市場リスクと非市場リスクとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・ポートフォリオ・マネジメント
ひとことで言うと
- 資産の総リスクは、市場全体の動きに連動する市場リスク(システマティック・リスク)と、その資産に固有の非市場リスク(アンシステマティック・リスク)に分けられます。
- 非市場リスクは分散投資で消せるため、CAPMでは期待リターンで報われません。
- 期待リターンに反映されるのは、分散しても残る市場リスク(ベータ)だけです。
この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「市場リスクと非市場リスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント |
|---|---|
| 大分類 | (1) 現代ポートフォリオ理論 |
| 協会の学習ポイント | 市場リスクと非市場リスクの概念と期待リターンとの関係を理解する。 |
市場リスクと非市場リスクとは
株価が動く理由は大きく2つに分けられます。ひとつは景気や金利、為替の変化のように市場全体に影響する要因、もうひとつは新製品の成功や不祥事のようにその企業だけに起こる要因です。前者によるリスクを市場リスク(システマティック・リスク、分散不能リスク)、後者によるリスクを非市場リスク(アンシステマティック・リスク、固有リスク、分散可能リスク)と呼びます。
分散投資で消えるのは非市場リスクだけ
多くの銘柄に分散投資すると、ある企業の悪いニュースは別の企業の良いニュースと打ち消し合うため、固有の要因による変動は平均化されて小さくなります。一方、景気後退のように全銘柄に同時に影響する要因は、銘柄をいくら増やしても打ち消されません。銘柄数を増やしていくとポートフォリオのリスクは下がっていきますが、ある水準(市場リスク)で下げ止まるのはこのためです。
なぜ市場リスクだけが報われるのか
非市場リスクは、分散投資をすればほぼ費用をかけずに取り除けます。取り除けるリスクをあえて負っても、市場はその分の追加リターンを支払いません。十分に分散した投資家が価格を決めている市場では、期待リターン(リスク・プレミアム)は、分散しても残る市場リスクの大きさ、すなわちベータに比例して決まります。これがCAPMの証券市場線(SML)の考え方です。
そのため、総リスク(標準偏差)が大きい銘柄でも、その大部分が非市場リスクであれば、期待リターンは高くならないことがあります。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| σi2 | 資産iのリターンの分散(総リスク) |
| βi | 資産iのベータ |
| σM2 | 市場ポートフォリオのリターンの分散 |
| σε,i2 | 固有要因(残差)の分散=非市場リスク |
具体例で確認
ある銘柄の標準偏差が30%、ベータが1.2、市場ポートフォリオの標準偏差が20%とします。
- 総リスク(分散):0.302 = 0.09
- 市場リスク:1.22 × 0.202 = 1.44 × 0.04 = 0.0576(標準偏差にすると24%)
- 非市場リスク:0.09 − 0.0576 = 0.0324(標準偏差にすると18%)
- 決定係数:0.0576 ÷ 0.09 = 0.64(総リスクの64%が市場リスク)
標準偏差のまま「30 = 24 + 18」と足し算することはできず、分散の段階で足し算する点に注意しましょう(242 + 182 = 302)。
試験で問われやすいポイント
- 分散投資で消せるのは非市場リスクだけで、市場リスクは消せないという基本が問われやすいです。
- CAPMでは期待リターンに反映されるのは市場リスク(ベータ)だけで、総リスクや非市場リスクは報われない点を押さえましょう。
- 総リスクの分解は分散で足し算します。標準偏差のまま足すひっかけに注意しましょう。
- システマティック=市場=分散不能、アンシステマティック=固有=分散可能という用語の対応がよく確認されます。
- 標準偏差が大きい銘柄ほど期待リターンが高い、とは限らないという判断問題に注意しましょう。
要点まとめ
- 総リスク=市場リスク(システマティック)+非市場リスク(固有)
- 非市場リスクは分散投資で消せるが、市場リスクは消せない
- 期待リターンで報われるのは市場リスク(ベータ)だけ
- 分解は分散で行う:σi2 = βi2σM2 + σε2
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
