ひとことで言うと

  • 新株予約権は、あらかじめ決めた価格で会社から株式の交付を受けられる権利です。発行した会社は受け取った金額を純資産の部の「新株予約権」に計上します。
  • 権利が行使されたら、新株予約権の帳簿価額と払込金額の合計を資本金・資本準備金に振り替えます。
  • 行使されずに失効したら、新株予約権戻入益として利益に振り替えます。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「新株予約権の会計処理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (3) 企業会計の仕組み
協会の学習ポイント 新株予約権の会計処理の要点を理解する。

新株予約権の会計処理とは

新株予約権は、将来行使されれば株主資本になりますが、行使されるかどうかは発行時点では分かりません。返済義務がないので負債ではなく、まだ株主の払い込みでもないため株主資本でもありません。そこで日本基準では、株主資本以外の純資産の項目として「新株予約権」を独立に表示します。

発行・行使・失効の流れ

  • 発行時:払い込みを受けた金額を新株予約権として純資産に計上します。
  • 権利行使時(新株を発行する場合):新株予約権の帳簿価額と、行使に伴って払い込まれた金額の合計を払込金額とし、資本金(2分の1を超えない額は資本準備金にできます)に振り替えます。自己株式を交付する場合は、自己株式の帳簿価額との差額を自己株式処分差額として扱います。
  • 失効時:権利が行使されないまま期限が来た分は、株主からの払い込みにならなかったため、新株予約権戻入益として利益(通常は特別利益)に計上します。

ストック・オプション

従業員などに報酬として付与するストック・オプションも新株予約権の一種です。付与日時点の公正な評価額のうち、各期に対応する金額を権利確定期間にわたって株式報酬費用として計上し、同額を純資産の新株予約権に計上します。現金の支出はありませんが、労働サービスの対価として費用が生じる点がポイントです。

分析上の注意

新株予約権が行使されると発行済株式数が増えるため、既存株主の持分が薄まります(希薄化)。そのため、潜在株式として希薄化後EPSの計算に反映されます。

整理しておきたいポイント

場面 発行会社の処理 損益への影響
発行 純資産の部に新株予約権を計上 なし
行使(新株発行) 新株予約権+払込金額を資本金・資本準備金へ なし
失効 新株予約権を戻入益に振り替え 利益が増える
ストック・オプション付与 株式報酬費用を計上し、新株予約権を計上 費用が増える

具体例で確認

E社は新株予約権100個を1個10万円で発行し、1,000万円を受け取りました。1個を行使すると100万円の払い込みで株式が交付されます。その後、80個が行使され、残り20個は行使されずに失効しました。

  • 発行時:新株予約権 1,000万円を純資産に計上
  • 行使時:新株予約権 800万円 + 払込金額 8,000万円 = 8,800万円が払込資本となり、最低でも半分の4,400万円を資本金、残りを資本準備金にできます
  • 失効時:新株予約権 200万円を新株予約権戻入益として利益に計上

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「資本と新株予約権の会計処理を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 新株予約権は負債でも株主資本でもなく、純資産の部に独立表示される点。
  • 行使時は「新株予約権の帳簿価額+行使時の払込金額」が資本金等になる点。
  • 失効時は資本ではなく利益(新株予約権戻入益)に振り替える点。
  • ストック・オプションは権利確定期間にわたり費用計上される点。
  • 行使による希薄化と、希薄化後EPSとの関係。

要点まとめ

  • 発行時は純資産の部に新株予約権として計上する。
  • 行使されれば資本金・資本準備金へ、失効すれば戻入益へ振り替える。
  • ストック・オプションは株式報酬費用を計上する。
  • 行使による希薄化を意識して分析する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。