ひとことで言うと

  • 有形固定資産の取得原価は、購入代価に、使える状態にするまでの付随費用を加えた額が基本です。
  • 引取運賃・据付費・試運転費などは取得原価に含め、値引きや割戻しは差し引きます。
  • 自家建設・現物出資・交換・贈与など、取得の形態ごとに取得原価の決め方が異なります。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「有形固定資産の取得原価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (5) 費用の測定
協会の学習ポイント 有形固定資産の取得原価を理解する。

有形固定資産の取得原価とは

有形固定資産は、建物・機械装置・車両運搬具・土地など、企業が1年を超えて営業に使う形のある資産です。取得したときは取得原価で貸借対照表に計上し、土地以外は減価償却を通じて使用期間にわたり費用へ配分します。取得原価がいくらになるかは、将来の減価償却費、つまり各期の利益に直接影響します。

購入した場合

購入の場合の取得原価は、購入代価 + 付随費用です。付随費用とは、資産を使える状態にするまでにかかった費用で、引取運賃、購入手数料、関税、据付費、試運転費、登記・登録費用などが含まれます。一方、値引きや割戻しを受けた場合は購入代価から差し引きます。なお、将来その資産を除去する法的な義務がある場合は、資産除去債務に対応する除去費用も取得原価に加えます。

購入以外の取得形態

自社で建設した場合は、適正な原価計算に基づいた製造原価を取得原価とします。借入金の利息は原則として費用ですが、自家建設の資産について稼働前の期間に対応する利息は、一定の条件のもとで取得原価に含めることができます。株式を発行して資産を受け入れる現物出資、他の資産との交換、無償で受け取る贈与などの場合は、下の表のように考えます。

取得後の支出

取得後の修理などの支出は、資産の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりするもの(資本的支出)は取得原価に加算し、現状を維持するためのもの(収益的支出)はその期の修繕費として費用処理します。どちらに分類するかで、当期の利益が大きく変わる点に注意が必要です。

整理しておきたいポイント

取得形態 取得原価の考え方
購入 購入代価 − 値引き・割戻し + 付随費用
自家建設 適正な原価計算基準に従って計算した製造原価
現物出資 交付した株式の発行価額(公正な評価額)
交換(同種資産) 譲り渡した自己資産の適正な帳簿価額
贈与 時価などを基準とした公正な評価額

具体例で確認

機械を購入し、次の支出があったとします。

  • 購入代価 1,000万円(うち50万円の値引きを受けた)
  • 引取運賃 20万円、据付費 30万円、試運転費 10万円
  • 稼働後の定期点検費用 5万円

取得原価は、1,000 − 50 + 20 + 30 + 10 = 1,010万円です。稼働後の定期点検費用5万円は、使える状態にするための支出ではなく維持のための支出なので、取得原価に含めず当期の費用とします。この機械を耐用年数5年・残存価額ゼロの定額法で償却すると、毎期の減価償却費は1,010万円 ÷ 5 = 202万円になります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「有形固定資産・無形資産の取得原価を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 付随費用(引取運賃・据付費・試運転費など)は取得原価に含め、値引き・割戻しは控除すること。
  • 取得後の支出の区分:資本的支出は資産に加算、収益的支出は費用処理。区分によって利益と資産額が変わる。
  • 現物出資・交換・贈与など、取得形態ごとの取得原価の決め方。
  • 取得原価の大小が、その後の減価償却費と各期の利益に影響する流れ。

要点まとめ

  • 購入の場合は「購入代価 − 値引き等 + 付随費用」が取得原価。
  • 自家建設は製造原価、現物出資・贈与は公正な評価額、交換は譲渡資産の帳簿価額が基本。
  • 取得後の支出は資本的支出と収益的支出に分けて処理する。
  • 取得原価は減価償却を通じて将来の費用になる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。