証券アナリスト(CMA)1次試験の科目Ⅰで学ぶ「ポートフォリオ・マネジメント」。効率的フロンティア、CAPM、ベータ、シャープ・レシオ……と数式やカタカナ用語が続き、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、ポートフォリオ・マネジメントで要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

ポートフォリオ・マネジメントで学ぶこと

  • リスクとリターンの理論:分散投資でリスクが減るしくみ、効率的フロンティア、CAPMやマルチファクター・モデルで期待リターンを考える
  • 運用の方針づくり:投資家の目的・リスク許容度・制約から投資政策を立て、資産配分(アセット・アロケーション)を決める
  • 運用の担い手と成績の測り方:年金など機関投資家と個人投資家の運用の特徴、時間加重収益率やベンチマークによるパフォーマンス評価

ポートフォリオ・マネジメントの基本情報

試験科目 1次 科目Ⅰ「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」
試験での出題 第5問「現代ポートフォリオ理論」(30点)・第6問「ポートフォリオ・マネジメント」(20点)(2025年春・2024年秋の本試験の構成)
学習ポイント数 52項目(大分類5つ)
2次とのつながり 2次では「ポートフォリオの構築とリスク管理」「国際証券投資と為替管理、資産配分」「行動ファイナンスの意義と応用」「オルタナティブ投資資産の種類、特徴と投資管理」などが加わり、1次で学ぶ投資政策や機関投資家・個人投資家の運用、パフォーマンス評価もより実践的に深めます

全体像:5つの大分類

大分類 ひとことで言うと
(1) 現代ポートフォリオ理論 分散投資の効果、最適なポートフォリオの選び方、CAPMなどリスクとリターンの関係を理論として理解する
(2) 投資政策とアセット・アロケーション 投資家の目的と制約をふまえて運用方針を決め、どの資産にどれだけ配分するかを考える
(4) 機関投資家の資産運用 年金・投資信託などプロの運用のしくみと、ESG投資・スチュワードシップ・コードの役割を知る
(5) 個人投資家の資産運用 ライフサイクルや人的資本をふまえ、個人に合った資産運用の考え方を身につける
(7) 投資パフォーマンスの測定・評価と提示 運用成績を正しく計算し、ベンチマークと比べて評価する方法を学ぶ

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

(1) 現代ポートフォリオ理論

ポイント:この分野の中心です。投資家の好み(効用)の表し方から始まり、分散投資でリスクが下がるしくみ、効率的フロンティアと最適ポートフォリオ、CAPMとベータ、市場の効率性、リスク調整後のパフォーマンス指標、マルチファクター・モデルまでを一気に学びます。計算問題も多いところです。

