デュポン・システムとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- デュポン・システムは、ROEを売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジの3つに分解して分析する方法です。
- 「もうけの厚さ」「資産の使い方の効率」「負債の活用度」のどれがROEを動かしているかが分かります。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「デュポン・システム」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (10) 財務分析の基礎 |
| 協会の学習ポイント | 資本利益率についてデュポン・システムの各要素を計算し、その結果を分析できる。 |
デュポン・システムとは
デュポン・システム(デュポン分析)は、米国の化学会社デュポンが経営管理に用いたことで知られる、資本利益率を複数の比率の掛け算に分解する手法です。ROEやROAの水準だけを見ても、なぜ高いのか・低いのかは分かりません。分解することで、改善すべきポイントや企業ごとのビジネスモデルの違いが見えてきます。
ROEの3分解
ROE(当期純利益÷自己資本)は、分子と分母に売上高と総資産をはさみ込むことで、次の3つの比率の積に分解できます。
- 売上高純利益率(当期純利益÷売上高):売上1円当たりどれだけ利益が残るか。収益性(採算)を示します。
- 総資産回転率(売上高÷総資産):資産を何回転させて売上を生んだか。効率性を示します。
- 財務レバレッジ(総資産÷自己資本):自己資本の何倍の資産を使っているか。負債の活用度(安全性の裏返し)を示します。
このうち、売上高純利益率×総資産回転率は総資産純利益率(ROA)に当たります。つまり、ROE = ROA × 財務レバレッジ という関係にもなっています。
分析での使い方
同じROEでも、高級品メーカーのように利益率が高く回転率が低い企業と、小売業のように利益率は薄いが回転率が高い企業とでは、稼ぎ方がまったく違います。また、財務レバレッジを高めればROEは上がりますが、負債が増えて財務リスクも高まります。そのため、ROEの上昇が利益率や回転率の改善によるものか、レバレッジの上昇によるものかを見分けることが重要です。
押さえておきたい公式
| 売上高純利益率 | 収益性(採算の良さ) |
|---|---|
| 総資産回転率 | 効率性(資産の活用度) |
| 財務レバレッジ | 負債の利用度(自己資本比率の逆数) |
具体例で確認
A社とB社の数値(単位:億円)でROEを分解します。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,000 | 1,000 |
| 当期純利益 | 100 | 100 |
| 総資産 | 1,600 | 2,000 |
| 自己資本 | 800 | 1,600 |
| 売上高純利益率 | 5.0% | 10.0% |
| 総資産回転率 | 1.25回 | 0.5回 |
| 財務レバレッジ | 2.0倍 | 1.25倍 |
| ROE | 12.5% | 6.25% |
A社は5.0% × 1.25 × 2.0 = 12.5%(100 ÷ 800 と一致)、B社は10.0% × 0.5 × 1.25 = 6.25%(100 ÷ 1,600 と一致)です。B社は利益率ではA社の2倍ですが、資産の回転が遅く、自己資本の比率も高いため、ROEはA社の半分になっています。B社がROEを高めるには、遊休資産の圧縮などで回転率を上げることが一つの方向性だと読めます。
試験で問われやすいポイント
- 3要素の定義と、掛け合わせると ROE(当期純利益÷自己資本)に戻ることの確認。計算問題では3つの比率を求めさせる形が典型です。
- 財務レバレッジ = 総資産÷自己資本 = 1÷自己資本比率。自己資本比率が下がるとレバレッジは上がります。
- ROE = ROA × 財務レバレッジ の関係と、どの要素が変化の要因かを読み取る解釈問題。
- レバレッジ上昇によるROE向上は財務リスクの増加を伴う、という点も押さえておきましょう。
要点まとめ
- デュポン・システムは、資本利益率を比率の積に分解して要因を分析する手法。
- ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ。
- 前の2つの積はROAに当たり、ROE = ROA × 財務レバレッジとなる。
- どの要素がROEを動かしているかを見て、稼ぎ方やリスクを評価する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
