ひとことで言うと

  • 裁定価格理論(APT:Arbitrage Pricing Theory)は、ロスが提唱した資産価格理論です。
  • リターンがファクター・モデルで表されるとき、裁定取引の機会がないという条件から、期待リターンが各ファクターへの感応度×ファクター・リスク・プレミアムの合計で決まることを導きます。
  • CAPMより前提が緩やかで、市場ポートフォリオを必要としない点が大きな特徴です。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「裁定価格理論(APT)」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (1) 現代ポートフォリオ理論
協会の学習ポイント 裁定価格理論(APT)の概要について理解する。

裁定価格理論(APT)とは

裁定とは、リスクを負わず、自己資金も使わずに確実な利益を得る取引のことです。たとえば、同じリスクを持つ2つのポートフォリオの期待リターンが異なれば、高いほうを買い、低いほうを空売りすることで、リスクなしに差額を得られます。効率的な市場ではこうした機会はすぐに利用され、価格が調整されて消えるはずです。APTは、この「裁定機会がない」という条件から、期待リターンの関係を導きます。

APTの考え方

APTでは、まず証券のリターンが複数のファクターと固有の部分で表されると仮定します(マルチファクター・モデル)。十分に分散されたポートフォリオでは固有の部分はほぼ消えるため、リスクはファクターへの感応度だけで決まります。同じ感応度を持つポートフォリオが異なる期待リターンを持てば裁定ができてしまうので、期待リターンは感応度の一次式(直線的な関係)にならなければなりません。これがAPTの価格式です。

CAPMとの違い

CAPMは、投資家が平均・分散で意思決定することなど多くの前提を置き、市場ポートフォリオという唯一のファクターを導きます。これに対してAPTは、リターンがファクター・モデルに従うことと、裁定機会がないことを主な前提とし、投資家の効用や市場ポートフォリオを必要としません。その代わり、ファクターの数や中身を理論自体は特定しないため、実際にどのファクターを使うかは実証的に決める必要があります。ファクターが市場ポートフォリオ1つだけなら、APTの式はCAPMと同じ形になります。

押さえておきたい公式

E(Ri) = λ0 + bi1λ1 + bi2λ2 + … + biKλKAPTの価格式(λ0は安全利子率に相当)
記号 意味
λ0 すべての感応度が0の資産の期待リターン(安全利子率)
bik 証券iのファクターkに対する感応度
λk ファクターkのリスク・プレミアム(感応度1単位あたりの上乗せ)

具体例で確認

例1:期待リターンの計算

安全利子率1%、景気ファクターのリスク・プレミアム3%、インフレ・ファクターのリスク・プレミアム1.5%とします。景気への感応度1.2、インフレへの感応度0.8の証券の期待リターンは、1 + 1.2 × 3 + 0.8 × 1.5 = 5.8%です。

例2:裁定取引の仕組み

ファクターが1つで、十分に分散されたポートフォリオAとBの感応度がどちらも1.0、期待リターンがAは8%、Bは6%だとします。Aを100万円買い、Bを100万円空売りすると、自己資金は0、ファクター感応度は1.0 − 1.0 = 0でリスクはなく、期待リターンの差2%分(2万円)を得られます。このような取引が集中するとAの価格は上がり(期待リターン低下)、Bの価格は下がり(期待リターン上昇)、同じ感応度なら同じ期待リターンとなる関係に落ち着きます。

試験で問われやすいポイント

  • APTの前提が「裁定機会がないこと」とファクター・モデルであり、市場ポートフォリオや効用関数を必要としない点が問われやすいです。
  • APTはファクターの数や中身を特定しないという特徴(長所でもあり弱点でもある)を押さえましょう。
  • 価格式に感応度とリスク・プレミアムを入れて期待リターンを計算する問題に慣れておきましょう。
  • 同じ感応度で期待リターンが異なるとき、どちらを買い、どちらを売るかという裁定の組み立てが問われやすいです。
  • ファクターが市場1つならCAPMと同じ形になるという関係も確認しておきましょう。

要点まとめ

  • APT=裁定機会がないことから期待リターンを導く理論
  • E(Ri) = λ0 + Σ bikλk
  • 市場ポートフォリオを必要とせず、CAPMより前提が緩やか
  • ファクターの数・中身は理論では特定されない

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。