ひとことで言うと

  • 簿価は貸借対照表に記録された純資産(株主の持ち分)の価値、時価は株式市場でついている株価にもとづく価値です。
  • 株式のリターンは「配当収益(インカムゲイン)+値上がり益(キャピタルゲイン)」で測ります。
  • リスクはリターンが予想からどれだけぶれるかのことで、一般に標準偏差で表します。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「簿価と時価、株式リターンとリスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/株式分析
大分類 (1) 資本市場の仕組みと株式投資
協会の学習ポイント 株式の簿価と時価、株式リターン(配当収益と値上がり益)とそのリスクについて理解する。

株式の簿価と時価、リターンとリスクとは

簿価と時価の違い

株式の簿価とは、会計上の株主の持ち分、つまり貸借対照表の純資産(自己資本)のことです。1株あたりに直したものをBPS(1株当たり純資産)といいます。簿価は過去の取引の積み重ねにもとづく金額で、会社がこれから稼ぐ力は基本的に反映されていません。

一方、時価は株式市場で実際についている株価です。株価に発行済株式数を掛けたものを時価総額といい、市場が評価する株主の持ち分の価値を表します。時価には、投資家が予想する将来の利益や成長性、リスクが織り込まれています。

時価と簿価の比率がPBR(株価純資産倍率)です。PBRが1倍を大きく上回る企業は、市場が「帳簿上の価値以上に稼ぐ力がある」と評価していると解釈でき、1倍を下回る企業は、市場の評価が帳簿上の価値に届いていない状態です。

株式リターンの2つの源泉

株式に投資して得られる収益率(リターン)は、保有期間中に受け取る配当と、売却時点までの株価の変化の2つから生まれます。前者をインカムゲイン(配当収益)、後者をキャピタルゲイン(値上がり益。値下がりならキャピタルロス)と呼びます。

リスクとは「ぶれ」のこと

ファイナンスでいうリスクは「損をする可能性」だけでなく、実際のリターンが期待リターン(平均)から上下にぶれる度合いを指します。ぶれの大きさは、分散やその平方根である標準偏差で測ります。株式は配当も株価も将来が不確実なため、債券などに比べてリターンのぶれが大きい資産です。

押さえておきたい公式

BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数1株当たりの簿価(自己株式を除いた株式数で計算するのが一般的)
時価総額 = 株価 × 発行済株式数市場がつけた株主持ち分の価値
r = (D1 + P1 − P0)÷ P0= 配当利回り(D1 ÷ P0)+ 値上がり率((P1 − P0)÷ P0
σ = √Σ pi(ri − E(r))2標準偏差:各シナリオのリターンと期待リターンの差の2乗を確率で加重平均し、平方根をとる
記号 意味
P0、P1 期首の株価、期末の株価
D1 期中に受け取る配当
pi、ri シナリオiの生起確率とそのときのリターン
E(r) 期待リターン(Σ pi ri

具体例で確認

例1:簿価と時価

純資産が500億円、発行済株式数が1億株の会社のBPSは、500億円÷1億株=500円です。株価が1,000円なら、時価総額は1,000円×1億株=1,000億円、PBRは1,000÷500=2倍になります。

例2:リターンの分解

株価1,000円で買った株式が、1年間で30円の配当を支払い、1年後に1,070円になったとします。

  • リターン=(30+1,070−1,000)÷1,000=10%
  • 内訳は、配当利回り30÷1,000=3%、値上がり率70÷1,000=7%

例3:期待リターンとリスク

来年のリターンが、好況(確率30%)なら25%、普通(40%)なら10%、不況(30%)なら−10%と予想されるとします。

  • 期待リターン=0.3×25+0.4×10+0.3×(−10)=8.5%
  • 分散=0.3×16.52+0.4×1.52+0.3×(−18.5)2=81.675+0.9+102.675=185.25
  • 標準偏差=√185.25≒13.6%

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「株式の簿価と時価、株式リターン(配当収益・値上がり益)とそのリスクを理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 簿価(BPS・純資産)と時価(株価・時価総額)の区別。PBR=株価÷BPSの計算とあわせて問われやすいです。
  • リターン=配当利回り+値上がり率の分解。配当を入れ忘れる、分母を期末株価にするといったミスが狙われやすいです。
  • リスクは「損失の可能性」ではなく「期待値からのぶれ」。上振れもリスクに含まれる点を混同しやすいです。
  • 分散は偏差の2乗の加重平均、標準偏差はその平方根。単位(%)がそろうのは標準偏差のほうです。
  • PBRが1倍未満の意味(市場評価が帳簿上の純資産を下回る)を解釈させる問題にも注意しましょう。

要点まとめ

  • 簿価は帳簿上の純資産、時価は市場の株価。両者の比率がPBR。
  • 株式リターン=配当収益+値上がり益(配当利回り+値上がり率)。
  • リスクはリターンのぶれで、標準偏差で測る。
  • 株式は債券に比べてリターンのぶれが大きい資産。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。