発行市場と流通市場の関連とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・株式分析
ひとことで言うと
- 投資家が発行市場で安心して新株を買えるのは、あとで流通市場でいつでも売れる(換金できる)からです。
- 新株の発行価格は、流通市場の株価を基準にして決められます。
- 2つの市場は、流動性と価格の両面で支え合う「車の両輪」の関係にあります。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「発行市場と流通市場の関連」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (1) 資本市場の仕組みと株式投資 |
| 協会の学習ポイント | 株式発行市場と株式流通市場における取引や相互の関連性を理解する。 |
発行市場と流通市場の関連とは
発行市場(企業が新株を発行して資金を集める市場)と流通市場(発行済みの株式を投資家どうしが売買する市場)は、別々に動いているわけではありません。どちらか一方だけでは株式市場はうまく機能せず、互いに支え合っています。
流通市場が発行市場を支える:流動性
株式は、会社に出資金を返してもらうことが原則としてできない資産です。もし買った株式を売る場がなければ、投資家は資金を長期間固定されてしまい、新株の購入をためらうでしょう。流通市場があり、いつでも適正な価格で売却できる(流動性がある)からこそ、投資家は発行市場で新株を買うことができます。流通市場が活発であるほど、企業は発行市場で資金を集めやすくなります。
流通市場が発行価格を決める:価格形成
すでに上場している企業が公募増資を行う場合、発行価格は流通市場の株価を基準に、売れ残りを防ぐため若干のディスカウントをして決めるのが一般的です。流通市場の株価が高いほど、少ない株数で多くの資金を集められるため、株価は企業の資金調達コストに直接影響します。
新規株式公開(IPO)の場合は、まだ流通市場の株価がないため、主幹事の証券会社が同業他社の株価なども参考に仮条件を示し、投資家の需要を集めて公募価格を決めます(ブックビルディング方式)。上場後、流通市場で最初につく価格が初値です。
発行市場の取引が流通市場に与える影響
反対に、発行市場での取引も流通市場の株価に影響します。大規模な増資で株式数が増えると、1株あたりの利益などが薄まる希薄化が起こり、需給の悪化もあって既存株式の株価が下がることがあります。また、企業が流通市場から自社の株式を買い戻す自己株式取得は、増資とは逆に株式数を減らす取引です。
整理しておきたいポイント
| 関連の方向 | 内容 | キーワード |
|---|---|---|
| 流通市場 → 発行市場 | いつでも売れる安心感が、新株への投資を促す | 流動性、換金性 |
| 流通市場 → 発行市場 | 流通市場の株価が発行価格の基準になる | 時価発行、ディスカウント、資金調達コスト |
| 発行市場 → 流通市場 | 増資で株式数が増え、1株あたりの価値や需給に影響する | 希薄化、需給悪化 |
| 発行市場 → 流通市場 | IPOで新しい銘柄が流通市場に加わる | ブックビルディング、公募価格、初値 |
具体例で確認
発行済株式数1億株、株価1,000円(時価総額1,000億円)のW社が、流通市場の株価から5%ディスカウントした950円で2,000万株の公募増資を行うとします。
- 調達額:950円×2,000万株=190億円がW社に入ります(発行市場の取引)。
- 増資後の理論的な価値:増資前の時価総額1,000億円に調達資金190億円を加えた1,190億円を、増資後の株式数1.2億株で割ると、1株あたり約991.7円です。
- 既存株主への影響:ディスカウント発行の分だけ、1株あたりの価値が約0.8%薄まります。調達資金の使い道が収益を生まないと判断されれば、流通市場の株価はさらに下がる可能性もあります。
この例は、調達した資金が新たな価値を生まないと仮定した単純化したものですが、発行価格が流通市場の株価にもとづいて決まり、その結果が再び流通市場の株価に跳ね返るという、両市場のつながりがよくわかります。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「株式発行市場と流通市場における取引と相互の関連性」)。
試験で問われやすいポイント
- 流通市場の流動性(換金性)が、発行市場での資金調達を可能にしているという関係が問われやすいです。
- 上場企業の増資では、流通市場の株価を基準に発行価格が決まる点。株価が高いほど資金調達に有利になるという方向性に注意しましょう。
- IPOの公募価格の決め方(ブックビルディング方式)と、上場後に流通市場でつく初値の区別は混同しやすいです。
- 増資による希薄化が既存株主に与える影響(1株あたり利益の低下、需給の悪化)が狙われやすい論点です。
- 「流通市場の売買で企業に資金が入る」という記述は誤り。影響はあくまで間接的である点を押さえましょう。
要点まとめ
- 流通市場の流動性があるから、投資家は発行市場で新株を買える。
- 発行価格は流通市場の株価を基準に決まり、株価は資金調達コストに影響する。
- IPOではブックビルディング方式で公募価格を決める。
- 増資は希薄化を通じて流通市場の株価に影響しうる。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
