ひとことで言うと

  • 株式価値をDCF法で求めるには、FCFFをWACCで割り引いて企業価値を出し、負債を差し引く方法と、FCFEを株主資本コストで割り引く方法があります。
  • どちらを選ぶかは、財務レバレッジの安定性、FCFEの符号や予測のしやすさ、評価の目的で判断します。
  • キャッシュフローと割引率の組み合わせを正しく対応させることが最も大切です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「適切なDCF法の選び方」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (4) 株式価値評価モデルの活用
協会の学習ポイント 適切なDCF法に基づく株式価値評価手法を理解する。

DCF法の使い分けとは

DCF法による株式価値評価には、大きく分けて「企業全体から入る方法(FCFFアプローチ)」と「株主から入る方法(FCFEアプローチ)」があります。理論的には、前提が整合していればどちらでも同じ株主価値に行き着くはずですが、実際には予測のしやすさや前提の置き方で結果が変わるため、状況に合った方法を選ぶことが求められます。

FCFFアプローチ

FCFFをWACCで割り引いて企業価値を求め、そこから有利子負債の価値(必要に応じて優先株式など)を差し引いて株主価値を求めます。非事業資産(余剰現金など)がある場合は加算します。借入れの増減を毎年予測する必要がないため、財務レバレッジが大きく変わる企業や、FCFEがマイナスになりやすい企業、負債の多い企業に向いています。

FCFEアプローチ

FCFEを株主資本コストで割り引いて、直接株主価値を求めます。財務レバレッジが安定していて、借入れの予測がしやすい企業に向いています。FCFEには借入れの影響が含まれるため、資本構成が大きく変わる場合は、株主資本コスト自体も変わる点に注意が必要です。

その他の選択の視点

配当が安定しFCFEとの関係が明確で、少数株主として評価するならDDMも有力な選択肢です。また、成長段階(高成長期から安定期への移行)に応じて、定率成長モデル・2段階モデル・3段階モデルのどれを使うかも選ぶ必要があります。

整理しておきたいポイント

方法 割引率 向いているケース
FCFFアプローチ WACC レバレッジが大きく変わる、FCFEがマイナス、負債が多い
FCFEアプローチ 株主資本コスト レバレッジが安定、借入れの予測がしやすい
DDM 株主資本コスト 配当が安定、少数株主の視点

具体例で確認

I社の来期FCFFは600、永久成長率は2%、WACCは6%、株主資本コストは7%です。有利子負債は5,000、発行済株式数は100(単位:百万円・百万株)です。

  1. 企業価値:600 ÷ (0.06 − 0.02) = 15,000
  2. 株主価値:15,000 − 5,000 = 10,000
  3. 1株当たり価値:10,000 ÷ 100 = 100円

誤ってFCFFを株主資本コスト7%で割り引くと、600 ÷ 0.05 = 12,000、株主価値は7,000となり、1株70円と大幅に過小評価してしまいます。反対に、FCFEをWACCで割り引くと過大評価になります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「FCFF/FCFE・DCF法・株式価値評価を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • FCFF×WACC→企業価値→負債を控除FCFE×株主資本コスト→株主価値という対応が最重要です。
  • FCFFアプローチで負債の控除を忘れる、または非事業資産の加算を忘れるミスが狙われます。
  • レバレッジの変化が大きい企業ではFCFFアプローチが適する理由を説明させる記述式が考えられます。
  • 企業の特徴(無配、負債比率の変化、成長段階)から適切なモデルを選ばせる問題に備えましょう。

要点まとめ

  • FCFFはWACCで割り引き、負債を差し引いて株主価値を求める
  • FCFEは株主資本コストで割り引き、直接株主価値を求める
  • レバレッジが不安定・FCFEがマイナスならFCFFアプローチが向く
  • キャッシュフローと割引率の組み合わせを誤ると価値が大きくずれる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。