事業活動別のROA分析とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- ROAは、資産を本業に使う営業資産と余剰資金などの金融資産に分け、それぞれの利益率に分解して分析できます。
- 全体のROAは、営業資産利益率と金融資産利益率を、それぞれの資産構成比で加重平均したものになります。
- 分解することで、ROAの変化が「本業の収益力」によるのか「資産の持ち方」によるのかを見分けられます。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「事業活動別のROA分析」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (10) 財務分析の基礎 |
| 協会の学習ポイント | ROAを事業活動別に分析して解釈できる。 |
事業活動別のROA分析とは
ROA(総資産事業利益率)は、事業利益(営業利益+受取利息・配当金などの金融収益)を総資産で割った指標です。ただし企業の資産には、工場・店舗・在庫・売掛金のように本業(営業活動)で使う資産と、現預金・有価証券・投資有価証券のように金融活動で保有する資産が混在しています。両者は稼ぐ力が大きく異なるため、一緒にしたままでは企業の収益力を正しく評価しにくくなります。
そこで、総資産を営業資産と金融資産に分け、事業利益も営業利益と金融収益に分けて、それぞれの利益率を計算します。営業資産に対する営業利益の割合が営業資産利益率、金融資産に対する金融収益の割合が金融資産利益率です。
加重平均としてのROA
全体のROAは、営業資産利益率と金融資産利益率を、総資産に占める各資産の割合(構成比)で加重平均した値に一致します。一般に、本業の資産は金融資産よりも高いリターンを生むことが期待されます。そのため、手元資金や投資有価証券を多く抱える企業は、本業の収益力が高くても全体のROAが低く見えることがあります。
分析で何が分かるか
たとえばROAが低下したとき、分解してみると「営業資産利益率そのものが下がった(本業の収益力の低下)」のか、「金融資産の割合が増えた(資金を寝かせている)」のかが分かります。前者なら事業の競争力や採算を、後者なら資金の使い道(投資・株主還元など)を検討する、というように、打ち手の方向が変わってきます。営業資産利益率はさらに、売上高営業利益率 × 営業資産回転率に分解できます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
総資産がともに1,000のA社とB社を比べます(単位:億円)。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 営業資産(営業利益) | 800(80) | 600(60) |
| 営業資産利益率 | 10% | 10% |
| 金融資産(金融収益) | 200(4) | 400(8) |
| 金融資産利益率 | 2% | 2% |
| ROA | 84 ÷ 1,000 = 8.4% | 68 ÷ 1,000 = 6.8% |
A社のROAは 0.8 × 10% + 0.2 × 2% = 8.4%、B社は 0.6 × 10% + 0.4 × 2% = 6.8% です。両社の本業の収益力(営業資産利益率10%)は同じですが、B社は利回りの低い金融資産を多く持っているため、全体のROAが低くなっています。ROAの数字だけを見て「B社は本業が弱い」と判断するのは誤りだと分かります。
試験で問われやすいポイント
- ROA=営業資産の構成比×営業資産利益率+金融資産の構成比×金融資産利益率という加重平均の関係と、その計算。
- 分子と分母の対応:営業利益は営業資産に、金融収益(受取利息・配当金など)は金融資産に対応させます。
- 金融資産の比率が高いとROAが低く出やすい、など結果の解釈を問う設問に注意しましょう。
- 営業資産利益率を売上高営業利益率と営業資産回転率に分解する流れも確認しておきましょう。
要点まとめ
- 総資産を営業資産と金融資産に、事業利益を営業利益と金融収益に分けて分析する。
- 全体のROAは、2つの利益率を資産構成比で加重平均したもの。
- 本業の収益力と資産構成の影響を区別して評価できる。
- 営業資産利益率は売上高営業利益率×営業資産回転率にさらに分解できる。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
