ひとことで言うと

  • その他有価証券は時価で評価しますが、評価差額は損益計算書を通さず、純資産に直接計上します(純資産直入)。
  • 評価差額には税効果会計を適用し、税金相当額を繰延税金負債(資産)とし、残りをその他有価証券評価差額金とします。
  • 連結ではその他の包括利益として包括利益に含まれ、売却時には純利益へ組み替えられます。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「評価差額の純資産直入」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (4) 収益の測定
協会の学習ポイント その他有価証券評価差額金の純資産直入を理解する。

その他有価証券評価差額金とは

持ち合い株式のようなその他有価証券は、売買目的ほど短期に売るわけではない一方、事業上の制約などで売却できないとも限りません。そこで貸借対照表では時価で評価して財政状態を示しつつ、まだ売却していない評価差額は当期の業績(当期純利益)には含めず、純資産の部に直接計上します。これが純資産直入です。

全部純資産直入法と部分純資産直入法

原則は、評価差益・評価差損の両方を純資産に計上する全部純資産直入法です。継続適用を条件に、評価差益は純資産に、評価差損は当期の損失として損益計算書に計上する部分純資産直入法も認められています。

税効果と表示

評価差額は税務上の課税所得には含まれないため、会計と税務に一時差異が生じます。評価差益の場合は、税率をかけた額を繰延税金負債とし、残額を純資産の評価・換算差額等(連結ではその他の包括利益累計額)の区分に「その他有価証券評価差額金」として表示します。このとき法人税等調整額は使わず、損益には影響しません。

洗替えと組替調整

評価差額は毎期末に計上し、翌期首に取得原価に戻す洗替方式で処理します。売却したときには、取得原価と売却価額の差額が売却損益として当期純利益に計上されます。連結の包括利益計算書では、過去にその他の包括利益として計上していた部分を取り除く組替調整(リサイクリング)を行い、二重計上を防ぎます。

押さえておきたい公式

評価差額 = 期末時価 − 取得原価
その他有価証券評価差額金 = 評価差額 × (1 − 実効税率)評価差額 × 実効税率 は繰延税金負債(評価差損なら繰延税金資産)

具体例で確認

L社は取得原価1,000のその他有価証券を保有しており、期末の時価は1,200でした。実効税率は30%とします(全部純資産直入法)。

  • 評価差額:1,200 − 1,000 = 200
  • 繰延税金負債:200 × 30% = 60
  • その他有価証券評価差額金(純資産):200 − 60 = 140
  • 貸借対照表の有価証券は1,200。当期純利益への影響はゼロです。

翌期にこの有価証券を1,250で売却すると、売却益は 1,250 − 1,000 = 250 が当期の損益に計上されます(洗替方式のため、期首に帳簿価額は1,000に戻っています)。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「有価証券の評価基準とその他有価証券評価差額金を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • その他有価証券の評価差額は、原則として当期純利益ではなく純資産に計上される点。
  • 税効果を考慮し、評価差額 ×(1 − 税率)が評価差額金になる計算。
  • 繰延税金負債の相手勘定は法人税等調整額ではなく評価差額金である点。
  • 部分純資産直入法では評価差損だけが損益に計上される点。
  • 包括利益には含まれ、売却時に組替調整が行われる点。

要点まとめ

  • その他有価証券は時価評価し、評価差額は純資産に直入する。
  • 全部純資産直入法が原則、部分純資産直入法も容認。
  • 税効果を適用し、税引後の額を評価差額金とする。
  • 連結ではその他の包括利益となり、売却時に組替調整する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。