッシュフローには名目の割引率、実質のキャッシュフローには実質の割引率を使い、両者の扱いをそろえます。

押さえておきたい公式

営業CF = (売上高 − 現金費用 − 減価償却費) × (1 − t) + 減価償却費税引後営業利益に減価償却費を足し戻す形
営業CF = (売上高 − 現金費用) × (1 − t) + 減価償却費 × t同じ値。第2項が減価償却の節税効果
投資のCF = 営業CF − 設備投資 − 運転資本の増加最終年度には運転資本の回収と税引後の残存価値を加える
記号 意味
t 法人税率
現金費用 人件費や原材料費など、現金の支出を伴う費用

具体例で確認

900の設備を購入し、3年間、毎年「売上高-現金費用」が500生まれる投資を考えます。税率30%、資本コスト10%、残存価値ゼロとします。

定額法(毎年300ずつ償却)の場合

  1. 営業CF:500 × (1 − 0.3) + 300 × 0.3 = 350 + 90 = 440(3年間同じ)
  2. 現在価値:440 ÷ 1.1 + 440 ÷ 1.12 + 440 ÷ 1.13 ≒ 1,094.21
  3. NPV:1,094.21 − 900 ≒ 194.21

加速的な償却(450、300、150と償却)の場合

  1. 節税効果:450 × 0.3 = 135、300 × 0.3 = 90、150 × 0.3 = 45(合計270で定額法と同じ)
  2. 営業CF:350 + 135 = 485、350 + 90 = 440、350 + 45 = 395
  3. 現在価値:485 ÷ 1.1 + 440 ÷ 1.12 + 395 ÷ 1.13 ≒ 1,101.31
  4. NPV:1,101.31 − 900 ≒ 201.31

節税効果の合計はどちらも270ですが、早く償却するほうが節税効果を早く受け取れるため、NPVが約7.10高くなります。

試験で問われやすいポイント

  • 減価償却費は非現金費用だが、節税効果(減価償却費×税率)を通じてキャッシュフローを増やすという点が問われやすいです。
  • 営業CFの2通りの計算式を使い分け、同じ値になることを確認できるようにしておきましょう。
  • 償却方法を変えても節税効果の合計は同じだが、早期に償却するほど現在価値・NPVが大きいという方向が狙われやすいです。
  • 支払利息をキャッシュフローから引かない(割引率に反映済み)点は典型的なひっかけです。
  • 運転資本の増加(流出)と最終年度の回収、税引後の残存価値の扱いも計算問題で問われやすいです。

要点まとめ

  • 減価償却費は非現金費用だが、税金を減らすことでキャッシュフローを増やす
  • 節税効果=減価償却費×税率
  • 早く償却するほど節税効果の現在価値が大きく、NPVが高まる
  • 運転資本・残存価値を含め、支払利息は含めない(割引率で考慮)

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。