実績データからの平均・分散の推定とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・ポートフォリオ・マネジメント
ひとことで言うと
- 過去のリターンのデータ(実績データ)から、平均・分散・標準偏差・共分散・相関係数を計算し、将来の期待リターンやリスクの推定値として使います。
- 手順は「平均を求める → 平均からの偏差を求める → 偏差の2乗や積を合計して割る」です。
- 標本から推定する分散・共分散では、データ数nではなくn−1で割るのが一般的です。
この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「実績データからの推定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント |
|---|---|
| 大分類 | (1) 現代ポートフォリオ理論 |
| 協会の学習ポイント | 実績データに基づくリターンの平均、分散、相関係数の算出方法を理解する。 |
実績データからの平均・分散の推定とは
ポートフォリオの期待リターンやリスクを計算するには、各資産の期待リターン、分散、資産間の相関係数が必要です。しかし、これらは直接観察できません。そこで、過去の一定期間のリターン(実績データ)から統計量を計算し、将来の値の推定値として用いるのが基本的な方法です。
計算の手順
- 平均:各期のリターンを合計してデータ数nで割ります(算術平均)。
- 偏差:各期のリターンから平均を引きます。
- 分散:偏差の2乗を合計し、n−1で割ります。標準偏差はその平方根です。
- 共分散:2資産の偏差の積を合計し、n−1で割ります。
- 相関係数:共分散を2資産の標準偏差の積で割ります。
n−1で割る理由
手元のデータは、将来も含めた母集団からの「標本」にすぎません。標本の平均を使って偏差を計算すると、ばらつきがやや小さめに出るため、nではなくn−1で割ることで偏りのない推定値(不偏分散)にします。問題文で「nで割る」と指定されることもあるので、指示に従いましょう。データ数が多ければ両者の差は小さくなります。
実績データを使うときの注意
過去の実績がそのまま将来も続くとは限りません。推定に使う期間の長さや、景気局面の偏りによって推定値は大きく変わります。特に平均リターンは推定誤差が大きいことが知られており、実務では経済見通しなども組み合わせて期待リターンを見積もります。また、月次データから年率に直すときは、平均は12倍、分散も12倍(標準偏差は√12倍)にするのが一般的な近似です。
押さえておきたい公式
具体例で確認
資産Aと資産Bの5年間のリターンが次のとおりだったとします。
| 年 | A | B | Aの偏差 | Bの偏差 | 偏差の積 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 10% | 6% | 0.04 | 0.02 | 0.0008 |
| 2 | −5% | 1% | −0.11 | −0.03 | 0.0033 |
| 3 | 15% | 9% | 0.09 | 0.05 | 0.0045 |
| 4 | 2% | −2% | −0.04 | −0.06 | 0.0024 |
| 5 | 8% | 6% | 0.02 | 0.02 | 0.0004 |
- 平均:A = 30% ÷ 5 = 6%、B = 20% ÷ 5 = 4%
- 分散:Aの偏差の2乗の合計は0.0238なので 0.0238 ÷ 4 = 0.00595(標準偏差 約7.71%)。Bは0.0078 ÷ 4 = 0.00195(標準偏差 約4.42%)
- 共分散:偏差の積の合計0.0114 ÷ 4 = 0.00285
- 相関係数:0.00285 ÷ (0.0771 × 0.0442) ≒ 0.84
AとBは同じ方向に動きやすい(強い正の相関がある)ことがわかります。
試験で問われやすいポイント
- 計算手順(平均→偏差→2乗・積の合計→割り算)を正確にたどれるか。偏差の2乗を忘れる、平方根を取り忘れるミスが典型です。
- n−1で割る(不偏推定)か、nで割るか。問題文の指示を必ず確認しましょう。
- 相関係数=共分散÷(標準偏差×標準偏差)。分散で割ってしまう誤りに注意します。
- %のままか小数か、単位をそろえて計算すること。
- 過去データによる推定には誤差があり、特に平均リターンの推定は不安定であるという留意点。
要点まとめ
- 実績データから平均・分散・共分散・相関係数を計算して推定値にする。
- 分散・共分散は偏差の2乗や積の合計をn−1で割るのが一般的。
- 相関係数は共分散を両者の標準偏差の積で割って求める。
- 過去の値が将来も続くとは限らない点に注意する。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
