ひとことで言うと

  • 受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)とは、他人から資産を預かって運用・管理する者が負う、顧客(受益者)のために行動する責任です。
  • 中心となるのは、顧客の利益を最優先する忠実義務と、専門家として十分な注意を払う注意義務の2つです。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「受託者責任」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (2) 投資政策とアセット・アロケーション
協会の学習ポイント 受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)の意義について理解する。

受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)とは

年金基金の理事や運用会社、信託銀行などは、自分のお金ではなく、加入者や顧客から預かったお金を運用しています。預けた側は運用の中身を細かく監視できないため、預かる側が自分や第三者の利益を優先してしまうおそれがあります。そこで、資産を預かる者(受託者)には、預けた者(委託者・受益者)の利益のために行動する重い責任が課されます。これが受託者責任です。

忠実義務

忠実義務は、もっぱら受益者の利益のために行動する義務です。自分や自社グループ、特定の第三者の利益を図ってはならず、利益相反の状況では受益者の利益を優先しなければなりません。たとえば、運用成績と関係なく自社グループの商品を優先的に組み入れたり、顧客の売買を自己の利益のために利用したりすることは、忠実義務に反する行為です。

注意義務

注意義務は、同じ立場にある専門家として通常払うべき注意を払って職務を行う義務です。米国の年金制度では、慎重な人ならどう行動するかを基準とするプルーデント・マン・ルールが知られ、専門家に求められる水準で判断する考え方(プルーデント・エキスパート・ルール)へと発展しました。現代的な考え方では、個々の投資を単独で評価するのではなく、ポートフォリオ全体として適切にリスクを分散し、目的に沿った運用をしているかどうかで判断されます。

投資政策との関係

受託者責任を果たすためには、受益者の目的やリスク許容度、制約条件を把握し、それに合った投資政策を定め、その方針にもとづいて運用し、結果を検証する一連のプロセスが重要です。手続きを文書化しておくことは、責任を果たしたことを説明する根拠にもなります。日本でも、金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表するなど、金融機関全体に顧客本位の姿勢が求められています。

整理しておきたいポイント

義務 内容
忠実義務 受益者の利益だけを考えて行動する。利益相反を避け、自己や第三者の利益を優先しない
注意義務 専門家として通常求められる注意・技能・慎重さをもって職務を行う
分散投資 注意義務の一環として、特別な事情がない限りリスクを適切に分散する
判断の単位 個別銘柄ごとではなく、ポートフォリオ全体として適切かどうかで評価する

具体例で確認

ある企業年金基金から運用を任された運用会社を考えます。

  • 運用会社が、手数料収入を増やすために、成績や費用の面で劣る自社グループの投資信託を組み入れた場合、受益者より自社の利益を優先しており忠実義務に反します。
  • 十分な調査をせずに、特定の1銘柄に資産の大半を集中させた場合、専門家として求められる慎重さを欠いており注意義務に反するおそれがあります。
  • 一方、値動きの大きい資産を一部組み入れていても、ポートフォリオ全体のリスクが投資政策の範囲に収まり、根拠をもって判断しているなら、それだけで責任違反とはいえません。

試験で問われやすいポイント

  • 忠実義務と注意義務の区別。「利益相反」は忠実義務、「専門家としての慎重さ・分散投資」は注意義務と整理します。
  • 受託者の判断は、結果(成績の良し悪し)ではなく、判断のプロセスが適切だったかで評価される点。
  • リスクの高い資産への投資が直ちに違反になるわけではなく、ポートフォリオ全体で評価されるという考え方。
  • 受託者責任は投資家(受益者)のためのものであり、運用会社や母体企業の利益を優先してよいという選択肢は誤りになりやすいです。

要点まとめ

  • 受託者責任は、他人の資産を預かる者が受益者のために行動する責任。
  • 柱は忠実義務(利益相反の回避)と注意義務(専門家としての慎重さ)。
  • 分散投資やポートフォリオ全体での判断が注意義務の中身として重要。
  • 投資政策の策定から評価までの適切なプロセスが責任を果たす土台になる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。