ひとことで言うと

  • GDPは、労働市場で決まる雇用量生産関数に当てはめることで決まります。
  • 企業は労働の限界生産力=実質賃金(W/P)となるまで労働者を雇うため、実質賃金が高すぎると雇用とGDPが減ります。
  • 名目賃金が伸縮的なら完全雇用GDPが実現しますが、名目賃金が下がりにくいと非自発的失業が生じ、GDPは完全雇用水準を下回ります。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「労働市場と均衡GDP」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (2) 国民所得と金利や物価との関係
協会の学習ポイント 労働市場の状況と均衡GDPの関係について説明できる。

労働市場と均衡GDPとは

経済全体の生産量(GDP)は、どれだけの労働者が働き、どれだけの資本設備が使われるかで決まります。短期には資本設備の量は一定と考えられるので、GDPを左右するのは主に雇用量です。この関係を表したのが生産関数 Y=F(N, K) で、雇用量Nが増えるほどGDPは増えますが、1人追加したときの増加分(労働の限界生産力)はしだいに小さくなります(収穫逓減)。

労働需要:企業は何人雇うか

利潤を最大化する企業は、労働者を1人追加して得られる生産の増加分(限界生産力)が、その人に払う実質賃金に等しくなるまで雇用します。実質賃金W/Pが高いほど雇う人数は少なくなるので、労働需要曲線は実質賃金に対して右下がりになります。

労働供給と労働市場の均衡

家計は実質賃金が高いほど多く働こうとするので、労働供給曲線は右上がりです。名目賃金と物価が自由に動くなら(古典派の考え方)、実質賃金は労働需要と労働供給が一致する水準に調整され、働きたい人はその賃金で全員雇われる完全雇用が実現します。このときの雇用量を生産関数に入れたものが完全雇用GDPで、物価水準に左右されないため長期AS曲線は垂直になります。

名目賃金が硬直的な場合

一方、ケインズ派は名目賃金が下がりにくい(下方硬直性)ことを重視します。名目賃金が固定されたまま物価が下がると実質賃金が上がり、企業は雇用を減らします。その賃金で働きたいのに雇われない非自発的失業が生じ、GDPは完全雇用GDPを下回ります。この場合、総需要を増やして物価を上げたり生産を増やしたりする政策が、雇用とGDPを回復させる手段になります。

押さえておきたい公式

Y = F(N, K)生産関数:資本Kが一定の短期には、GDP(Y)は雇用量Nで決まる
MPN = W ÷ P労働需要の条件:労働の限界生産力 = 実質賃金
記号 意味
Y 実質GDP(生産量)
N 雇用量(労働投入量)
K 資本ストック(短期には一定)
MPN 労働の限界生産力
W ÷ P 実質賃金(名目賃金W÷物価P)

具体例で確認

生産関数が Y = 20√N のとき、労働の限界生産力は 10 ÷ √N です。働きたい人(労働供給)は100人とします。

  1. 実質賃金が1のとき:10 ÷ √N = 1 より √N = 10、N = 100人。全員が雇われ、GDPは 20 × 10 = 200(完全雇用GDP)。
  2. 名目賃金が固定されたまま物価が20%下がり、実質賃金が 1 ÷ 0.8 = 1.25 に上がったとき:10 ÷ √N = 1.25 より √N = 8、N = 64人。GDPは 20 × 8 = 160
  3. 働きたい100人のうち36人が雇われない非自発的失業となり、GDPは完全雇用水準を40下回ります。

名目賃金が物価と同じだけ下がれば実質賃金は1に戻り、雇用100人・GDP200が回復します。賃金が伸縮的かどうかで結論が変わる点が、この論点の核心です。

試験で問われやすいポイント

  • 企業の労働需要の条件「労働の限界生産力=実質賃金」が問われやすいです。名目賃金ではなく実質賃金である点に注意しましょう。
  • 実質賃金が上がると雇用が減りGDPが減るという方向を確認しておきましょう。
  • 賃金が伸縮的なら完全雇用が実現し、GDPは物価に左右されない(長期AS垂直)という古典派の結論が狙われます。
  • 名目賃金の下方硬直性非自発的失業を生むというケインズ派の説明との対比が定番です。
  • 生産関数から限界生産力を求めて雇用量・GDPを計算する問題にも備えましょう。

要点まとめ

  • GDPは雇用量を生産関数Y=F(N, K)に当てはめて決まる
  • 企業は労働の限界生産力=実質賃金となるまで雇用する
  • 賃金が伸縮的なら完全雇用GDPが実現する
  • 名目賃金が下方硬直的だと非自発的失業が生じ、GDPは完全雇用水準を下回る

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。