フリー・キャッシュフローとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- フリー・キャッシュフロー(FCF)とは、事業が生み出した現金から、事業の維持・成長に必要な投資を差し引いた、債権者と株主が自由に受け取れる現金のことです。
- 計算式は税引後営業利益(NOPAT)+ 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本の増加です。
- DCF法では、このFCFをWACCで割り引いて事業価値を求めます。
この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「フリー・キャッシュフロー」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | フリー・キャッシュフローの意義と計算方法について理解する。 |
フリー・キャッシュフローとは
企業の価値は、将来生み出す現金によって決まります。ただし、事業で稼いだ現金のすべてを資金提供者に配れるわけではありません。工場や設備の更新・拡張、売上の増加に伴う在庫や売掛金の増加など、事業を続けるために再投資が必要だからです。こうした必要な投資をすべて済ませたあとに残り、債権者(利息・元本)と株主(配当・自社株買い)に分配できる現金がフリー・キャッシュフローです。
計算の考え方
出発点は営業利益(EBIT)です。まず、借入がないと仮定したときの法人税を差し引いて税引後営業利益(NOPAT)を求めます。次に、減価償却費は費用ですが現金の支出を伴わないため足し戻します。最後に、設備投資と運転資本の増加という現金の出ていく投資を差し引きます。
支払利息を差し引かないのはなぜか
ここで求めるFCFは、債権者と株主の両方に帰属する現金です。支払利息は債権者への分配そのものなので、FCFの計算では差し引きません。負債の節税効果は、割引率であるWACCの負債コストを税引後にすることで反映します。FCFで利息の節税分まで数えると、二重計算になってしまいます。
FCFとFCFEの違い
株主だけに帰属する現金を株主に帰属するフリー・キャッシュフロー(FCFE)といい、FCFから税引後支払利息を引き、負債の純増額を加えて求めます。FCFはWACCで、FCFEは株主資本コストで割り引くというように、キャッシュフローと割引率を対応させることが大切です。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| EBIT | 営業利益(利払前・税引前利益) |
| t | 法人税率 |
| 設備投資 | 有形・無形固定資産への投資(資本的支出) |
| 運転資本の増加 | 当期末の運転資本 − 前期末の運転資本 |
具体例で確認
ある企業の今期の数値が次のとおりだとします(単位:百万円、税率30%)。営業利益1,000、減価償却費200、設備投資300、運転資本は前期末400から今期末450に増加、支払利息40。
- NOPAT:1,000 × (1 − 0.3) = 700
- 減価償却費を足し戻す:700 + 200 = 900
- 設備投資を差し引く:900 − 300 = 600
- 運転資本の増加(450 − 400 = 50)を差し引く:600 − 50 = 550
支払利息40は差し引いていない点に注目してください。この550が債権者と株主に分配できる現金です。売上が伸びて運転資本が大きく増えると、利益が出ていてもFCFはマイナスになることがあります。
試験で問われやすいポイント
- FCF=NOPAT+減価償却費-設備投資-運転資本の増加の計算手順が基本です。各項目の符号(足すか引くか)が問われやすいです。
- FCFの計算では支払利息を差し引かないこと、税金は営業利益に対して計算することがひっかけになりやすいです。
- 運転資本は残高ではなく増加額を差し引く点、仕入債務の増加は運転資本を減らしFCFを増やす点を確認しましょう。
- FCFはWACC、FCFEは株主資本コストで割り引くというキャッシュフローと割引率の対応が問われやすいです。
- 減価償却費は現金支出ではないので足し戻すが、節税効果を通じてFCFに影響するという点も押さえておきましょう。
要点まとめ
- FCFは必要な投資を済ませたあとに債権者と株主へ分配できる現金
- FCF=EBIT×(1-t)+減価償却費-設備投資-運転資本の増加
- 支払利息は差し引かず、節税効果はWACCの側で反映する
- 株主に帰属するFCFEと区別し、割引率を対応させる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
