ひとことで言うと

  • ターミナル・バリュー(TV、継続価値)は、予測期間の最後の時点で、それ以降のすべてのキャッシュフローの価値を1つにまとめた値です。
  • 多段階DDMでは、「個別に予測する期間の配当の現在価値」+「TVの現在価値」で株式価値を求めます。
  • TVは株式価値の大部分を占めることが多く、成長率や割引率の前提に結果が敏感です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「ターミナル・バリュー」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (4) 株式価値評価モデルの活用
協会の学習ポイント ターミナル・バリューの概念とDDMにおける利用方法について理解する。

ターミナル・バリューとは

将来の配当を1年ずつ永久に予測することはできません。そこで実務や試験では、数年間の「予測期間」は配当を個別に見積もり、その後は安定成長に入ると仮定して、残りの期間の価値をまとめて計算します。このまとめた値がターミナル・バリュー(継続価値、残存価値とも呼ばれます)です。

成長率を使う方法(定率成長モデル)

最もよく使われるのは、予測期間の最終年(n年目)の後、配当が一定率gで永久に成長すると考え、定率成長モデルをn年目の時点で当てはめる方法です。TVn = Dn+1 ÷ (k − g) と計算します。ここで分子はn+1年目の配当であり、計算結果はn年目の時点の価値になる点が重要です。

倍率(マルチプル)を使う方法

もう1つは、n年目の予想利益に、成熟した類似企業のPERなどの倍率を掛けてTVを求める方法です。TVn = PER × EPSn(またはEPSn+1)といった形です。手軽ですが、倍率そのものが市場の評価に依存するため、DDMの理論的な枠組みとは性格が異なる点を理解しておきましょう。

多段階DDMへの組み込み

n年目の時点で求めたTVを、(1+k)nで割って現在価値に直し、予測期間の配当の現在価値と合計すれば理論株価になります。TVは株価の大部分を占めることが多く、gやkのわずかな違いで理論株価が大きく変わります。永久成長率gは、経済全体の長期的な成長率を大きく上回らない水準に置くのが一般的な考え方です。

押さえておきたい公式

TVn = Dn+1 ÷ (k − gL)n年目時点の継続価値(gLは安定期の永久成長率、k>gL
P0 = Σ Dt ÷ (1 + k)t + TVn ÷ (1 + k)nt=1〜nの配当の現在価値 + TVの現在価値
TVn = PER × EPS倍率法による推計(例)
記号 意味
TVn n年目時点のターミナル・バリュー
Dn+1 安定期に入って最初の年の配当
k 要求収益率
gL 安定期の永久成長率

具体例で確認

今期の配当D0は50円。今後3年間は配当が年10%で成長し、4年目以降は年3%の安定成長に移ると予想します。要求収益率kは8%です。

  1. 予測期間の配当:D1 = 55.00円、D2 = 60.50円、D3 = 66.55円
  2. その現在価値:55.00 ÷ 1.08 ≒ 50.93円、60.50 ÷ 1.082 ≒ 51.87円、66.55 ÷ 1.083 ≒ 52.83円(合計 約155.63円)
  3. 4年目の配当:D4 = 66.55 × 1.03 ≒ 68.547円
  4. 3年目時点のTV:68.547 ÷ (0.08 − 0.03) ≒ 1,370.93円
  5. TVの現在価値:1,370.93 ÷ 1.083 ≒ 1,088.29円
  6. 理論株価:155.63 + 1,088.29 ≒ 1,243.9円

理論株価の約87%をTVが占めています。TVを3年目時点の値のまま足してしまったり、D3を分子に使ってしまったりすると、大きく異なる答えになります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「配当割引モデル(DDM)から導かれる要求収益率の算出方法を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • TVの分子は安定期最初の年の配当Dn+1で、求まる値はn年目時点の価値だという点が最大のポイントです。
  • TVは(1+k)nで割り引いてから足す必要があり、割引の年数を1年ずらすミスが狙われます。
  • 多段階DDMの計算を、途中の数値を示しながら解かせる記述式・計算問題に対応できるようにしましょう。
  • 永久成長率gLや割引率kを少し変えるとTVと理論株価が大きく変わるという感応度の議論が問われやすいです。
  • 成長率法と倍率法の違いや長所・短所を説明させる形にも備えておきましょう。

要点まとめ

  • TVは予測期間後のすべての価値を1つにまとめた継続価値
  • 成長率法:TVn = Dn+1 ÷ (k − gL)、n年目時点の値
  • TVは(1+k)nで現在価値に直して予測期間の配当と合計する
  • TVは株価の大部分を占めやすく、前提の置き方が重要

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。