学習ポイント 学ぶ内容
リターンと割引現在価値 投資のリターンの計算方法と、将来のお金を割引率で割り引いて現在の価値に直す考え方
リターンの源泉 リターンは配当・利子などのインカムゲインと、値上がり益(キャピタルゲイン)に分けられること
効用関数 投資家がどれだけ満足するかを、富やリターンの関数として表す考え方
期待効用最大化原理 不確実な状況では、結果の期待値ではなく「効用の期待値」が最大になる選択をするという考え方
リスク回避度とリスク許容度 同じ期待リターンならリスクの小さい方を好む度合い。回避度が高いほど許容できるリスクは小さい
平均・分散アプローチと効用 期待リターン(平均)とリスク(分散)の2つだけで投資を評価する方法が、効用関数とどう結びつくか
ポートフォリオの期待値と分散 ポートフォリオの期待リターンは各資産の加重平均。分散は各資産の分散に加えて共分散の項も入ることを計算で確かめる
相関とリスク削減効果 相関係数が1より小さい資産を組み合わせると、ポートフォリオのリスクが個々の加重平均より小さくなる(分散投資の効果)
実績データからの推定 過去のリターンのデータから平均・分散・標準偏差・相関係数を計算する手順
最小分散と効率的フロンティア リスクが最も小さい組み合わせ(最小分散ポートフォリオ)と、同じリスクで最も高いリターンが得られる組み合わせの集まり(効率的フロンティア)
最適ポートフォリオの決定 効率的フロンティアと投資家の無差別曲線が接する点が、その投資家にとって最適なポートフォリオになる
安全資産との組み合わせと分離定理 安全資産と接点ポートフォリオを組み合わせる方法。リスク資産の中身は誰でも同じで、好みは両者の配分だけで調整する(分離定理)
CAPMと市場ポートフォリオ 全員が同じ条件で最適化すると、リスク資産の最適な組み合わせは市場全体(市場ポートフォリオ)になるというモデルの概要
市場ポートフォリオの意義 市場ポートフォリオがCAPMのもとで効率的なポートフォリオになる理由と、インデックス運用の理論的な裏付け
資本市場線(CML) 安全資産と市場ポートフォリオを結ぶ直線。効率的なポートフォリオの期待リターンと標準偏差の関係を表す
証券市場線(SML) 個別の資産も含め、期待リターンがベータに比例して高くなる関係を表す直線
市場リスクと非市場リスク 分散投資で消せない市場リスク(システマティック・リスク)だけが期待リターンで報われ、消せる非市場リスクは報われない
マーケット・モデル 個別銘柄のリターンを「市場全体のリターン×ベータ+その銘柄固有の部分」に分けて表すモデル
ベータの意味と推定 市場が1%動いたときに銘柄が何%動くかの目安。市場リターンとの共分散÷市場の分散(回帰分析の傾き)で推定する
CAPMによる期待リターン 期待リターン=安全利子率+ベータ×(市場の期待リターン-安全利子率)で計算する
市場の効率性とアノマリー 価格に情報がすばやく反映されるという効率的市場の考え方と、それでは説明しにくい規則的な現象(アノマリー)
3つの効率性の型 過去の価格情報(ウィーク型)、公開情報すべて(セミストロング型)、未公開情報まで(ストロング型)が価格に反映されている状態の違い
CAPMと価格形成・アノマリー CAPMで説明される価格の決まり方と、小型株効果などCAPMでは説明しきれない現象がある理由
シャープ・トレーナー・ジェンセン 超過リターンを標準偏差で割るシャープ・レシオ、ベータで割るトレーナー・レシオ、CAPMからの上振れ分を見るジェンセンのアルファの計算と使い分け
マルチファクター・モデル リターンを複数の共通要因(ファクター)と、それぞれへの感応度(エクスポージャー)で説明するモデルと、リスク管理などへの使い方
裁定価格理論(APT) 裁定取引の機会がないという条件から、期待リターンが複数のファクターへの感応度で決まることを導く理論
3ファクター・マクロファクター 市場・規模(小型株)・バリュー(割安株)の3要因で説明するファーマ=フレンチ・モデルと、景気や金利などマクロ変数を使うモデルのしくみ

(2) 投資政策とアセット・アロケーション

ポイント:「何に・どれだけ投資するか」を決める前の設計図づくりです。運用を任された人の責任、投資家の目標と制約の整理、ベンチマークと投資政策書(IPS)、そして資産配分とリバランスの考え方を学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
受託者責任 他人の資産を預かる運用者は、顧客の利益を最優先に行動しなければならない(フィデューシャリー・デューティー)という考え方
投資政策と運用プロセス 投資家のリスク許容度などから目標リターン・リスクを決め、計画・実行・評価を繰り返す運用の流れ
ベンチマークとIPS 運用の目安となる市場指数(ベンチマーク)の種類と使い方、投資政策書(IPS)に書く目的・制約・資産配分などの項目
投資の制約要因 いつ現金が必要か(流動性)、どれくらい運用できるか(投資期間)、税金、法規制などが運用方針に与える影響
ポリシー・アセットミックス 長期的に維持する基本の資産配分(政策アセットミックス)を、投資政策にもとづいて決める手順
資産クラスと期待値の推計 国内株式・外国債券などの資産クラスの分け方と、過去データや経済見通しから期待リターン・リスクを見積もる方法の概要
資産配分とリバランス 最適な資産配分の決め方と、値動きでずれた配分を元に戻すリバランスの意味や具体的なやり方

(4) 機関投資家の資産運用

ポイント:年金基金・保険会社・投資信託など、多くの人のお金をまとめて運用する「プロの投資家」の世界です。日本の年金制度、確定給付型年金の運用の考え方、ESG投資とスチュワードシップ・コードを押さえます。

