ひとことで言うと

  • IFRS(国際財務報告基準)は国際会計基準審議会(IASB)が定める基準で、細かな数値基準を少なくし、判断の余地を認める原則主義が特徴です。
  • 日本基準とIFRSは収れん(コンバージェンス)が進んでいますが、のれんの償却OCIのリサイクリング経常利益・特別損益の区分などに違いが残っています。
  • 日本の上場会社は、日本基準のほか、一定の要件のもとでIFRSなどを任意に適用できます。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「日本基準とIFRS」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (1) 証券アナリストと財務分析
協会の学習ポイント 日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する。

日本基準とIFRSとは

日本の上場会社が連結財務諸表を作るときに使える会計基準には、日本基準、米国基準、IFRS(指定国際会計基準)、修正国際基準(JMIS)があります。多くの会社は日本基準を使っていますが、海外投資家を意識する大企業を中心に、IFRSを任意適用する会社も増えています。会計基準が違えば同じ取引でも数字が変わるため、財務分析では基準の違いを理解しておくことが大切です。

考え方の違い:原則主義と細則主義

IFRSは、基本的な原則を示し、個々の状況への当てはめは企業の判断に委ねる原則主義をとっています。そのため、会計方針や判断に関する注記が多くなる傾向があります。日本基準は、数値基準や具体的な取扱いを比較的細かく定める傾向があり、細則主義的といわれます。また、IFRSは資産・負債の評価を重視する考え方(資産負債アプローチ)が強く、日本基準は当期純利益を重視する姿勢を明確にしています。

主な相違点

のれん:日本基準では20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却し、さらに減損の兆候があれば減損処理を行います。IFRSでは償却せず、毎年の減損テストで価値の下落を確かめます。

OCIのリサイクリング:日本基準では、その他の包括利益(OCI)に計上した項目は、売却時などに当期純利益へ振り替えます(リサイクリング)。IFRSでは、OCIを通じて公正価値で測定することを選択した株式などの評価差額はリサイクリングしません。

損益計算書の区分:日本基準には経常利益や特別利益・特別損失の区分がありますが、IFRSにはこれらの区分がありません。そのため、日本基準の「営業利益」とIFRS適用会社の営業利益の範囲は一致しないことがあります。

開発費:日本基準では研究開発費は発生時に費用処理しますが、IFRSでは一定の要件を満たす開発段階の支出を無形資産として計上します。

整理しておきたいポイント

項目 日本基準 IFRS
基本的な考え方 細則主義的、当期純利益を重視 原則主義、資産負債アプローチ
のれん 20年以内で規則的に償却+減損 償却しない(毎年減損テスト)
OCIのリサイクリング すべてリサイクリング FVOCIを選択した株式などはリサイクリングしない
経常利益・特別損益 あり なし
開発費 発生時に費用処理 要件を満たせば資産計上
減損損失の戻入れ 行わない のれん以外は一定の場合に戻入れ

具体例で確認

G社は他社を買収し、のれんが100億円発生しました。日本基準で10年償却とする場合と、IFRSを適用する場合を比べます(減損は発生しないものとします)。

  • 日本基準:毎年100億円 ÷ 10年 = 10億円ののれん償却費が販売費及び一般管理費に計上され、営業利益が毎年10億円押し下げられます。
  • IFRS:のれんは償却しないため、減損がない限り費用は0円です。

買収を積極的に行う企業では、この違いが営業利益や当期純利益に大きく影響します。アナリストが日本基準の会社とIFRSの会社を比べるときは、のれん償却費を足し戻した利益で比較するなどの工夫が必要です。一方IFRSでは、のれんが減らないため、業績が悪化したときに一度に大きな減損損失が出る可能性がある点にも注意しましょう。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)の特徴と相違点を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • のれんの取扱い(日本基準:規則的償却+減損、IFRS:非償却+毎年の減損テスト)。
  • OCIのリサイクリングの有無(IFRSでFVOCIを選択した株式は振り替えない)。
  • IFRSには経常利益や特別損益の区分がないこと。
  • 原則主義(IFRS)と細則主義的(日本基準)という考え方の違い。
  • 開発費や減損の戻入れの取扱いの違いと、それが利益・資産に与える影響の方向。

要点まとめ

  • 日本の上場会社は日本基準・米国基準・IFRS・JMISから連結の基準を選べる。
  • IFRSは原則主義、日本基準は細則主義的で当期純利益を重視する。
  • のれんは日本基準で償却、IFRSで非償却。
  • IFRSには経常利益・特別損益の区分がなく、リサイクリングの扱いも異なる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。