ひとことで言うと

  • サステナビリティ(ESG)要素を投資分析に取り入れる方法には、除外(ネガティブ・スクリーニング)選別(ポジティブ・スクリーニング)評価への統合(ESGインテグレーション)エンゲージメントなどがあります。
  • インテグレーションでは、ESG要因を業績予測・割引率・倍率などの前提に反映させます。
  • ESG評価機関ごとの評価のばらつきやデータの比較可能性など、使い方の注意点も重要です。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「サステナビリティ要素の評価・利用」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (3) コーポレートガバナンス
協会の学習ポイント 投資分析におけるサステナビリティ要素の評価方法や利用方法について理解する。

ESG情報の投資分析への活用とは

サステナビリティ要素を投資に生かすといっても、その方法は一つではありません。「特定の業種を投資対象から外す」という単純なものから、「企業価値評価のモデルの中にESGの影響を数字として組み込む」ものまで、目的や手間がさまざまな手法があります。アナリストとしては、それぞれの手法が何を目的にし、ポートフォリオや評価にどう影響するかを理解しておくことが大切です。

代表的な手法

ネガティブ・スクリーニングは、たばこ・兵器・一部の化石燃料関連など、特定の業種や行為に関わる企業を投資対象から除外する方法です。ポジティブ・スクリーニング(ベスト・イン・クラス)は、同じ業種の中でESGの評価が高い企業を選ぶ方法です。国際的な規範への違反を基準に除外する規範に基づくスクリーニングもあります。

ESGインテグレーションは、通常の財務分析の中にESG要因を体系的に組み込む方法です。たとえば、規制強化によるコスト増を利益予測に反映させる、ガバナンスに問題がある企業のリスクを割引率やバリュエーション倍率の調整で考慮する、といった形です。このほか、特定のテーマ(再生可能エネルギーなど)に投資するテーマ型投資、測定可能な社会・環境面の成果を目指すインパクト投資、企業との対話や議決権行使を通じて改善を促すエンゲージメントがあります。

使うときの注意点

ESGの評価は、評価機関によって重視する項目や重み付け、データの取り方が異なるため、同じ企業でも評価が大きく食い違うことがあります。また、企業の開示は比較可能性や網羅性に限界があり、実態以上に環境配慮をうたうグリーンウォッシュにも注意が必要です。ポートフォリオの面では、除外によって投資対象が狭まると分散が効きにくくなり、ベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)が大きくなる可能性があります。スコアをそのまま使うのではなく、その企業の企業価値に重要な項目を自分で見極めることが求められます。

整理しておきたいポイント

手法 内容 留意点
ネガティブ・スクリーニング 特定の業種・行為に関わる企業を除外 投資対象が狭まり、分散効果が低下しうる
ポジティブ・スクリーニング 業種内でESG評価が高い企業を選ぶ 評価機関によって結果が異なる
ESGインテグレーション 業績予測・割引率・倍率にESG要因を反映 重要な項目の見極めと定量化が難しい
エンゲージメント・議決権行使 対話や議決権で企業に改善を促す 効果が出るまで時間がかかる
インパクト投資 リターンと測定可能な社会的成果の両立を目指す 成果の測定方法が重要になる

具体例で確認

アナリストが食品メーカーA社をESGインテグレーションで評価する場面を考えます。

  1. 業種にとって重要な課題として、原材料の調達(森林破壊や人権)、容器包装の環境負荷、製品の安全性を挙げる。
  2. 調達先の認証取得にかかる追加コストを、売上原価の予測に反映させる。
  3. 品質管理体制が弱く、過去に大規模な回収があった点は、将来の損失リスクとしてシナリオ分析に加える。
  4. 最後に、同業他社と比べた倍率の妥当性を確認し、目標株価の幅として示す。

単に「ESGスコアが低いから投資しない」ではなく、課題を業績やリスクの前提に翻訳しているのがインテグレーションの特徴です。

試験で問われやすいポイント

  • ネガティブ・スクリーニング、ポジティブ・スクリーニング、ESGインテグレーション、エンゲージメントなど各手法の違いが問われやすいです。
  • インテグレーションでは、ESG要因をキャッシュフロー予測・割引率・倍率のどこに反映するかを説明できるようにしましょう。
  • 除外による投資対象の縮小と分散効果の低下、トラッキングエラーの増加という影響に注意しましょう。
  • ESG評価機関による評価のばらつき、開示データの限界、グリーンウォッシュといった留意点が問われやすいです。
  • 記述式では、特定の企業について重要なESG課題を挙げ、それを企業価値評価にどう組み込むかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • ESGの利用方法には除外・選別・統合・エンゲージメントなどがある
  • インテグレーションはESG要因を業績予測や割引率に反映させる手法
  • 評価機関ごとのばらつきやデータの限界に注意する
  • 業種ごとに重要な課題を見極め、スコアをうのみにしない

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。