ひとことで言うと

  • 安全資産を組み合わせられると、すべての投資家は同じリスク資産の組み合わせ(接点ポートフォリオ)を持ち、好みの違いは安全資産との配分比率だけで調整します。これを分離定理(トービンの分離定理)といいます。
  • 安全資産と接点ポートフォリオを結ぶ直線上のポートフォリオが、新しい効率的フロンティアになります。
  • リスク回避度が高い人は安全資産を多く、低い人は借入れをしてまでリスク資産を多く持ちます。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「安全資産との組み合わせと分離定理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (1) 現代ポートフォリオ理論
協会の学習ポイント リスク資産と安全資産の組み合わせによるポートフォリオ構築手法と分離定理を理解する。

分離定理とは

リスク資産だけで考えると、最適ポートフォリオは効率的フロンティア上のどこか(投資家ごとに異なる点)になりました。ここに、リターンが確実な安全資産(リスクがゼロで、安全利子率で自由に貸し借りできる資産)を加えると、話が大きく変わります。

安全資産とリスク資産の組み合わせ

安全資産とあるリスク資産ポートフォリオを組み合わせると、安全資産の標準偏差がゼロで、共分散もゼロになるため、組み合わせたポートフォリオの期待リターンと標準偏差は、両者を結ぶ直線上に並びます。この直線を資本配分線(CAL)ということがあります。

どのリスク資産ポートフォリオと組み合わせるかによって直線の傾きが変わりますが、傾き(リスク1単位あたりの超過リターン)が最も大きくなるのは、安全資産の点から引いた直線がリスク資産の効率的フロンティアに接するときです。この接点のポートフォリオを接点ポートフォリオといい、この直線が安全資産を含めた場合の新しい効率的フロンティアになります。

分離定理

接点ポートフォリオは、資産の期待リターン・分散・相関と安全利子率だけで決まり、投資家のリスク回避度には依存しません。そのため、投資の意思決定は次の2段階に分離できます。

  1. リスク資産の最適な組み合わせ(接点ポートフォリオ)を決める(全員共通)
  2. 接点ポートフォリオと安全資産の配分比率を、リスク回避度に応じて決める(投資家ごと)

リスク回避度が高い投資家は安全資産への投資(貸出し)を多くし、リスク回避度が低い投資家は安全利子率で借入れをして接点ポートフォリオに100%を超えて投資します(レバレッジ)。全員が同じ見通しを持つと仮定すると、この考え方がCAPMにつながっていきます。

押さえておきたい公式

E(RC) = Rf + y × (E(RT) − Rf)  σC = y × σT接点ポートフォリオTに比率y、安全資産に1−yを投資したときの期待リターンと標準偏差
E(RC) = Rf + [(E(RT) − Rf) ÷ σT] × σC安全資産と接点ポートフォリオを結ぶ直線(傾き=シャープ・レシオ)
y* = (E(RT) − Rf) ÷ (A × σT2)リスク回避度Aの投資家の最適な接点ポートフォリオ比率(y > 1 は借入れ)

具体例で確認

安全利子率2%、接点ポートフォリオの期待リターン10%、標準偏差20%とします。直線の傾きは (10% − 2%) ÷ 20% = 0.4 です。

リスク回避度 接点ポートフォリオ比率 y* 期待リターン 標準偏差
A = 4 2% + 0.5 × 8% = 6% 10%
A = 2 10% 20%
A = 1 2% + 2 × 8% = 18% 40%

3人とも、リスク資産の中身は同じ接点ポートフォリオです。違うのは安全資産との配分だけで、A=4の人は資金の半分を安全資産に、A=1の人は自己資金と同額を借り入れて接点ポートフォリオに投資しています。どの組み合わせも、期待リターン = 2% + 0.4 × 標準偏差 の直線上にあります。

試験で問われやすいポイント

  • 分離定理の内容:リスク資産の組み合わせは全員共通で、リスク回避度は安全資産との配分比率だけに影響すること。
  • 安全資産と組み合わせたポートフォリオの期待リターンと標準偏差は直線上に並ぶこと(標準偏差は y × σT と比例的になる)。
  • 接点ポートフォリオは、直線の傾き(シャープ・レシオ)が最大になる点であること。
  • y > 1 は安全利子率での借入れ(レバレッジ)を意味すること。
  • 分離定理はCAPMの前提となり、全員が同じ見通しを持つと接点ポートフォリオが市場ポートフォリオになる流れ。

要点まとめ

  • 安全資産を加えると、効率的フロンティアは安全資産と接点ポートフォリオを結ぶ直線になる。
  • 接点ポートフォリオはリスク回避度に関係なく全員共通。
  • 投資家の違いは安全資産との配分(貸出し・借入れ)だけで調整する。
  • 分離定理がCAPMと市場ポートフォリオの考え方につながる。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。