学習ポイント 学ぶ内容
機関投資家の意義と特性 年金・保険・投資信託などの機関投資家が市場で果たす役割と、運用資金の性格の違い
合同運用のしくみ 多くの投資家の資金をまとめて運用する投資信託などのしくみと、そのメリット
機関投資家の運用プロセス 運用方針の策定、運用機関の選定、モニタリングといった機関投資家の運用の進め方
日本の年金制度 公的年金と企業年金などの制度の全体像、確定給付型と確定拠出型で運用リスクを誰が負うかの違い
確定給付年金の運用 将来の給付(負債)を支払うために運用するという目的と、負債の性格や積立状況が運用に与える影響
ESG投資の意義 環境・社会・ガバナンスの要素を投資判断に組み込む意味と、長期の機関投資家にとっての重要性
スチュワードシップ・コード 機関投資家が投資先企業との対話などを通じて企業価値の向上を促すための行動原則の役割

(5) 個人投資家の資産運用

ポイント:一人ひとりの年齢・収入・家族構成によって、ふさわしい運用は変わります。人的資本やライフサイクル、個人が抱えるリスク、保険との関係をふまえて、個人の投資政策書をつくる流れを学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
個人投資家の特性と人的資本 個人投資家を取り巻く環境の変化と、将来の稼ぐ力を資産とみなす人的資本の考え方
リスク許容度とライフサイクル 年齢や人生の段階によって、取れるリスクの大きさがどう変わるか
個人の資産運用のリスク 長生きによる資金不足、インフレ、収入の減少など、個人が直面するさまざまなリスク
資産運用と保険の関係 死亡や長生きなどのリスクを保険で備えることと、資産運用を組み合わせて考える視点
個人の投資政策書 個人の目標・リスク許容度・制約を整理し、投資政策書にまとめる手順

(7) 投資パフォーマンスの測定・評価と提示

ポイント:「運用がうまくいったのか」を正しく測る方法です。金額加重収益率と時間加重収益率の違い、計算データの注意点、ベンチマークの選び方、ユニバース比較などを学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
パフォーマンス評価の目的 運用成績を測って評価する意味を、運用を任せる側・任される側それぞれの立場から理解する
金額加重と時間加重 資金の出し入れの影響を含む金額加重収益率(内部収益率)と、影響を除いて運用者の腕を測る時間加重収益率の計算と使い分け
収益率計算のデータの注意点 時価の評価方法、キャッシュフローの発生タイミング、手数料の扱いなどで収益率が変わることへの注意
ベンチマークの意義と要件 成績を比べる物差しとしてのベンチマークの役割と、事前に決まっている・投資可能であるなど良いベンチマークの条件
ベンチマークの選択と自作 運用方針に合うベンチマークの評価・選び方と、既存の指数を組み合わせるカスタム・ベンチマークのつくり方
ユニバース比較 似た運用をしているファンドの集まり(ユニバース)の中で、順位などを使って成績を評価する方法とその注意点

ポートフォリオ・マネジメントを学ぶときのコツ

1. 図とセットで理解する

効率的フロンティア、資本市場線(CML)、証券市場線(SML)は、横軸・縦軸が何かを意識して図に描くと違いがはっきりします。CMLの横軸は標準偏差、SMLの横軸はベータというように、図の軸で整理するのがおすすめです。

2. 計算は「式の意味」とあわせて練習する

ポートフォリオの分散、ベータ、CAPM、シャープ・レシオなどは計算問題の定番です。数字を当てはめるだけでなく、なぜ共分散が入るのか、なぜベータだけが報われるのかを説明できるようにしておくと、ひねった問題にも対応しやすくなります。

3. (2)以降は「誰のための運用か」を意識する

投資政策・機関投資家・個人投資家・パフォーマンス評価は、用語や考え方の理解が中心です。年金なのか個人なのか、誰の目的・制約のもとで運用しているのかを意識して読むと、内容がつながって覚えやすくなります。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. ポートフォリオ・マネジメントはどこから勉強すればいいですか?

大分類(1)の現代ポートフォリオ理論から始めるのがおすすめです。リスクとリターン、分散投資、CAPMの考え方は、(2)以降の投資政策やパフォーマンス評価を理解する土台になります。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

主に(1)の現代ポートフォリオ理論と(7)のパフォーマンス評価です。ポートフォリオの期待リターンと分散、ベータ、CAPM、シャープ・レシオなどの指標、金額加重収益率と時間加重収益率を、テキストの例題でしっかり練習しておきましょう。

Q. 学習ポイントとは何ですか?

日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。