ROAとROEの関係とは?財務レバレッジ効果と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・財務分析
ひとことで言うと
- ROEは、ROAに「ROAと負債利子率の差 × 負債比率(D/E)」を上乗せしたものとして表せます(税引後なら全体に1 − 税率を掛けます)。
- ROA > 負債利子率なら、借入を増やすほどROEは高まります(財務レバレッジ効果)。
- 逆にROA < 負債利子率なら、借入が多いほどROEは押し下げられます。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「ROAとROEの関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (10) 財務分析の基礎 |
| 協会の学習ポイント | ROAとROEの関係を理解する。 |
ROAとROEの関係とは
ROA(総資産事業利益率)は、株主と債権者が提供した資本全体で、事業がどれだけの利益(金利控除前の事業利益)を上げたかを示します。ROE(自己資本利益率)は、そこから債権者への支払利息と税金を差し引いた後の利益が、株主の資本に対してどれだけかを示します。つまり、ROEはROAを出発点に、資金調達の仕方(負債の使い方)によって上下する指標です。
財務レバレッジ効果
事業で8%稼げる企業が、3%の金利で借金をして事業を広げると、借りたお金1円につき差し引き5%分の利益が株主のものになります。このため、ROAが負債の利子率を上回っている限り、負債を増やす(D/Eを高める)ほどROEは上昇します。これが財務レバレッジ効果です。
ただし、この効果は逆方向にも働きます。景気の悪化などでROAが利子率を下回ると、借入の金利負担が株主の利益を食いつぶし、負債が多い企業ほどROEが大きく落ち込みます。負債の利用はROEを高める一方で、ROEの変動(株主にとってのリスク)を大きくする点が重要です。
式の前提
下の公式は、総資本を有利子負債(D)と自己資本(E)だけで構成されると単純化し、ROAは事業利益÷総資本、負債利子率は支払利息÷有利子負債として導いたものです。デュポン分析の「ROE = ROA × 財務レバレッジ」は純利益ベースのROAを使った関係で、こちらとは定義が異なる点に注意しましょう。
押さえておきたい公式
| ROA | 事業利益 ÷ 総資本(D + E) |
|---|---|
| i | 負債利子率(支払利息 ÷ 有利子負債) |
| D ÷ E | 負債比率(有利子負債 ÷ 自己資本) |
| t | 法人税等の税率 |
具体例で確認
総資本1,000(有利子負債600、自己資本400、D/E = 1.5)、負債利子率3%、税率30%の企業を考えます(単位:億円)。
ケース1:事業利益80(ROA 8%)
- 支払利息 600 × 3% = 18、税引前利益 62、当期純利益 62 × 0.7 = 43.4
- ROE = 43.4 ÷ 400 = 10.85%
- 公式:[8% +(8% − 3%)× 1.5]× 0.7 = 15.5% × 0.7 = 10.85% で一致
ケース2:事業利益20(ROA 2%)
- 税引前利益 20 − 18 = 2、当期純利益 1.4、ROE = 1.4 ÷ 400 = 0.35%
- 公式:[2% +(2% − 3%)× 1.5]× 0.7 = 0.35%
ROAが利子率を上回るケース1では、負債のおかげで税引後ROAの5.6%(8% × 0.7)を大きく上回るROEになります。一方、ROAが利子率を下回るケース2では、ROEは税引後ROAの1.4%よりも低くなってしまいます。
試験で問われやすいポイント
- 公式を使ったROEの計算。(1 − t)を掛け忘れる、D/EとD/(D+E)を取り違えるなどのミスに注意しましょう。
- ROA > i なら負債比率の上昇でROEが上がり、ROA < i なら下がるという方向の判断。
- 負債の利用はROEの水準だけでなく変動性(リスク)も高めるという点。
- デュポン分析の「ROE = ROA × 財務レバレッジ」との定義の違いも確認しておきましょう。
要点まとめ
- ROE =[ROA +(ROA − i)× D/E]×(1 − t)。
- ROAが負債利子率を上回れば、負債の活用でROEが高まる(財務レバレッジ効果)。
- ROAが負債利子率を下回ると、負債はROEを押し下げる。
- 負債比率が高いほど、ROAの変動がROEに大きく響く。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
